第31話 シフィ姉ちゃんの深層思考の考察⑮
淡々と事実を話すラスレちゃんの言葉の真意を、少し時間を置いて理解した私は....。
ウッヒョ──!!なんですと──!!
思いっきり叫んだけど、私の口も声もない記憶を見るだけの世界なので、やっぱり私の声は、この世界の何処にも響かない。
でも、そんなことは、今はどうでもいい。そんな検証作業は、後でもできる。
王族様ってアレのことを指しているのかな??
何とかそこで止まって!!他のも出て来るなんて言わないで!!
「まさかっそんな......嫌っ...ありうるのか?──既に王族に囲われていても、決して可笑しくは無いが......ラスレ嬢、その話は嘘ではあるまいな?」
コスタおじちゃんは、かなりの動揺を見せて
もう、本当にどうして王族様が、この話し合いで登場しちゃうかな?
聞いてないんですけど....、やめてほしいんですけど.....嘘だと言ってほしいんですけど....やっぱ無理だよね。しょんぽり、へにょん。
当然、ラスレちゃんはエロチビデブ王族様の事を指して、説明したんだよね??
それなら、まだ安心できるんだけど....。
まだ、エロチビデブ王族様には囲われてもいないし、なんとか対処できてると思うし....。
私が驚き恐れてるのは、他の王族御一同も、裏でこそこそ動いていて、みんなそれぞれ好き勝手に
私が馬鹿だから、そう間違いて聞き取っただけだよね?
ラスレちゃん、王族御一同の裏の秘密工作を暴露しちゃわないよね??
う──ん、どっちだろう??
私の回答は、前者のエロチビデブ王族を指して説明しているに決めた!!
理由は、これ以上王族と関わり合いになりたくないからだよ。
正解は、どっちだろう。ハラハラ!ドキドキ!
「私は、嘘や出鱈目な事をお話してはいません。真実を踏まえて説明しているのです。貴族の力の論理を振りかざし、コスタドル様の意図とは外れて、製作者の敵対勢力になろうものなら、製作者の背後に控えている
ウッヒョ──!!
はぁ─どうやら私は、問題に不正解したみたい。シクシク.....
私は、王族達に目をつけられている事実を、こんな形で知らされたので、何だか急に家のベットが恋しくなり、ベットの毛布に包まり、現実逃避したくなった。
あーあ、今度、ラスレちゃんに直接聞いて問いただしてやるもん。
仲よし子よしなんだから、秘密の隠し事はやめてよね。
因みに私の秘密は、とてもみんなに話せる内容じゃないから、勘弁してっCHU♡!!
「確かに王族が背後にいるのなら、力の行使が愚策なのは、まさにその通りなのだが、何故それをもっと早く言わないのだ」
冷や汗を垂れ流しつつ、話をしているコスタおじちゃんは、先程までの高圧的な態度も多少和らぎ、多少話を聞きいれるように態度に変化していき、状態が正常化していくように映る。
「ええ、その疑問を抱かれるのも、もっともだと思います」
ラスレちゃんは、幸福絶頂の微笑を浮かべつつ、肯定の言葉を返してる。
肯定の言葉を話し終えると、グランさんに視線に映し超短時間の成分補給をして、再び視線を冷汗でビチョビチョのコスタおじちゃんに視線を戻し、会話を再開しようとしてる。
「──実を申しますと、普通に説明しただけでは、私が幼い事もあり、おそらく聞き届けてもらえないと思案していまして、こうして少し危険を伴う話しの進め方をしたのですが──コスタドル様に貴族の力の行使が、無意味だとご理解頂く為──他にも製作者の力の一旦を、少しでも理解して頂く為──そして、これは
コスタおじちゃんが、ラスレちゃんにコロコロ転がされてたみたい。
でも、転がすのも、難しそうだよ。
だって、コスタおじちゃんは、何しても怒りそうだもん。
そのコスタおじちゃんは、少し前の自分の振る舞いを
グランさんとセルディさんのダブルコンビも、コスタおじちゃんの態度の変化に、気が楽になったのか、2人でお互いを称えるように目線と頷きで合図をしあい、胸をなでおろすように肩の力を抜いた。
そして、2人のダブルコンビは同時に後ろを振り返り、片手をラスレちゃんの居る方角に向け、親指を突き立てる動作をして、ラスレちゃんを称える合図を送る。
ラスレちゃんも、
「そうして、ようやく、コスタドル様に次の話をお伝えできそうです。先ほどの交渉者とは、既にこの話も伝え終えていますが、決定権者は、男爵位を授かるコスタドル様にあります。先程の交渉者の話を、全くお聞きになっていないようですから、もう一度先程の交渉者に話した内容をお伝えします。ですので、よく耳を澄ませてお聞きください」
自分が部下の話しに聞く耳を持たない強情さを発揮したことで、幻獣の守護者の面々にもかなりの迷惑をかけていたと漸く気づき、今は話を止めるべきではないと判断したように見えるコスタおじちゃんは、ラスレちゃんの話しに何度も
そして、すっかり怒りを抑えた目線と仕草で、詳しく説明するように話を促していく。
「コスタドル様が何よりも欲している製作者は、既に──王族派閥──貴族中立派閥──貴族右翼派閥──貴族左翼派閥──平民派閥──神殿派閥──魔術派閥──錬金派閥──闇派閥などの多くの派閥が、
