第35話 分身
前書き
いつも読んで下さりありがとうございます。
完結までに☆200良ければと思います。(直近の目標達成出来るように頑張りたいと思います)
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「嫉妬でもしてくれたの?」
「ん? 急にどうしたの?」
「育枝にだよ」
「私には意地悪なんだね。でも嫌いじゃないかなそうゆう所」
白雪は頬膨らませてそんな事を言いながら、俺の隣に座って来た。
「学校でも会うぐらいに二人は仲良しなんだ」
「まぁな」
「って事は仲直り所か更に仲良くなった?」
「否定はしないかな」
「あぁ~私何やってるんだろ……本当にバカだな……」
あれ? 今日はやけに素直だな。
もしかして……。
「育枝と何かあった? 例えば口喧嘩して勝ったとか?」
「――――ッ!?」
いつも以上にわかりやすい反応に俺は白雪でもこんな反応するんだなと思った。
目を大きく見開いて、頬の緩みを隠し切れていなかった。
「な、なにを急に言うのかしら。お、落ち着いて――」
その前に白雪が落ち着いた方がいいと思うけど。
てか棘がなさ過ぎて今なら抱きしめても受け入れてくれそうなぐらい色々と柔らかいんだが。
「義妹なんかに嫉妬する程、私はお安くないわよ!」
「育枝が口喧嘩で負けたのか……。これは先日家で育枝にも言ったんだけど頼むから妹とは仲良くしてくれよ」
「それは無理よ! だって育枝超可愛いし……」
普通なら褒め言葉なんだけど、白雪と育枝に限ってはそうじゃないのかもしれない。
と言うのも先日家で育枝に言ったのだ。
「なぁ頼むから七海とは仲良くしてくれないか?」
すると育枝が即答してきた。
「それは無理! だって白雪七海めっちゃ綺麗なんだもん……」
よくわかった。この二人何処か似ている。
てか二人共最近は特に俺の前では素直過ぎる気がしなくもない。
いつもの白雪だったら多分「わかったわ」と言って聞き流していると思う。
「これは二人が仲良くなるのは時間かかりそうだな」
「そもそもそれが無理よ」
「まぁ、今はそれでいいや。ところで一つ聞いてもいい?」
「えぇ、なにかしら?」
「やっぱり俺と【奇跡の空】って七海の中では別人なのか?」
その時、白雪の視線が泳いだ。
そして何かを諦めたように呟く。
「小町から聞いたの?」
「うん」
「なら白状するしかないわね。結論から言えば、そうよ。本当は同一人物だとわかっているんだけどなんか私どうしても別人に見ちゃうのよね……。だからこうしていつも以上に積極的に関われば空哲君とも仲良くなれるし同一人物として見られるようになるかなとか最近思っているわ。事実そうだし……」
白雪は申し訳なさそうな顔をして言ってきた。
本当は知られたくなかった、そうとも捉えられる表情でもあった。
だけどこれでハッキリした。
白雪が好きなのはやっぱり【奇跡の空】である俺なのだと。
そう思った時だった。
ちょっと恥ずかしそうにして白雪が言う。
「でもね、最近は空哲君の側にいたいなって思うときもあるんだ」
つまり――それって。
脈があるって事なのか。だって側にいたいって事はつまり……そう言うことなのだろう。
もしかしたら今告白してもいけるのでは?
でもそれは出来ない。
今は育枝と付き合っている。流石に二股宣言をするわけにはいかない。
そんなことを考えていると、白雪は席を立ち俺の正面に来て言う。
「なんかずるいよね、空哲君って」
「なんで?」
「私ばかり素直にさせて。だから意地悪してあげる」
「えっ、意地悪?」
「そう、意地悪。私空哲君に期待しているの。だからこうやって素直になってあげてるのよ」
そう言って小悪魔みたいな微笑みを向けてくる白雪。
だけどどうしてだろう――やっぱり可愛いんだよな。
その美貌でそれは反則だろ。
「でも少しは感じているでしょ?」
「なにを?」
「空哲君が私に特別扱いされていることよ」
その時、白雪の口角が上がった。
確信犯か!
てか言われてみれば確かにそうだ。
俺がただの白雪のファンってだけなら、ここまでは優しくされていないと思う。
何より白雪が【奇跡の空】のファンなのは間違いないが、白雪から見た俺と【奇跡の空】は何より別人とさっき言っていたではないか。
――あれ? なんだ。
頭の中で何かが変わろうとしているこの感覚は一体。
今まで欠けていたピースが埋まるような感覚。
「私はね、多分だけど心の中で期待しているんだと思う。住原空哲と言う人間が私と同じ世界に戻ってくる事を。だから聞かせて。貴方は戻る気があるのかないのかを。それで私も色々と考えたい事があるから」
――戻る気があるかないか。
そんなのとっくの昔に決まっている。
ってそうか。ようやくわかったぞ。
今俺の中で明確な答えが出た。
俺は【奇跡の空】に戻らないといけないと今まで思っていた。
だけどそれが間違いだったんだ。
戻るんじゃない。
だってこれは俺が主人公の物語。
だったらこうは考えられないだろうか。
もう一度【奇跡の空】を創造すればいいのではないかと。
だって【奇跡の空】は当時俺が自分が作者だったらこうすると言う感情から創り出した架空の存在。その架空の人物を俺自身が動かして作品を作るイメージを当時は持っていた。簡単に言うと【奇跡の空】は当時中学生だった俺が大人達に見栄を張る為の自分とよく似た考えを持ち俺が成長して大人になった自分――分身と言っても過言ではなかった。だから白雪は俺と【奇跡の空】を同一人物として見れなかったのではないか。
「七海ありがとう! ようやくわかった! 俺がどうするべきかを!」
「え? ちょっと私の質問の答えは?」
「もう戻る必要はないと言うかそもそもそれが間違いだったと気付いた。だからちょっとだけ時間をくれないか? 後少しだけでいいから」
「う、うん。わかった。空哲君がそう言うなら待ってあげる」
「助かる」
俺はスマートフォンで時刻を確認する。
そろそろ育枝と約束した時間になるな。
「悪い、俺ちょっと行くところあるから」
俺はそう言って勢いよく走って二年一組へと向かった。
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