第15話 体力測定2
結論から言えばめちゃくちゃ怒られた。
さっきの競技は反復横跳びというらしく、敏捷生を計測するものだ。
集中力を必要とする競技で俺は重大な間違いをおかしてしまった。
イメージからついバスケのマンツーマンを想像してしまい佳純と向き合ってしまったのだ。
「さっき……凄く……目がイヤらしかった」
体の前で腕を交差して胸を隠すような仕草は、その場にいる男子生徒の視線を釘付けにする。
やっぱりコイツは紛れもないカースト最上位の美少女なんだな。
「ゲームオタとしてはスライムの動きに目が奪われてしまったんだよ。向き合ってたから俺にしか見えてないと思うぞ?」
「え?………スライム?……………!?それって……あわわわ!?」
最初は言ってる意味が分からず頭をコテンと傾けていたものの、話の流れからようやく理解すると耳まで真っ赤にしながら言葉にならない何かを発している。
「あ、悪いこれってセクハラだよな?でもお前もずっと見てたからおあいこな?」
「わ、わたしは快斗のパオーン!なんて見てないもん!」
「パオーン?顔をずっと見てただけじゃないのか?」
そんなモンスターはゲームで聞いた事ないけどスマホアプリで存在するのかもしれない。
そのあたりを今度じっくり佳純に聞いてみよう。
「そ、そうよ?顔に決まってるじゃない!もう知らない!!」
さらに顔を赤らめプンプンしてるけど、なぜか視線を逸らしているのは謎である。
……うーん沸点が分からないから現実世界の女の子ってやっぱり難しい。
えーと……次は変則100m走か。
どのスポーツも基本は走る事だから理由はわかるけどなんで変則??
最初の50mは普通に走ってからその後は跳び箱やら平均台やらハードルをクリアしてゴールらしい。これって障害物競走だよな?これじゃまるで小学生の運動会だよ?
まあパルクールやってれば目を瞑っていても楽勝だからラッキーだけど。
「俊敏性とサバイバル能力を同時に測定出来るから変則なんだって」
「華の高校生にサバイバル能力って必要か?ゲームじみてきたけど何か意味があるんだろ?」
「一緒に頑張ろうね!」
スタートラインに立つ佳純は手招きをし軽く微笑んでいた。
「よく分かんねーけど残り2つ頑張るか」
「うん!」
ただの体力測定でないのは、これまでの雰囲気やカースト上位組が仲の良いグループで回っている事でだいたい分かる。
カースト上位だけに与えられる特典がなにかしらあるのだろう。佳純の為にもここは頑張ろう。
* * *
「……やっぱり占いのおかげだね」
「なにがやっぱりだよ?まゆ毛のおかげで10位以内に入れるなら明日からみんな同じ形になっちゃうよ?」
体力測定を終えた放課後、佳純と2人でファミレスにやって来た。
詳しい順位までは分からないが、佳純は当然だけどまさか俺までランキング10位以内に入れるとは……まゆ毛占いのおかげ?…………な訳ねーだろ。
「今年は快斗と一緒で良かった!上位にだけ伝えらてるように他言無用だよ?」
そう。俺は今まで知らなかった。
この学校では芸能活動は出来ないと思っていた。
しかし……体力測定、そして前年の学年末に行われる学力テストで良い成績を収めると特待生扱いになれるとは。
「陰キャの快斗が成績も良かったのは、嬉しい誤算だったよね〜」
「友達いないから学校でしっかり勉強してるしな。じゃないと美雲にゲームもアニメも禁止されるんだよ」
「へー」
なになに?
佳純が急に不機嫌になったんだけど、今のルートで選択肢間違えたかな?
偉そうに勉強してるアピールが間違いだったらしい。
ここはあれしかない。
「ドリンクバー取ってくるわ。冷たい炭酸系でいいか?」
「あ、うんお願い」
2つのグラスを持ってテーブルへ戻る。
「どっちがいい?」
「どっちもなにも同じコーラでしょ?」
まださっきの会話で怒っているのか、さっさと片方のグラスを掴んで「ありがと」と短く言うと一気にゴクンゴクンと口へ流し込みーーーすぐに一気に噴き出した。
「ぶぅほーーー!!」
「うわ!?こっちに噴き出すなよ!」
「ゲホゲホ……な、なによこれ?コーラじゃないじゃない!」
「俺はのお気に入りのアイスコーヒースパークリングだ!」
ドヤ顔で応えたので呆気にとられたのだろうか?口をポカンと開けて固まっている。
アイスコーヒーに炭酸水を混ぜたスペシャルドリンクなんだけど。
「変なもん飲ませないでよ!あまりにビックリして次元の彼方へ飛ばされじゃない!ドッキリかと思ったわ」
「説明する前に飲んじゃうから……でもあれだな?」
「なによ!」
「マーライオンみたいで面白かったな?」
「……殺す」
やっぱり佳純ルートは難しい。
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