第43話 出発! いざ北へ
急に実感と緊張感が沸いてきて、ユメの足が震える。
すると、会場で見守っていた女子力バスターズの面々が走り寄ってきた。
そのまま、ユメを無理やり表彰台から降ろし、胴上げを始めた。
「わっしょい、わっしょい!」
とはいえ、実際に胴上げしているとは背の高いヒロイとオトメ位のもので、スイなどは手を動かしているだけだったが。
「うわあ! 下ろして! やめてー! みんな! 恥ずかしい」
その胴上げの様子を見て、観客席から女子力バスターズの声に合わせて「わっしょい、わっしょい!」と声が上がる。
とうとう、他の冒険者パーティまで混じり始めた。ゴブリンヒーローズやラストアライブ、ヘルウォールズ、なんとアストリットまでもが胴上げに加わり、大騒ぎとなった。
観客席から飛び出してきた魅惑の乾酪亭亭主や、サガ、孤児院の子供たちも一緒になって騒ぎ出す。
どうやらユメは簡単には解放してもらえないらしい。
そうして、大騒ぎの中、ゾーエ北伐パーティ選考試合は幕を閉じた。
☆
選考試合も無事?終わり、ユメたちはようやく魅惑の乾酪亭へ帰ってきた。
ただし、普段いないメンバーが何人かいた。
アストリット。そしてトモエである。
「おめでとう、陛下から伝言よ、文句なしでこの選考試合優勝は功績の一つだって。これで謁見まで二つになったわね」
トモエがそんなことを言う。
「さすがに疲れたでしょう。今夜は勝利の美酒に酔いなさい。準備が整い次第、七人を本島の北端の街、リモーアのゾーエの南端への船が出す手配をしているところまで馬車で送るからね。アストリットちゃんもそれまでこの宿に泊まるといいわ」
ゾーエの北伐が成れば、功績があと一つとなり遂にトモエとの決戦だろう。
アストリットも一緒に来てくれるのは心強い。今度は敵としてではなく、頼れる仲間として共に戦えるだろう。
しかし、アストリットはこう言った。
「誰かさんたちのおかげで私は種も実も使い果たしちゃった。栽培に少しかかるから数週間したら女子力バスターズに合流するわ」
「え? 一緒に来てくれないの?」
「誰が私の戦力を削いだと思ってるのよ。石のナイフまで折っちゃって。着いて行ってもしばらくは戦力にならないって言ってるのよ」
「それじゃ、あなたの素性を訊くのも合流してからになりそうね。わたしたちは先に行ってるから」
ユメはそう言い、アストリットとのできるだけ早い合流を願った。
☆
そして、出発の日はやってきた。
ユメ、ヒロイ、ヨル、オトメ、ハジキ、スイ、全員準備万端、体調万全だ。優勝賞金として宝石を受け取り、宝石も充分補充できた。
装備もトーナメント開始時よりさらに充実させている。トーナメントで傷ついた武具はハジキの銃も含めてナパジェイの軍が新品以上に整えてくれた。
余計な消耗を避けさせるためだろうか。リモーアへの馬車の旅の最中には馬に跨ったナパジェイの軍人が護衛に着いてきていた。
そのあたりの理由を訊ねてみると、「行きはあなた方がいても、帰りにモンスターにでも襲われてもし御者が殺されたら女子力バスターズを無事ゾーエへ送り届けたかの報告ができなくなるから」だそうだ。
クリスがこの遠征には「送り出した側にも責任が生じる」と言っていたのが思い出される。
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