学校一の美女だろうが私のお兄ちゃんを振るとはいい度胸じゃない~義妹とはあくまで偽物の恋人であって本物ではないはずなのだが、妙に色々とリアルなのはなぜ~
光影
プロローグ
第1話 プロローグ
出会いは偶然であって必然ではない。
だけど俺はそうは思わない。だって運命の人ってこの世にはいて、人間はその人と会う為に生きているのだと思っているから。初めて会ったのにも関わらず私にはこの人しかいないと直感的に感じる事があると言うがそれは魂がその人との出会いを求めているからではないかと俺は考えている。
だから出会いは必然であって偶然ではないと思う。
「面白い事を言うのね、私の作品を読んで置きながら真正面から否定するなんて」
彼女は図書委員をしている俺の前に立っている。
偶然だった。
俺は学校の図書室で受付をしているわけだが、まさか本を読んでいるうちに言葉が口から零れるようにして心の声が漏れ、それを偶然にもその作家に聞かれてしまうとは。
彼女は校内ではとても有名人である。
高校生にしてプロ小説家として活躍し、文武両道と言う言葉通り学年でもかなり優秀でテストではいつも一桁を取っている。本業が忙しい時はよく学校を休む事もあり本人と先生達もそれを隠すつもりはないのか皆に教えてくれている。ただ学生の本業は勉強なのでは? と少し疑問に思う事があるくらいだった。
彼女は一言で言うと美人。
心を開いた人間以外にはかなり冷たくて、何かと近寄りがたいオーラをいつも放っていて才色兼備ではあるが性格に少し難がある。そしてその容姿の美しさと何処かクールな性格から男子からの人気が高い。
なのだが、心を開く人間=自分の作品を読んでくれる読者(一部)と言う謎の定義があることから基本は一人でいる事が多い。
「それは価値観の違いであって決して否定しているわけではないよ。それにこういう考え方もあるんだなと感心しているんだ」
俺は本から彼女に視線を移して答えた。
正直驚いている。
それも二つの意味で。
一つは容姿も成績も運動神経も全て平凡な俺に話しかけてくるのか。
一つは何故春休み最後の日に彼女――白雪七海(しらゆきななみ)がここにいるのか。
「それで住原空哲(すみはらくうてつ)。私が書いた新刊の感想は?」
彼女は自信に満ちた声と表情で長く美しい金色の髪をかき上げながら言う。
彼女の言う新刊とは。
彼女が作家としてデビューするきっかけとなった作品の事である。
作品名は『失恋は甘い恋の始まり』で内容は――。
主人公のヒロインは自分に自信を持てずにいた。そんなヒロインがある日密かにずっと好きだった人から告白をされる。だけど恥ずかしさのあまり本当は嬉しくて嬉しくて仕方がないはずなのにこの想いがバレるのは嫌と思ったヒロインはずっと好きだった人からの告白を断ってしまう。そんな普通ではありえない失恋をした少女が今度は自分から告白をしに行くと言う少し変わった恋愛小説である。
「凄く良いと思うよ。前向きな主人公がとても印象的だった。何より主人公が生き生きとしている感じが好き」
俺はありのままの気持ちを伝える事にした。
そこに嘘はない。
すると学校ではあまり笑みを見せない彼女が嬉しそうにして微笑んでくれた。
その時、心臓の鼓動が高まった。
「そう。だったらよかったわ。同世代の人の感想をこうやって聞けて、私幸せ者だわ」
そう言って彼女は図書室から出て行った。
俺はそんな彼女の背中を静かに見送ってから、図書室の片づけを始めた。
今まで恋の一つすらしたことがなかった俺。
だけど彼女の作品を読んでから、心が締め付けられる感覚に襲われた。
それ以降、俺は気付けば彼女のファンになっていた。
そして、彼女を見るたびに胸がドキドキするようになっていた。
これは彼女の作品が好きだからドキドキするのか、彼女自身を好きだからドキドキするのか今は分からない。だけど、時折こうして俺の前に現れては話しかけてくれる彼女に少なからず好意があるのだけは確かだった。
高校二年生になった春。
俺の運命の歯車が動き始めた。
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