第75話 剣聖、バトルマニアに迷惑する3
コジロー:「どちらが強いかなら、はっきりしている。アンタのほうが俺より強い。それは間違いない。それではダメなのか?」
テムジン:「剣聖が負けを認めるというのか?」
コジロー:「全然構わない。剣聖じゃないし。」
テムジン:「それでは世間が、俺のほうが強いとは認めてくれんのだよ。」
コジロー:「どうあっても、俺と殺し合いがしたい、諦めてはくれないということか?」
テムジン:「噂の剣聖と是非にでも試合がしてみたい。お前が断ろうと、逃げようと、必ず受けてもらう。」
コジロー:「・・・さっきも言ったが、実力は、俺のほうが多分弱い。だから、真剣で戦えば俺は怪我するか死ぬことになる。俺はできたら死にたくはないのだが・・・」
テムジン:「弱いのなら仕方がないだろう。分不相応な称号を持った不運だと思って死んでいけ。」
コジロー:「迷惑な奴だなぁ・・・ひとつ言っておくが、俺は下手くそなので手加減ができない。オマエが死ぬ可能性もあるんだぞ?それも覚悟の上か?」
テムジン:「無論だ!!御託はいい、さっさと始めよう!」
コジロー:「俺はテイマーだ、従魔と一緒に戦ってもいいか?」
テムジン:「剣の勝負がしたいのだが・・自信がないというのならそれでもいいぞ?」
コジロー:「では、まずはオレ一人で戦って、勝てなそうだったら獣魔も参戦するということでどうだ?」
テムジン:「ふん、構わん!」
テムジンは剣を抜いた。
コジロー:「オマエから挑んで来たのだ、殺されても恨むなよ?・・・俺は殺されたら恨む、化けて出るがな。」
コジローも剣を抜き、だが、コジローは、それでもできれば殺したくないという思いが過り、つい、剣を峰打ちに返した。
お互いに剣を構えたことで戦いは暗黙のうちに開始となる。
激しい殺気が交錯する。
刹那、コジローは、加速と転移を発動、テムジンの背後に瞬間移動した。
テムジンの背後から、加速(二十倍)による高速の斬撃が襲う。
だが、驚くべき事に、テムジンは背後からの転移斬に反応し、振り返って受け止めて見せたのだ。
「ほう、やるな!」
驚くテムジン。
慌てて飛び退くコジロー。
転移斬に反応するレベルの相手、さすが、強者を探して戦いを挑んできたというだけの事はある。
これは、危険だ、コジローのほうが殺される可能性が高い。手加減している余裕はない。
コジローは、峰打ちをやめ、刃を向けた。次元剣を人に向けて奮うという事は、相手を殺す事になるが、こちらが殺されかねないのであれば仕方がない。
次元剣は、なんでも斬れる剣である。相手が攻撃してきた剣を受け止めてしまうと、その剣が斬れてしまい飛んでくるので危険である。相手の攻撃は受け止めずにかわすしかない。
それ以前に、相手の剣ごと斬ってしまうのが常套手段となる。先に攻撃を仕掛けて、相手の防御ごと斬ってしまうのが危険が少ない戦法となる。
コジローは剣をさらに伸ばして見せた。その長さを見せつけつつ、コジローは再び斬りかかる。
加速(二十倍速)の高速の踏み込み。遠い間合いから水平斬り。
だが、相手は転移斬を初見でかわすレベルである。まともに正面から行けば反撃をくらう可能性がある。
コジローは斬り込みながらも同時に転移を発動し、位置を変えながらの斬り込みである。それでも反応されるかも知れない、それも想定内である。テムジンがもし剣で受け止めてくれれば、剣ごと体を斬られて終わりである。
テムジンはコジローの初太刀を剣で受け止めている、今回も受け止める可能性は高いとコジローは思ったのだが・・・
テムジンは剣で受け止めることをせず、飛び退いて躱してみせた。
一歩引いた程度では躱されないよう、数メートルにも伸ばした長剣で深めに踏み込んでの斬撃であったのだが、間合いの外に逃げられてしまった。
勢い余った次元剣が横にあった岩に当たり、岩の上部を斬り飛ばしてしまう。
なんてカンの良さであろうか。テムジンは、受け止めてはいけないと見抜き、咄嗟に空振りさせる事を選んだのである。
「なるほど、凄い切れ味だ。その剣が貴様の必殺の武器と言うわけか。ならばこちらも奥の手を見せよう。」
テムジンはなにやら呪文を唱え始めた。詠唱はすぐに終わり、テムジンの体の色が変わる。
「先に言っておいてやる、魔法によって、この体は鉄壁の強度と化した。いまだ剣では傷ひとつ付けられた事はない!」
(【アストロン】か・・・確か、ギガンテスがこのスキルを持っていたと脳内百科事典で読んだ気がするが・・・
・・・あれ?)
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