第33話 護衛依頼2

入場手続きをして門をくぐり、治療院へと向かうミル。コジローとマロは別れて街を少し散策することにした。護衛の任務は往復なので、昼過ぎにまた門の前で待ち合わせをすることになった。


結局、サンドイッチを食べる暇はなかったので、朝飯も食っていない。どこかの店で朝食をと思ったが、屋台が多く出ている街だった。


ほぼ完成に近いが、まだ建設中の街である。朝昼と、建設作業員に朝食昼食を提供する店が多いのであった。


建設に関わる作業員はもう仕事に向かっていたので、屋台は空いている。そこで適当にサンドイッチや串焼きを買って食べるコジローとマロ。


食事の後は、この世界に来て二番目に訪れた街であるサンテミルを見て回ることにした。



◆新たな城郭都市


サンテミルは15年ほど前から建設が開始された新たな城郭都市である。この地域の領主、ウィモア辺境伯により、アルテミルの人口問題を解決するために15年前に始められた。


ウィモア伯爵の領土は広いが、辺境の山林地帯が多く大きな平野はない。小さな平野や盆地、山中などに都市が散在していた。そのほとんどが高い外壁を持つ城郭都市である。


この世界には魔物が存在しており、特に辺境ともなれば危険な魔獣が闊歩している。その中で人間が安全に暮らすには、堅牢な外壁を持つ城郭都市とする必要があるのである。


城郭都市である以上、どの街も発展するほどに、やがて人口問題に直面することになる。城壁で囲われ面積が限られているために、住居や畑を簡単には増やすことができないのである。


対策としてまず考えられるのは、城壁を新たに築き面積を広げていくこと。平野部にある都市にはこの構造が多い。


しかし、起伏の多い山間部にあるウィルモア領の都市では、その方法は少し難易度が上がる。山間部や渓谷などに合わせて立体的な城壁を作る必要があり、そこに資材を運ぶのも平地より難易度が上がっていく。


アルテミルでもこの計画はあり、現在も細々と進行中ではあるのだが、ウィルモア伯爵は一気に問題を解決する手段として、新しい城郭都市を建設する決断をしたのである。


もちろん、これも、決して簡単というわけではないが、この一大事業をウィルモア伯爵は短期間で成功させたのである。まだ未完成ではあるものの、今や新しい街「サンテミル」は街として順調に機能し始めていた。



◆帰路


昼過ぎ、城門では既にミルが待っていた。無事に治療は終わったそうである。


本当は、転移魔法を使えばすぐにでもアルテミルノ街に戻る事も可能なのだが

(サンテミルには行ったことがなかったので転移は使えなかったのである)

しかし転移魔法についてはあまり大っぴらに宣伝しないほうが良いらしいので、それは秘密にして歩いて帰る事にした。


なんだかんだで、既にコジローは、結構、人前で転移を使ってしまっているのだが・・・


急ぐ用事は終わった事だし、帰りは普通に歩いて帰ろうと提案したのだが、意外にも、ミルがまたマロに乗りたいと言い出した。


「楽しかったです!!」


え・・・朝はマロのジェットコースター走行で腰が抜けていたのでは?


「いや、怖かったんですが、だんだん、また乗りたくなってくるというか・・・」


ああ、そう言えば地球でも、ジェットコースター好きは女性のほうが多いと聞いたことがある。。。




では、と言う事で、再びマロに大きくなってもらい、ジェットコースターの開始である。


いや、マロよ、わざとアクロバチックな走行しなくていいんだってば!もっと優しく走ってくれないかな・・・とコジローは思ったが、ミルが喜んでいるので言えなかったのであった。




しかし、考えてみれば、マロに乗って高速で駆け抜けている間は、魔物や盗賊に襲われる事はほぼないわけで。


これでは護衛依頼ではなく、タクシー業務だな、とコジローは思った。


しかも、徒歩で3時間の距離もマロなら数分で走破できる。さらに、行ったことがある場所なら、転移で移動できる。


いっそ、タクシー業務でも始めたほうが儲かるんじゃないか?などと考えるコジローであったが・・・しかし転移はあまり見せたくない、となると、宅配業務?


などとコジローが考えていた時、マロが大きくジャンプして木々の上に出た。空中からは街道が見えるが・・・・


その街道を走る馬車が魔物に襲われているのが見えたのであった。



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