第2話「私、初めての異世界」
私はメタトロンの手を握った途端、身体の奥底で何かが弾けたような目覚めたような感覚に陥った。不思議な感覚で、今までよりも思考がクリアな感じがする。
「さぁ、貴女は選びました。裏切り、救世主となる道を。今貴女の身体に起こったのは私の力を与えたからです。そして才能を目覚めさせたのです。一人では心細いでしょうから、供をつけましょう。」
私の左中指に金色の指輪が装着された。
「おっよびでしょうかメタトロン様(すぁむぁ)!」
「うわ指輪なのになんかうざい。なんですかこれ」
「ミャノン。これから彼女をサポートするのです。半不死ではありますがまだ幼子。心も未熟。」
「かっしこまりましたぅ!ご主人様、宜しくお願いします」
「よ、よろしく。い、良い声してるね。ん?てかメタトロンさん、今はんふしって?」
「貴女は一番見込みがあるので、死なれては困るのです。なので、異世界では半不死、相当なことがなければ死なないようにしておきました。たとえ首を吹っ飛ばされても瞬時に回復します」
「わーおマジ?私本気で魔王みたいになっちゃいそう」
「あとはこれを。」
「剣、ですか?」
渡されたのは真っ黒な鞘に納められた剣だった。手に持った瞬間吸いつくようにしっくりとくる。
「あと、その制服とやらでは寒そうなので上着もおまけしておきましょう」
身体の周りが一瞬黒く光ると、真っ赤なロングコートを装着させられていた。
「何から何までありがとう?至れり尽くせりだわ」
「いいですか?異世界の人間を滅ぼす覚悟ができた時、その剣は抜くことができ、二つの最強の力を貴女に与えてくれます。さぁ行きなさい!」
「えっ!?もう行くの!?まだ剣の名前とか聞きたいことも心の準備もできキャアアア!?」
突然足元が消え、落ちていく。あぁ、本当に異世界に行っちゃうんだ。
意識が消えていき、落ちているのか、浮いているのかわからない感覚になる。暗闇の中で、私の中から何かが抜け出したり、入ってきたりする。それがなにかは分からない。
しばらくすると瞼の奥に光が見え、必死に手を伸ばす。
「タ、タコス!あ、あれ…ここは?」
気が付くと私は見知らぬ森に倒れていた。身体を見ると赤いロングコートに真っ黒な剣に金色の指輪。さっきのは夢ではなかったみたい。
「起きましたかご主人っ!さぁ立ち上がり、進むのです!」
「うるさ。さて、滅ぼすとは言ったものの、どこに行ってどう滅ぼせばいいのかな。できれば平和的解決を……。」
適当に歩くと、がけが見えてきた。するとすぐに森が開けて目の前に広大な草原と大きな街が広がった。空には見たこともない生き物が飛び、街には人がいるようだった。
「ほ、本当に異世界にきちゃったんだ」
「そうです。そしてここからご主人様の滅ぼしの旅が始まるのですっ!ふぅーははは!」
「うるさ。あれ?」
崖下を見ると、鎧を着た兵士達が小さな女の子を追いかけている。
「た、助けて!」
少女に槍が向けられるのを見て、無意識に私は剣を握っていた。というか剣が鞘から抜けない。不良品つかまされたこれ。
「っ!?」
「放っておきましょうご主人様。貴女には崇高なる目的があるはずです。」
私はミャノンを無視し、鞘から抜けない剣を構えて崖から飛び降りた。かなりの高さだったが、なぜか恐怖は全く感じず死ぬ気もしない。心がざわついたのだ。
「どりゃあああ!」
落下したまま鞘で鎧の兵士の一人を殴ると、まるでスイカのように粉々に砕け散ってしまった。顔に血がかかる。私、人を殺してしまったんだ。しかし、私の心を支配しているのは罪悪感や恐怖ではなく全く別の感情。鞘に似た色の感情。
「な、何者だ貴様!魔族の生き残りか!」
「私は、東雲火花!お前らを滅ぼす者だ!」
今まで生きてきて感じたこともないほどの「憎しみ」が私の身体を突き動かしていた。つい先程まで平和的に解決を望んでいたと思ったのに、今はそんなこと微塵も望んでいない。
異世界に来て私は早速人を三人殺すことになった。
その火花の姿を見て、襲われていた耳の長い少女は手を合わせて跪いた。
「あぁ、紅蓮の女神さま…」
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