第4話 学校一の美女
その時、白雪七海が学校一の美女と呼ばれている理由がわかった気がした。
白雪は相変わらず綺麗で、時折見せるその笑顔に男子の心が持っていかれるからなのだと。凛として清楚な感じが男子の欲望を素直にさせ、胸は服越しでもわかるぐらいに膨らんでいてそれがまたエロい。また出る所はしっかりと出ていて、引っ込む所は引っ込んでいてと男子の目を釘付けにするその肉体に一度でも魅せられれば異性として意識しない事等不可能に近いと言えよう。今までは異性ではなく一人の作家として彼女を見ていたが今は違う。俺が本に集中できない原因は白雪七海を異性として認識してしまった事が原因だとようやくわかった。
「そう言えば、この前告白してきた三年生の西浦先輩とはどうなったの?」
「それ? 振ったわよ」
「なんで?」
「他に好きな人がいるからだけど?」
ふと、聞こえてきた会話に俺は「えっ?」と言ってしまった。
三年生の西浦先輩と言えば、めちゃくちゃ歌がお上手で野球部エースにしてイケメン、更には長身で勉強ができると女子達からかなり人気がある先輩である。そんな男の中の男の先輩を振っただと!?
――コイツもしかしてどこかに頭でもぶつけたのか!?
「アホだ……」
慌てて隣を見るが二人にはどうやら聞こえていないらしい。危なかった。
偶然聞こえてきた会話だったが、無視するにはあまりにも衝撃的だった。
あの白雪七海に好きな人がいる。
これは彼女が今まで告白してきた人間を振るときの謳い文句かとずっと思っていたのだが、白雪と仲が良い水巻にまでそう言うのであれば最早本当なのかもしれない。もしかしたらその好きな人とは……。
「小町は知らないだろうけど、私その人とはたまに学校でもお話ししているわよ」
「うそーーーーー!?」
その一言にクラス全員が白雪と水巻の方に一斉に視線を向ける。
普段男子とあまり話さない白雪の一言は水巻だけでなく決して大きな声ではなかったはずなのにクラス中に響いていたらしい。
それに今俺をチラッと見た?
「えぇ。別に同じ学校だし」
周りの目は全く気にしていないのか白雪は水巻にサラッと告白する。
「え? 誰なの!?」
水巻はクラスの全員の言葉を代弁するかのように質問をする。
男子達の耳は白雪の言葉を絶対に聞き漏らさないようにと集中している、そんな感じがする。
当然俺もその一人なわけで。
「気になるの?」
「うん」
「知りたい?」
「知りたい!」
まるで俺を含め、周りを焦らすようにそう言う白雪。
その間にも「もしかして俺かも?」と言う期待感を込めた男子達からの視線を知っているのか、少し微笑みながらクラスを一瞬見渡しながら。
「なら当てて見なさい。チャンスは一回だけ」
流石作家をしているだけある。悔しいが俺を含め人の心を惹きつける力は男子だけでなく女子にも有効的なようで、普段白雪と全く話さない女子達の視線まで釘付けにしていた。
水巻は腕を組んで真剣に考え始める。
流石白雪である。
相手の興味関心をこれでもかと煽ってくる。
「当たってたら素直に答えてあげるわよ」
その言葉にクラス中が水巻頼むと言う視線を送る。
当然俺もそこに参加する。
するとチラッと白雪と視線が重なる。
一瞬の出来事だった為に、それが偶然かそうじゃないかの区別がつかなかった。
だが白雪は俺も興味を持っている事に薄々気付いているような気がした。
「う~ん、七海が去年男子と話していた人物…………誰がいたかな~」
白雪と比較的に仲が良い水巻ですらすぐに出てこない事から白雪の男子との関りが容易に想像できてしまうのだが、とにかく白雪は用事がない男子とは話さないのだ。それを考えるとやっぱり俺の可能性がとても高いように見える。
「あら? 答えずしてギブアップ?」
「ちょっと待ってね。今シンキングタイムしてるから」
「えぇ、いいわよ」
余裕の笑みで水巻の答えを待つ白雪。
きっと当たらないだろうと思っているのだろう。
事実何百分の一を当てろと言う方が無理な話しなのはわかっているが、それでも水巻が正解を引いてくれると期待せずにはいられないのも事実なわけで。
「そんなに悩むんだったら、小町が知っている男子の名前言って見たら? もしかしたら当たるかもよ?」
その言葉に水巻がクラス全体に視線を泳がせる。
「もし良かったら俺を!」
「水巻、頼む!」
「俺達友達だろ!」
あちらこちらから自分の名前を言ってくれと言う男子達に水巻が更に悩み始める。
それを見てニヤニヤと笑う白雪。
――お前ただこの状況を楽しんでるだけじゃねぇか!!!!!!!!
と今すぐにでも叫んでやりたかったが、それをすると俺のイメージが壊れるのと周囲の反応が何より怖かったので自重する。
すると水巻の泳いでいた視線が俺を見て止まる。
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