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 ミームが戻って来て馬鹿赤毛……改めダインは一転して正常に戻った。


「先ほどはすまなかった。思慮に欠けた行動だった」


 と、アンリシアに謝罪をしたのだ。


「国を挙げて歓待とはいかないが、礼は尽くさせてもらう」

「ありがとうございます。ですがもう一つお願いが」

「なんでも言ってくれ」

「こちらのレインを疫病の治療薬探しに協力させてもらいたいのですが」

「なに?」

「彼女はマウレフィト王国でも指折りの魔女です。わたし個人としては随一であると胸を張って主張できる実力者です。きっと疫病の問題に対しても有効な方法を見出だせることでしょう」

「こいつが……な」


 聖女と呼ばずにあえて魔女といったアンリシアが好き!


「帰国するためにもこちらも労力を惜しむつもりはありません。どうか。彼女が活躍できる場所を」

「む……」


 アンリシアの真摯なお願いにダインが唸る。

 彼女の美貌にやられてしまったか? 

 だめだぞ、彼女は私のだ。

 しかし、アンリシアの説得が功を奏してくれるとこっちも楽だなぁ。この第二部、最初は専用の工房をくれないからなぁ。第一部で装備とかちゃんとしてないと第二部序盤は苦労したりするんだよなぁ。

 そっちの心配は今回いらないけど、工房持てたらスポーンと特効薬作っちゃうよ。根治は無理だけどな! そこはイベントが絡んでるから。

 それともそっちもいますぐ解決しちゃう? しちゃう?


「申し出はありがたいのですが……」


 ダインが何かを言う前にミームが口を挟んできた。


「こちらの方を特別扱いすると、国境を越えて助力に来てくださっている他の聖女の方々から不満が出ます。協力していただけるのでしたら彼女たちと同じ状態からでなくては……」

「そうか。そうだな。聖女たちの作る解毒薬があるからこそ、民はなんとか暮らしていけている。彼女たちの不満を買うわけにはいかない」

「そうですか」


 アンリシアは大人しく自分の主張をひっこめた。


「とりあえず、今日はこちらで休みましょう。明日には王都へとご案内いたします」


 スペンサーが間に入ってこの場の話は終わった。

 砦での質素な食事を終えて部屋へと案内してもらう。砦だけにこちらも質素だ。

 アンリシアの願いで私たちは同じ部屋になった。


「ねぇ、わたしたち、あの聖女の方に嫌われているのかしら?」

「さあ? どうして?」

「こちらの申し出を断るとき、なんだか前のめりだった気がしたから」

「だとしたら、嫌われてるのは私じゃない?」

「うーん」

「あるいはあの赤毛王がアンリに落ちそうになってたから嫉妬したとか」

「やだ、やめて」


 あ、真顔で拒否った。

 嬉しいけどちょっとだけ哀れになったな、赤毛王。今度から名前で呼んであげよう。


「それにしても、第一聖女とはどういう立場なのかしら? 周りの反応からすると王と対等に話すことを許されているようにも見えたけれど」

「う~んとねぇ……」

「レイン、知っているの?」

「それはね。魔女にとってはこの国は興味の対象だから」


 誰だって虐げられるよりちやほやされたいからね。

 とはいえ疫病治療の最前線に立たされるのがセットだから実際に来るのをためらっている魔女はサンドラストリート内にも多かった。

 それでも来ている魔女は何人かいるんだけどね。


「第一聖女っていうのは名前の通り最初の聖女。疫病で苦しんでいたこの国に現れた一人目の魔女ってこと」

「一人目?」

「そう」

「魔女は、他にいなかったの?」

「みたいだね。なんでだか知らないけどこの国は魔女が一人もいなくなってたみたい」

「そう。……この国の魔女も苦労をしていたのね」


 魔女が一人もいない状況を想像し、彼女は何かの答えを得たようだった。


「……そういうのはともかく」

「そういうの!」

「どれだけ考えても変えようのない過去なんて考えるだけ無駄だよ。私たちは未来を見ていればいいのだ」

「レインは前を向き過ぎではないかしら?」

「アンリがいるかはちゃんと確認するから大丈夫」

「もう」


 この国の過去なんてろくでもないからね。アンリシアが気にする必要もない。

 そんなことより現在の注意点だ。


「あのミームっていうのが最初に頑張ったから魔女は聖女と呼ばれるようになって、国外の魔女も協力するようになった。発言力っていう意味では王様だって勝てないかもね。で、嫌われたらこの国では生きていけないかも」

「レイン、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「でも、レインって偉い人を見るとおちょくりたくなるでしょ?」

「無意味に偉そうな人を見ると、だよ。アンリのお父さんやお母さんに逆らったことはないよ」


 だってめっちゃ怖いもの。

 いや、ほんとに、あの人たちは怖いよ。敵に回したくはないよ。

 でも、いつかは「お嬢さんをください」と言わねばならないかもしれないわけだから覚悟を決めなければ。

 いつかは倒す。


「なら、ミームさんにはちょっかいを出さない?」

「それはわかんない」

「レイン」

「だって、アンリの提案を断るとか何様? って感じだし」

「あれは少しこちらも無理押しをしていた自覚はあるから仕方ないとは思うんだけど」

「でも、私の相談なしに言ったよね?」

「うっ……怒ってる?」

「そういうのじゃなくて、なんかアンリシアにしては意外だったなって」

「それは……」

「それは?」

「レインなら、本当にどうにかできそうだと思ったから」

「うん、それはアンリが正しい」

「やっぱり、レインならなんとかできるの?」

「いろいろと調べないといけないこともあるけどね。でも……どうしてそう思ったの?」

「うーん、信頼?」

「それには絶対に答えないと」


 もしかしたら何か感じたのかなと思った。

 本来なら死んでいるはずのアンリシアがここにいる。

 そのことをおかしいと感じたらどうしようかなと思ったけど、そういうことはなかったみたい。

 ちょっとほっとした。



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