第38話 玉砕覚悟

 まず一番素早いヨルがこちらに突進してくるウッドフォークの群れに水浸しの地面をものともせず吶喊していく。


 そして、一体のウッドフォークを縦に真っ二つにした。


 しかしすぐに別のウッドフォークが鞭のようにしならせた枝をヨル目がけて飛ばす!


 その頃にはヒロイも前線に辿り着いており、枝は彼女が振るう刀でスパン!と切断された。


 ――強い!


 ヒロイもヨルも、二か月前に比べて剣の腕が段違いに上がっている。それがたった二太刀で分かった。


そして、ヒロイがウッドフォークを三体ほど仕留めた後に一瞬だけユメたちの方を向いて叫ぶ。


「ハジキ! 撃ちまくれ! お前の腕ならアタイらに誤射することもないだろ!!」


「……ん」


 言われてハジキは銃を構えた。今度はいつもの銃身が黒い銃だ。


 足場がずぶ濡れにも関わらず、ハジキは正確にヨルやヒロイが戦っているウッドフォークを撃ち抜く。


 パァン!!


 パァン!!


 どうやらウッドフォークは人間のように脳や内臓があるわけではないので、どこを撃っても一撃で倒れる様子はない。


 しかし、効いてはいる。


 物理攻撃で倒せる敵なのだ。

 なら、おそらく魔法も効くはずだ。


 銃弾の嵐と斬撃が木に衝撃を加える音が寸断なく響き渡る中、オトメも飛び出した。


 手には、あの愛用のメイスを持っている。スカートの中から取り出していたので、どうやら足にベルト状のものを巻き付けて、そこに仕込んでいたらしい。


 ヒロイとヨルがときどきウッドフォークからの攻撃を受けつつも奮戦しているところにバシャバシャと足音を立てながら突っ込んでいったオトメがメイスを振るって参戦した。


 まず、オトメはヨルとヒロイに回復魔法の光を飛ばす。


 そしてすぐさま、ヨルを枝で狙っていたウッドフォークをメイスのフルスイングで吹っ飛ばした。


 さすがオークの亜人。


 神官とはいえ、回復役とはいえ、その白兵戦能力は半端ないものがある。


 チーム・女子力バスターズは綺麗に前衛と後衛に三人づつ分かれた。


 後衛の一人、ハジキは背中に背負っている銃を次々に取り換えながら寸断なくウッドフォークに銃弾を撃ち込みまくっている。


 一度、銃が弾切れを起こしたとき、手榴弾を投げた。これも、ウッドフォークには効くらしい。


 さて。

 後はユメとスイの二人はどうするか。


 魔法攻撃はアストリットには届かないがウッドフォークには届く。宝石の残りはもう気にしない。


 ならばなるべく高威力かつ前衛が戦いづらくならない魔法をありったけ……!!


 もう「氷が溶ける」などと炎の魔法を遠慮することもない。炎に弱いであろうウッドフォークをすべて焼き尽くしてやるだけだ。


「スイちゃん、ウッドフォークの群れにできるだけ威力の高い魔法を叩き込むよ! 一体づつ殺す必要なんてない! 宝石がある限り、全部ぶっ壊すつもりで撃ち込むよ!」


「分かった!」


「エクステンドナパーム!」


「ウィンドカッター・トルネード!」


「ギガンティスフィスト!」


「マグマ・エクスプロージョン!」


撃ち込む!


ただ、魔法を撃ち込む!


 クリス師匠から習った魔法、母が見せてくれた魔法、その中でただひたすらに、仲間は無事であると信じて。ヒロイとヨルが、ハジキがいくら撃ち込んでも自分たちには当たらないと信じたように、信じて、信じて……!

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