第39話 女子力バスターズの反撃、アストリットの秘策

 ようやく、ウッドフォークの群れが減ってきた。


 アストリットは次から次へと種を地面に撒き、ウッドフォークを生みだしているのだが、それよりも早く、早く、打ち倒し続ける。


『凄まじい攻防です! アストリット選手、ドンドンとウッドフォークを生み出しているにも関わらず、それに負けないペースで女子力バスターズが蹴散らしています! 遠目にもアストリット選手を守るウッドフォークの壁が薄くなっていくのが分かりまーーす!』


『やるわねぇ女子力バスターズ、いくらなんでも無限にはウッドフォークを生みだせないと踏んで全力で攻撃しているんだわ。しかし、いつまで体力がもつものかしらぁ?』


 ヒロイが疲労している、ヨルも髪を振り乱し、限界が近いのが見て取れる。


 オトメはまだオークの体力で奮戦しているが、彼女の本分は打撃戦ではない。ときどきヒロイとヨルに回復の光を飛ばしながら前線を維持しつつ、今にも気力不足で倒れそうになっている。


 まさか、宝石が切れたので、自分の精神力から回復魔法を使っているのでは……?


 ユメの脳裏にそんな不吉な想像がよぎる。


「ユメお姉ちゃん、スイ、宝石がもうないよ。瞳から魔法を使っていい?」


 不安はスイの方が先に的中した。


「ダメッ! これは試合なの! アストリットもこちらを殺す気はないわ。命を削って魔法を使うのはやめて!」


 しかし、ユメに一体のウッドフォークが迫ると、スイはユメの忠告も聞かず瞳の色を燃えるような赤に変貌させ、火だるまに変えた。


「う……、じゃあ、ここまで、ね」


 瞳から魔法を使った疲労か、もう戦えないと分かった諦めからか、スイはその場にへたり込んだ。


「ユメお姉ちゃん、これ、お母さんがもたせてくれた護身用のナイフ。柄に宝石が埋まってる。使って」


 そう言ってスイは言った通り、柄に赤色の宝石が埋め込まれた儀礼用のナイフを投げ渡してきた。もっとも、これはユメの持つアーミーナイフのように相手を殺傷するためのものではない。

文字通りの「お守り」だ。


「……こっちも銃全部弾切れ、手榴弾ももうないわ、ユメ、後は任せた」


 ずっとユメたちの後ろからヒロイたちが相手をしていたウッドフォークを撃ち抜いていたハジキがそう言う。

 さすがに疲れたのか、集中力が切れたのか、その場に膝をつく。


 意識はあるが、スイとハジキはこれでリタイアだ。


 前に視線を向けると、なんとアストリットは全てのウッドフォークの種を使い切ったようで、自らナイフを取り出して応戦しようとしている。


 そして、最後のウッドフォークを輪切りにし、とうとう体力の限界が来たのか、ヒロイが倒れた。


 オトメが回復魔法をかけているが、回復魔法はあくまで傷を癒すための魔法。疲労しきった者までは起こせない。


 ヨルはまだ立っているが、もうフラフラだ。いつの間にか剣も一つ落としたらしく、右手にしか短刀を持っていない。


「オトメ、あんたのメイス、あたしに渡しな。もう休んでろ」


「は、はい!」


 オトメは素直にヨルにメイスを投げ、そして、自分はヒロイの上に覆い被さるように倒れ、気を失った。


 ヨルはオトメの投げたメイスを左手で受け取ると、アストリットにのろのろとだが、歩みを進めていく。


 これでさすがに勝負は決まったか……!


 ユメは、そう期待した。


『おおーっと、ヨル選手、右手に短刀、左手にメイスを持ってアストリット選手に向かっていきます! 対するアストリット選手は手にしたナイフ一本。そしてユメ選手はまだ健在! これで勝利の女神は女子力バスターズに微笑んだかーーーーーーっ!?』


『いえ、まだ分からないわよ、実況。アストリットは手にもう一つ、何か持ってるわ』


 ハイテンションな実況を遮り、トモエが言う。

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