第49話 リヴロットと仮想対決
その後、豪華な料理が用意された別室に案内されたコジロー。室内では、領主の娘であるリヴロットと、妹のアナスタシアが待っていた。
コジローはアレキシに、マロを連れてこられないのか尋ねた。
室内で一緒にと希望したつもりだったのだが、厩舎に押し込められてしまっている。
まぁコジローとしても、室内に動物(ましてや魔獣)を入れるのは無理なお願いであるかも知れないのは分かっていたので、ダメというなら諦めるつもりもあったのだが、アレキシは執事を呼び、急ぎマロを連れて来いと命じた。
一緒にコジローも迎えに行こうかと思ったが、部屋からコジローを出したくないのか執事が大丈夫だと言うので
「マロは人間の言葉が分かる、言えばちゃんと分かるよ。」
と言って任せた。
程なくして、マロが室内に小走りで入ってきた。
妹のアナスタシアが目を輝かせて、撫でてもいいか?と聞くので許可する。アナは大喜びでマロを撫で始めた。マロもまんざらでもないようである。
アナがマロに料理を食べさせている間、コジローはリヴロットと話をしていた。
リヴロットはコジローの剣を見せてほしいと言ったが、盗難防止の魔法が掛かっている事を説明して、コジローが手に持ったまま見てもらう。自在に伸縮し、なんでも斬れるとの説明に、リヴは非常に驚いていた。
リヴもミスリルの剣を見せてくれた。ウィルモア家の家宝だそうである。細身でキレイな装飾が施されているが、実用制のある節度を弁えたデザインとなっていた。
そして、話題はお互いの能力の話になる。
リヴも、コジローの事はずっと気になっていたらしい。本気で戦ったどうなるか?勝てるか?色々と妄想していたのは、コジローと同じであったようだ。ここから、お互いの仮想対戦の予想を語り合うことになった。
試合をもう一度シてみれば良いのだが、本気でお互いに殺すつもりで戦ったら?という想定の話なので、それもできないのであった。
コジローとしては、「未来予知」が相手では、正直、勝ち目はなさそうだと思っていた。行き先が分かっている転移など怖くはないだろう、出現する予定の場所を斬ってしまえばよい事なのだから。
実際、リヴロットは転移攻撃に関しては、驚きはしたが先を読んで対応できるので、通常の攻撃とあまり変わらなかったのである。ただし、驚異だったのはコジローの攻撃速度であったようだ。予知で先が読めていたとしても、あまりの速さに防ぐのが精一杯で、先を読んでカウンター攻撃を仕掛けるまでの余裕はなかったのである。
コジローとしては、もし本気で戦うのであれば、峰打ちをやめ、本気で斬りに行くことになるわけで。次元剣なら、受け止めた剣ごと斬ることが可能なので、倒せるのではないかと考えた。だが、予知で読まれて、受け止める事を避けられた意味はない。空振りさせられてカウンターを食らうのは最悪なので避けたいと考えていた。
リヴとしては、ある程度速度にも慣れてしまえば、そのうちカウンター攻撃をするチャンスも生まれるのではないかとは確かに思っていた。しかし、そうであっても自分が攻撃をしかけたタイミングで「転移攻撃」をカウンターで発動されるとやっかいかもしれないと思った。
リヴが転移攻撃を待って、そこに合わせて予知でカウンターを仕掛け、空を斬らせてリヴの斬撃を当てられるなら、リヴが勝てるかもしれない。
逆に、リヴが先に仕掛けたところに、転移斬りをカウンターで発動されれば、コジローが勝つ可能性がある。
攻撃を仕掛けている間が、もっとも防御がしにくい瞬間であるのだから・・・
結論としては、リヴがコジローの速度に対応できればリヴの勝ち、対応できないほどの速度で攻撃ができればコジローの勝ちという事になりそうだという話に落ち着いた。
結局、リヴの予知がどこまで正確に、どこまで詳細に先が読めるのかによって変わってくることになる。
ただ、まだ考えることはある。コジローは、最後にリヴの攻撃を受けた際に、マジックシールドが発動していた。コジローはうまく斬撃にあわせて飛び退いてみせたので気付かれていないかと思ったのだが、リヴはちゃんとマジックシールドの淡く光る小さな盾を見逃していなかった。
そうなると、話が変わってくる。
コジローは防御を捨て、相打ち覚悟で斬り込んでも勝てることになるのであるから・・・
試しに、コジローの体に軽く攻撃を加えて、マジックシールドが発動するのを見せてもらったリヴは
「それはズルい・・・」
と言った。。。
結局、二人は食事もそこそこに、裏庭に出てお互いの技を見せあい、想定通りの結果になるか試してみる事になるのだった。
コジローの転移斬にリヴロットがどこまで予知で対応できるのか、試してみるのは大変興味深い対決であった。
予知には勝てそうにないと思っていたコジローであったが、どうやら結論としては、最終的にコジローが勝つことになるようであった。
リヴロットが防御に徹している限りはリヴロットの予知が転移斬を防ぎきっているのだが、そこにカウンターを合わせようとすると、マジックシールドに阻まれてしまうのである。どうやら、マジックシールドが予知には現れないらしいのである。
コジローが防御を捨てて(マジックシールドに任せて)相打ちのような攻撃をとると、リヴロットは対応できない。
結局、マジックシールドが破れない限り、コジローに負けはないのである。
マジックシールド様様である。
リヴと技の確認・実験は、コジローにとっても楽しい体験であった。お互いに、手の内をバラし合う展開となってしまったのだが。本来、奥の手は隠しておいたほうがよいわけだが、そもそも、コジローがリヴと戦う機会もなさそうであるから、問題はないだろう。
だが、後にギルドマスターリエと一緒に、訓練のために模擬戦を繰り返す事になるのであるが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます