第85話 村創立→早速トラブル襲来2

「お、姉ちゃんいい尻してんな!」


「俺達と遊ぼうぜぇ」


手下4もモニカ近づいていき、モニカの腕を掴んだ。


「娘に近づ~「モニカさんに触るんじゃない!!」」


マドリーが怒鳴るより早く、モニカと男たちの間に割って入ったのは、先日から働いていたマルス少年だった。


「レディに失礼なことをするんじゃない!みっともないぞ!」


マルスは腰に差していた短剣を抜いた。


割って入ったのは立派だったが、先に剣を抜いたのは失敗であった。


「なんだぁ、やるのか坊主?」


そう言った手下3はいきなりマルスに向かって蹴りを放った。まともに食らって壁まで飛ばされて倒れるマルス。


手下3:「客に向かって剣を抜くとか、ダメじゃないの~?」


手下4:「従業員だろ?教育がなってないようだな?」


だが次の瞬間、手下3は襟首を掴まれ後ろへ引き倒された。


「大丈夫か、マルス?!」


マルスに駆け寄るコジロー。マルスは大丈夫ですと言いつつも、口から血を流していた。


それを見た瞬間、コジローは加速を発動、手下3の背後まで駆け抜け襟首を掴み、走った勢いを利用してそのまま手下3を玄関の方向に放り投げた。


そして、次の瞬間には、コジローは手下4の横に移動、モニカの手首を掴んでいる手下4の腕を掴んでいた。


コジロー:「手を離せ・・・」


コジローは相手の手を握りながら加速を発動する。2倍速、4倍速、8倍・・・


加速の魔法によってコジローは単位時間当たりにできる仕事が増えていく。8倍速で10秒間握れば、80秒間握ったのと同じ「仕事量」が10秒の間に作用する計算となるのだ。つまり、実質的に握力が8倍になったのと同じ効果があるのである。


「痛ぇっ、はなせ・・・この!」


手下は堪らずモニカの手首を離す。その瞬間にコジローは手下4の襟首を掴み、玄関の外に放り投げた。


コジローには人並みの膂力しかないのだが、加速による高速移動の運動エネルギーをうまく利用しているため、勢いに抵抗できるわけもなく、手下4も一瞬で庭に放り出される。


コジローが静かに、だが激しい怒気を込めて言う。


「出ていけ」


モニカに手を掛けられて、コジローは怒っているのだった。


「あんだてめぇ!」


一瞬遅れて残りの手下が騒ごうとするが、ボスがそれを制した。


「やめねぇか!!」


ボスはマドリーに向かって


「すまない、手下どもが迷惑を掛けた。」


と侘びた。


「今度はちゃんと予約を取ってこさせてもらうとしよう。」


しかし、マドリーは言い放った。


「予約もとらんでいい、お前らは出禁だ。」


ボス:「随分強気な商売だな。繁盛してるからって調子に乗り過ぎじゃないのか?」


マドリー:「誰が客かは俺が決める。気に入らない奴は客として扱うつもりはない。」


ボス:「だが、先に剣を抜いたのはそっちだ、こちらの正当防衛だと思うが?まずいんじゃなないのか?」


手下1:「妙な噂が街に広がるってこともあるかもしれんな(笑)」


マドリー:「言ったろ、誰が客かは俺が決める。お前らは客じゃない、金払ってないだろ。それと、知らんようだから教えてやるが、この村と死霊の森は人の法の外にあるという事になっている。人の法は当てはまらんよ。」


ボス:「面白い!つまり、俺達がここで誰かを殺しても、人の法で裁かれる事はないわけだな?」


マドリー:「人の法で裁けなくとも、別の法で報いを受ける事になるがな?」


手下2:「やるってのかコノヤロウ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


ボス:「やめろ!」


ボスは手下を制すると、不敵に笑い、騒がせて悪かったとだけ言って出て行こうとした。しかし、コジローに放り出された手下達が収まらず、剣を抜いた。


それを見てコジローも外に出る。


ボスはやめろと言うが、手下は聞かない。


しかたねぇなぁと言いながらボスはコジローのほうを向き


「こいつらも収まらねぇみてぇだから、ちょっと相手してやってくれるか?」


と言った。


コジローは次元剣の柄に手を掛けながら言った。


「俺は手加減ができない。剣を抜いたら相手が死ぬ可能性が高い。それでもやるのか?」


ボス:「たいした自信だな。おめえらどうする?殺されてえのか?って言われてるぞ?」


手下3・4:「「ヌッコロシテヤル」」


コジローは次元剣を抜き、刀身を伸ばし構えた。それを見た手下3・4は一瞬、逡巡したが、すぐに襲いかかってきた。


だが、既に加速を発動しているコジロー。途端に、コジローの視野の中で、相手の動きが超スローモーションになる。


現在のコジローの加速魔法は40倍速まで到達している。百メートルを0.5秒以下で走り抜ける速度である。


コジローの剣術の腕の良し悪しに関わらず、この速度差ではコジローに剣が当たるわけがない。つまり、コジローには剣の技術そのものがもはや不要なのである。


コジローはゆっくり落ち着いて斬り掛かってくる二人の側面に回り込み、次元剣で腕を打った。次元剣は峰打ちであるが、高速の一撃で二人の腕は簡単に折れてしまった。


加速を解除して、コジローは言った。(加速を解除しないで話すと早回しのようになってしまうのである。)


「まだやるのか?」


二人の腕は途中からぽっきり90度に折れ曲がっていた。周囲で見ていた者からすれば、恐ろしい速度でコジローが動き、一瞬で二人の腕を折ってみせたという事になる。


少しおくれて手下達の悲鳴があがる。


ボス:「・・・殺さないでくれでくれて礼を言うべきか。騒がせたな。」


男達はそのまま素直に引き下がって行った。


次元剣を鞘に収めたコジローが振り返ると、目を輝かせたマルスが居た。


「弟子にはしないぞ・・・」




手下1:「ボス・・・どうしやす・・・?」


ボス:「あの男はやっかいだな・・・」




コジローの力を見せつけられて、もう来ないだろうとマドリーは思ったのだが・・・


呆れた事に、男達は翌日にはまた現れたのである。



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