第66話 盗賊退治

盗賊が良く出没するという街道を一人歩くコジロー。


一人で歩いているだけで素直に盗賊が出てきてくれるか疑問もあったのだが、以外にも素直に盗賊は出てきてくれた。


前に、盗賊に襲われていると思って助けた馬車が犯罪者で、襲っていたほうがそれを捕まえに来た冒険者であったという間違いを犯した事があるコジローは、一応相手が確実に盗賊であるという確証を取りたかったのだが、それも素直に相手から名乗ってくれた。


「一人旅は不用心だぜ、盗賊が出ることもある、俺達のようにな!」


盗賊は、情報ではもっと大勢いるはずであったのだが、こちらが一人ということもあるためか、数人であった。


金目の物を置いていけば命だけは助けてやると言う盗賊であったが、コジローが取った作戦は・・・無理せず一旦逃げるというものであった。




森の中を隠れてついてきてもらっているマロが、打ち合わせ通り道を塞ぐ盗賊の背後にファイアーボールを打ち込んだ。突然背後に起きた爆発音に盗賊たちが振り返っている間に、コジローは背をむけて、元来た方向に走って逃亡を開始。


短距離転移で百メートル先に転移してから走っていくコジロー。気づいた盗賊が追ってくるが、コジローはタイミングを見ながら短距離転移を繰り返し、あれよあれとと盗賊達を引き離していき、ついには見えないところまで逃げてしまう。


「なんて逃げ足の早い奴だ・・・」


諦めた盗賊は引き返していく。それをマロとコジローで追跡していく。盗賊がアジトまで戻ってくれれば、その場所を突き止めることができるが・・・


かなり離れていても、コジローとマロであれば追跡は可能である。マロも当然、人間を遥かに超える視覚・聴覚・嗅覚を持っているし、コジローはゼフトに貰ったブレスレットの探索魔法で、盗賊たちの位置が分かるのである。


つくづく素直な盗賊達でコジローは助かった。アジトを発見したコジローは、引き上げて場所を報告すれば任務完了であるのだが・・・・そこで、幼女が木に縛り付けられ、鞭打たれようとしているのを見てしまった。


幼女の母親であろうか、女性が一人、縛られた少女に大かぶさり、鞭をその身に受けて耐えている。周囲には、縛られてボロボロになっている女性が何人か倒れている。動かないので生きているのか死んでいるのか分からない。


その女性は鞭を受け、意識を失ったのか倒れてしまった。

鞭を持った男が「頑張らないと娘が鞭打たれちゃうよ~?」とからかうように言っているのが聞こえ、コジローは思わず飛び出していた。


コジロー:「何をしている?!」


盗賊A:「何だぁお前?」


コジロー:「何のため訊いてやる、何故こんな事をしている?!」


盗賊A:「何って、決まってんだろ、ストレス解消だよ!それよりおまえだれ・・・」


コジローの次元剣が、その場に居た盗賊全員をバラバラに斬り裂いていた。


少女を守ろうとしていた女性を助け起こすコジロー。


「た、たすけてください・・・」


女性は街道で襲われ拉致されてきたという。男たちは全員殺され、女だけ連れてこられたと。


その時、近くにあった洞窟から、異常に気づいた盗賊の仲間が次々と現れ、襲いかかって来た。


しかし、コジローの得意の魔法のひとつ "加速" は既に二十倍速まで到達していた。疾風のごとき速さで異様に長い剣を振り回すコジローを前に、あっというまに死体の山が築かれていく。


殲滅が終わった後、洞窟の中に入っていくコジロー。次元剣は狭い中で振り回しやすいよう短刀サイズに縮めておく。コジローの索敵魔法によると光が3つ見える、まだ三人ほど中に居る。光の方へ進んでいくと、奥から矢が飛んできて、コジローのマジックシールドによって弾かれた。


コジローは奥にいた三人を確認すると、一気に奥の部屋に踏み込み斬り裂いた。


奥に居た三人は、実は盗賊のボスと幹部であった。形勢不利と見て、部下に戦わせておいて自分たちだけ逃げ出そうとしていたが、洞窟は行き止まりで裏口などはなく、気付かれないように隠れていたのであった。


コジローは、倒すにしても峰打ちで生かして捕えるつもりだったのであるが、虐待行為を見て頭に血が登ってしまい、思わず皆殺しにしてしまったのだった。




失敗したかと思ったが、迷っている暇はない。捕らえられていた被害者を救助する必要がある。マロに隠れている盗賊が居ないか周囲を探索し、見つけたら殺さないように倒すよう指示。また、もし魔獣が襲ってきたらそれも倒すよう指示し、自分は転移でノマラクに救助隊を要請に行った。


被害者は、駆けつけてきたノマラクの救助隊の馬車に乗せられていった。マロは救助隊が来るまでに、3人、見張りに立っていた盗賊を気絶させ確保、さらに、襲ってきた魔獣の遺体も何匹か積まれていた。


そこで、救助隊に同行していたノマラクのギルドマスター・ジョエルに、盗賊たちの溜め込んでいた金品も運ぶかとコジローは尋ねられたが断った。一般的に、盗賊の持っていた財産は、討伐した者がすべて貰うのが通例であり、今回もそういう条件が適用されたのだ。


コジローは、洞窟の中を見て回り、武器や貨幣、その他金目のもの、そうでないものも一切合切、マジッククローゼットに収納していった。コジローの亜空間制御魔法は、この程度であれば容量を気にする必要はないほどになっていたのである。


収納魔法が使える魔法使いは非常に少ない。ジョエルはコジローの収納魔法を見て驚き、しかし、剣聖ともなれば当然かと関心していたのであった。


コジローに倒された盗賊は総数で50人以上、それをたった一人で乗り込んで殲滅してしまった、またコジローの噂話がひとつ追加されたのであったが、コジロー自身は知らないままであった。。。




コジローは少し反省した。全員皆殺しにする必要はなかった。生かして捕えることができたはずだ。


ただ、囚われていた女性達が生きて助かったこと(何人かは間に合わず亡くなっていたが、何人かはまだ息があり、助かったのである)、そしてマロが見張りを生かしたまま捕らえてくれていた。お陰で、取り調べで盗賊の実態が分かった。


この盗賊団は、金品を奪うだけではなく、男は当然皆殺し、女子供は攫ってきては、ストレス解消と称してなぶり殺しにするのが趣味だったのである。


コジローの反省hあ、簡単に殺してしまった事であった。こんな奴らこそ、簡単に殺さずに、食肉植物にでも転生させてやればよかったのだ、ドジル達のように・・・。




盗賊が溜め込んでいた金品は意外と多く、金貨だけでも2千Gあった。盗賊退治は意外と儲かるのかと思ったコジローであったが、そこはピンきり、盗賊によっては一文無しに近い事もあるので、運次第なのであるが。




リヴロットは、雑務を片付けて自分も討伐に参加するつもりでいたのだが、偵察に行ったコジローがすべて片付けてしまったと聞いて、少し残念に思ったが、素直に喜んだ。最初から、そうなる予感もあったのである。


「さすが、剣聖殿」


そう言って、コジローをからかうリヴロット。そこで初めて、自分にそんな噂が立っている事をコジローは知らされたのであった。


しかし、領主令嬢リヴレットが、剣聖を引き連れ世直し旅をしている、そんな噂が流れはじめた事には、リヴロットも気づいていなかったのであったが・・・。。。

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