第5話 なんでも斬れる剣を貰った
魔法は、初級から順番に慣らしていかないと、いきなり高度な魔法は使えないようだ。
コジローは時空系の魔法を駆動するためにすべての才能を割り振ってしまったため、その他の魔法は───知識としてはすべて脳内に刻まれて入るのだが───うまく使えなかった。
試しに炎を出す魔法───火球(ファイアーボール)───を使ってみたが、小指の先ほどの火がでただけで、すぐ消えてしまった。しかも、それだけでも大量に魔力を消耗して大きな疲労感があった。
やがて魔力量が増え、制御も上達していけばそれらも使えるようになるだろうとの事だったが、先は長そうである。
ただし、時空魔法については、才能全振りしてしまっただけあって、かなり成長が早い。「加速」と「転移」については制約はあるものの最初から使えた。他に、重力魔法や亜空間制御など、さまざまな時空系魔法が使えるようである。上達していけば、それらの規模・効果も強力になっていくとのこと。
最後に、攻撃魔法を身に着けていないコジローのために、ゼフトが剣をくれた。
コジローがもらったのは短剣・・・これはゼフトの昔の研究成果だそうで「なんでも斬れる」剣だと言う。ゼフトの手作りなので、世界に一本しかない。
もちろん、材料さえあれば、ゼフトなら何本でも造れるし、材料も、短剣程度であればまだ何本か造れる程度の在庫をゼフトは持っている。
材料は、オリハルコンをベースに、ミスリルやその他の希少金属を微量に混ぜて作られており、その配合の割合は秘密だそうだ。
たとえ配合・製法が分かっても、この世界で一からそれらを揃えるのは、ほとんど不可能というくらいの希少な素材ばかりであるのだが・・・。
いわゆる「魔剣」=魔力を通して火や氷などの効果を付与したり魔法を発動したりする剣というのは多々あるが、この剣は少し違っていて、空間魔法を使用しているとの事。 「空間を断裂させる」事で物質を切断してしまうので、この世に斬れない物はない(次元を超えて存在できるモノでなければ)
次元断裂剣、略して次元剣(ディメンションソード)とでも名付けようか。
また、物質しか斬れないという弱点を補うために、ゼフトが得意な生命魔法(死霊術から進化発展させた魔法)も組み込んであり、アンデッドも斬れる(浄化できる)ようになっているとのことだった。
剣は、普段は短い「短剣」の形状であるが、魔力を込めると伸び縮みする。
ベースの刃の上に、魔力で刃を形成するので、刃こぼれして切れ味が落ちるということもない。
『使う時は伸び、収納時はコンパクトでよいじゃろ』
とゼフト。
剣の刀身は、伸び縮するだけでなく、持ち主のイメージに感応して形状も変えるようだ。刀身の長さ、太さも変わるし、柄もイメージ通りに伸縮する。
最初は、西洋の両刃の短剣のような形状であったのが、コジローが魔力を込めて起動したところ、片刃の日本刀のような形状に変化した。なるほど、コジローは日本の剣道のイメージが強いため、そのような形になったようである。
短かい状態に戻しても、片刃のままの形状が維持された。短剣ではなく短刀となったわけである。刀身に反りがある形状になってしまったら、鞘も作り直す必要があるのでは?と思ったが、鞘も勝手に刀身に合わせて形状を変化させていた。鞘もワンセットで造られているようである。そういえば、刀身を伸ばした時、柄も同時に伸びていたのを思い出した。
そもそも、鞘自体に空間魔法による収納力が付与されているため、どんな長さの剣であろうと収納することができるそうだ。そのため鞘自体はごく短くでも問題ないのだが、それだと「持ちにくい」ので、ある程度の長さにしてあるだけだそうであった。
この世界の剣は両刃のものが多いらしいが、両刃の剣は鞘に納刀するのが面倒だと聞いたことがあるので、片刃の形状を納刀するときにも維持してくれるのは便利だろうとコジローは思った。
コジローは、どこまで伸びるか試してみた。50cm程度、日本刀で言う 脇差 くらい。さらに長く、普通の日本刀の大刀の長さ(70cm程度)、さらに伸ばし続ければ、数メートル以上という異様に長い 長剣 にまでできた。
どんなに伸ばしても重さはほとんど感じない。
刀を鞘に入れようと思えば、縮んで元の黄金色の短剣に戻る。再び構え起動すると光と共に刀身が伸びる。コジローは、昔、地球で見たSF映画に登場した光の剣を思い出し、面白がって何度も刃を伸ばしたり、戻したりを繰り返した。
また、この剣はコジローに合わせて調整したので、他の人は使えないらしい。
ある意味希少な剣なので、盗まれないようにコジロー以外の者(許可がない者)が抜くと電撃が流れる魔法が組み込んであるとのこと。
他の人に触らせないよう注意したほうが良さそうだ。
とりあえず、今使える魔法と次元剣の 試運転 をしてみよ、とのことで、コジローは森の中に転移させられた。そこで、ゼフトがどこかからみつけて転送してきたゴブリンを、コジローは斬ってみる事となったのである。
* * * *
森の中でゴブリン十数匹に取り囲まれたコジローは、長剣にした次元剣で前にいる二匹を仕留めた。
ゴブリンは体も小さく持っている棍棒も短いものがほとんどである。また、動きが素速いというわけでもない。
何でも斬れる剣を長く伸ばし、遠間から攻撃すればコジローの攻撃が先に当たるので、苦戦する相手ではなかった。
とはいえ、多勢に無勢では危険である。
この世界でのコジローという名は、好きだった剣道マンガから取ったわけだが、コジロー自身は剣道の経験はない。ただの素人である。背後からの攻撃を、気配を察知してかわす等という芸当はできるわけもない。
だが、既に取り囲まれてしまっている状況である。背後のゴブリンはすぐにでも襲いかかってくるだろう。
とりあえず、「囲み」から脱出する必要がある。
コジローは「転移」を発動する。
コジローの姿が瞬時に消える。
そしてゴブリン達の背後に出現するコジロー。
背後のコジローに気付いていないゴブリンを何匹かまとめて斬り飛ばす。
ゴブリンの殲滅を開始するコジロー。その異様に長い剣が揮われるたび、2匹3匹とゴブリンがまとめて斬り飛ばされていく。切れ味が良すぎて強い抵抗も感じないので、草刈りでもしているかのようであった。
ゴブリン達の死角に瞬間移動を繰り返しては刈っていく作業を繰り返し、ゴブリンの殲滅はあっという間に終わった。
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