第49話 空からの脅威
さて。
ユメがそこまで状況を把握したところで、皆に説明した。
「おいおい、これは早くも成果を得られたんじゃねえか?」
「そうですわ。その、命を弄ぶ極悪人をまずなんとかしないと北伐が続けられないと分かっただけでも功績でしょう」
「うう、ゾーエ怖いとこだよう」
反応はそれぞれだったが、スイなどは話を聞いて震えあがってしまった。
「まずは、このハネオオ……えっと、あなたお名前なんていうの?」
「俺の名前か? ロケウだ。聞いてどうする?」
「ええと、まずはスターホールの城にロケウを連れて帰って、飼う……じゃなくて居てもらおうと思ってるのよ。ロケウだっていつまでも森の中なんて嫌でしょう?」
「ていうか、いつあいつが俺を連れ戻しに来るかって怖えよ。安全な場所があるなら連れていってくれ」
ロケウは狼の顔のまま、心底怯えたように口を歪めた。
「よっし、決まり! 今日の探索はこれで終了! これから城に帰ってロケウの衣食住をなんとかするわよ」
「お前ら、俺が怖くないのか?」
「このユメって奴はいつもいつも変わり者を引き寄せるんだ。それが今度はたまたま言葉を話す翼の生えた狼だったってだけだ。アタイらはこいつについていくだけだよ」
「ああ、あいつの名前はユメって言うのか。良い名だな」
そして、女子力バスターズ一行は予定より早くスターホールの城に帰りつき、留守番たちにロケウを紹介した。
ちなみに、ロケウが口を開いた途端、留守番六人中二号と三号が気絶し、五号と六号が失禁した。
ロケウを城に預けた翌日、ユメたちはさらに森の奥に歩を進めていた。
もうすでに目印がついているうちはそれを辿り、ロケウと出会った以降はさらに木に目印を付けながら昨日よりは少し気を付けながら進む。
なにせ、この森を抜けたところに居るのは、人間の脳を動物に移植するようなマッドサイエンティストなのだ。
ロケウ曰く、いつの間にか捕まって牢に入れられていたらしい。いかな罠を使ったか知らないが、その研究所かなにかに近づくと眠らされるガスでも撒いているのも知れない。
とにかく、森の出口だ。
森を抜けた先に、命を冒涜する狂った「なにか」がいる。
木に印をつけながら進み、ユメは一層の警戒を強める様仲間たちに言いながら、思案を巡らせる。
そういえば今日は一日で戻るか、森の中で一晩明かすかとか、そう言う予定を決めていなかった。ロケウが言っていた狂科学者かなにかのことで頭がいっぱいになっていた。
「なにか、いる」
先頭を歩いていたヒロイが皆に声をかけ、止まるように言う。
ユメたちは止まり、あたりを警戒した。
しかし、何も来ない。
「おいおい、ヒロイ。昨日の今日でそんな変なもんに出くわすかあ?」
ヨルが冗談めかして言った直後だった。
空から、何かが降ってきた。
ガサガサガサガサ、バキバキバキバキ!
森の木をへし折りながら天から落下してきたそれは、一見してなんだから分からなかった。
とにかく、赤くて、足がいっぱいあって、こちらに顔を向けていることだけは分かる。
一瞬で、周りの樹木をぺしゃんこにし、それでもまだ動きづらいのか、ハサミで辺りの木を切り刻んで自分の行動範囲を広げようとしている。
「って、ハサミ!?」
そう。空から降ってきたのは巨大な蟹だった。
レビテーションの魔法で独り浮き、やっとその全体像が見えたユメ。
訳が分からないが、とにかく、巨大な蟹が降ってきて襲いかかってきている。
こんなものが徘徊していたらその痕跡に気付かないわけがないので、突如空から現れたのだろう。
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