第67話 やっぱりソースが欲しい…
コジローは、モニカと知り合ってから、彼女と話すためによくマドリー&ネリーの家に通うようになっていた。
モニカは、コジローは日本人だった頃に好きだったアイドルにちょっと顔が似ていることもあり、何度も会いに行くうちに女性としての淡い好意を抱くようになっていた。
マドリーとネリーも二人の恋路を暖かく見守るという雰囲気であったが、当のモニカは、コジローに対して恋愛感情はなかった。もちろん、コジローを嫌う理由も全くなく、仲の良い友達という位置付けではあったが。
モニカにその気がないとはいえ、前世が日本人という共通の秘密がある事で親密な関係になっているのは事実だった。日本の思い出を語れば当然、話が弾むのである。
そして、よく話題になるのは、日本の食べ物の話。
この世界は、日本と比べると、どうしても食べ物が少し劣るのである。
そもそも、コジローは日本人だった時、日本は世界で最も料理が美味しい国であると思っていた。それが真実かどうかは、コジローも世界中の料理を食べたわけではないので分からないが。
しかし、同じ地球上であっても、貧しい食文化しかないという国もあったはずである。特に、戦争が続いているような国や、貧しい国は仕方がないであろう。
この世界も、常に魔物との戦いを強いられる、平和な日本に比べれば生きていくのが困難な世界である。当然、死ぬ者も多いし、命は軽い。みな生き延びる事が最優先で、食べ物の味は二の次と言う事になりがちなのは仕方がないことであろう。
しかし、日本の料理を知っている者としては、やはり、時々無性に食べたくなる料理もあるわけで。
モニカは、前世では博多の女子高生だった。博多といえばとんこつラーメンというイメージをコジローは持っていたし、コジロー自身もとんこつラーメンが大好物だったのだが、モニカはそれほどラーメンは好きではないとのことだった。あの独特に臭い匂いがあまり・・・と言っていた。
コジローは博多に行ったことがないので分からないが、本場のとんこつ臭はコジローが知るより強烈なものらしい。
東京以北で食べられるとんこつラーメンの匂いは、かなり抑えて作られていると聞いたのをコジローは思い出した。コジローは福島で生まれ、東京に出て働いていた。西日本には行ったことがないのである。
モニカとコジローが共通して、もう一度食べたいと思うのは、カレーライスとトンカツであった。しかし、この世界にはカレーは存在していない。
この世界でも、名前は違えども、地球にあった食材とよく似た食材はたくさんみつかる。小麦粉もあるし、パンも焼かれている。
ただ、米はいまのところ、このウィルモア領ではコジローは見たことがない。家から出たことがほとんどないモニカも当然知らない。
スパイスもこの世界独特のものが存在するようで、探せばいろいろな種類がある。上手くすれば、カレーも再現できるかも知れないとはコジローとモニカも思ったのの、残念ながら、カレールーを使わない、スパイスから作るカレーの作り方を二人ともよく知らないのであった。
コジローが日本人だった時に、一番好きだった料理は、カツ丼、カツカレー、ラーメンであった。特にカツカレーは、この世で一番美味い料理だと思っていた。
モニカも、カツは大好きだと言っており、二人でカツが嫌いな日本人はそうは見つからないだろう、と盛り上がったのだが・・・
ふと、トンカツであれば、意外と簡単に作れるのではないか?とコジローが思い立ったのである。
豚肉に近い味の肉がこの世界にもある。それは、オークの肉。かなり似ている。そして、パンもある。つまり、パン粉も作れるはず。。。あとは衣をつけて油で揚げれば・・・
ネリーに頼んで、キッチンを使わせてもらう事にした。料理に挑戦するモニカとコジローを、なぜかマドリーとネリーが微笑ましく見ていたのであるが・・・
できた!!
試食。
マドリーとネリーも一緒に、四人で食べてみた。
とても美味しくできており、マドリーとネリーは初めて食べるトンカツに大絶賛であった。
しかし・・・
コジローには物足りなかった。
決定的に物足りないものがあった。
それは・・・
ソース!!
やはり、トンカツにはソースがないと!!
高級なトンカツや天ぷらなども塩で食べたりするので、今回は塩で食べてみた。それでもうまかったのだが、やはり、ソースが欲しい・・・
モニカはあまり気にしていないようだったが、パンに挟んでトンカツサンドにした時に、ソース味でないと嫌じゃないか?とコジローに言われ「確かに」と同意した。
だが、コジローもモニカもソースの作り方は分からないのであった・・・
だが、ふと、モニカが言った。ゼフトなら知ってるのでは・・・?と。
ゼフトはアンデッドである。
昔は人間だったが、今は、この世界でいわゆるリッチと呼ばれるモンスターである。
はっきり言ってしまえば、骸骨である。
食べ物は必要ないし、食べようと思っても食べられないだろう。
そんなゼフトに食べ物のを事を聞くという発想はコジローにはなかったのだが・・・ダメ元で聞くだけ聞いてみてもよいかと思ったのである。
結果・・・
驚くべき事になってしまった。。。
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