ラスレちゃんは、予言を告げる神巫女のように淡々と言葉を紡いでいく。
そんなラスレちゃんの淡々と紡ぐ言葉は、格調高い詩を朗読してるようで、その澄んだ透明な声が穏やかに空間に溶け込んでいく。
おっと、神巫女っていうのは、
ラスレちゃんの話し方も何となく神巫女を真似てるように感じるけど、幸福絶頂の天使の微笑と天使の眼差しを見せ、ありありと感情を表にだしてる点が違うね。
私なら、ラスレちゃんの語る声の澄んだ音の響きと、嬉しそうな表情を浮かべたラスレちゃんに軍配をあげちゃう。
そんなラスレちゃん大好きっ子の私だけど、ラスレちゃんのその言葉に含まれた内容に関しては、流石に何も言うことができない。
それくらい、私の心に深い衝撃が走り回り、脳内が大混乱してる。
今この世界に、私の口が無いから口を開くことができないけど、口を開けることができたら、きっと
私のお気楽さから引き起こす様々な異変や不思議現象は、どうやら様々な人達や派閥から、かなりの関心を持たれてたみたい。
そりゃ、オロおじちゃんが色々細かく注意してくるはずだよ。
今までも、私が全く気にしてないだけで、私の周りでは、かなり色々な事件や暗闘が起きてたのかもしれない。
私は、どうやらかなりの問題児と言うか、周囲にかなりの影響を及ぼしておきながら、そのことに全く気づかない平和ボケのアンポンタンだったようだ。
コスタおじちゃんも話しの
「私が知っているだけで、これだけの派閥の関係者が、常に製作者を注視し監視しています」
ここまで、明確に事情説明するラスレちゃんも当然その派閥の関係者なんだろう。
言葉尻から予想すると魔術派閥の関係者っぽいね。
あっちゃ─!!私は
んじゃ─多分、幻獣の守護者のみんなも、普通の一般人なんて有り得ないよね?
多分イエラちゃんは、神殿派閥の関係者だろう。
ギレン兄とセルディさんは何処の派閥だろう?
まさか、1年前にエディお父さんと再婚して、新しいお母さんになったクリスお母さんも何処かの派閥の回し者なんて、言わないよね?
「勿論、私の知らない派閥が製作者を監視していても、今の状況から考えると全く不思議ではありません」
私が馬鹿な行為をし続けたばかりに、エディお父さんとオロおじちゃんに色々迷惑かけてたんだろうな。
なんで、もっと明確に注意してくれないのよ──。
そんなことを考えても後の祭りだよね。
でも、こんな状況をどう収拾すればいいのか、わかんないよ。シクシク
「つまり、コスタドル様がその製作者を囲い込む、もしくは、敵対者になると、全ての勢力から敵対勢力と見なされる可能性がかなり高くなるか、そうでなければ、それらのいずれかの勢力に取り込まれ、その泥沼から這い出ることが出来なくなる可能性があります」
うわ──私ってば、ほぼ爆心地の中心に位置してるように聞こえるんですけど....。
次の2つ名は、『爆心少女アヴィ』でどうかな?いけてない??
う──シクシク。悲しいよ。
泣きたいけど、このシフィ姉ちゃんの記憶再生してる精神世界じゃ泣けないよ。
コスタおじちゃんを丸め込む為に言ってる嘘だと言ってほしいよ。
コスタおじちゃんは、グランさんに目線と仕草で、本当のことか確認してるようだけど、グランさんも前に聞いて、今の話を聞くのは多分2度目だろうけど、余りの話しの大きさに、まだちょっと信じきれていないみたいな表情をしていた。
でも、そこはコスタおじちゃんと違い理性的なグランさんは、最後まで話をしっかり聞くように、コスタおじちゃんに視線と仕草で
「そうした状況の中で、コスタドル様が下手に製作者にちょっかいを掛けると、派閥の討伐対象になり領土ごと叩き潰される可能性も出て来るのではないでしょうか」
ラスレちゃんの口から、その言葉が飛び出すと、コスタおじちゃんがブルっと震え挙動不信な振る舞いを一瞬みせるが、直ぐに貴族の仮面を装着して、怖そうな自分を演出する
私はこの話を聞いてから、本当に家に帰りたくなったけど、今も私の魔法が生み出した擬似人格が、私の身体を動かして、新たな伝説発生現場に向かっていると考えるだけで、物凄く
ラスレちゃんの話す言葉が本当なら、みんな手ぐすね引いて、私を待ち構えてる筈だよね。
そんな私の心を全く理解してない、記憶映像の中のラスレちゃんは、更に澄んだ透明な声で格調高い詩を朗読するように、すぐそこにいる少ない観衆に話を聞かせていた。
「もっとわかりやすく説明しますと、コスタドル様が参加なさりたい製作者獲得レースは既にかなり前から、もう始まっているのです。コスタドル様は、その製作者レースが開始しているのを、誰からも知らされることも無かったでしょうし、見聞きをする事も無かったでしょうが、その製作者獲得レースに今から参加し、優勝を狙おうとしているのが、今現時点での、私からの状況説明になります」
ここまで、大きな内容を含んだ話しだと、そりゃ──普通に説明しても、信じて貰えないよね。
グランさんも話をしっかり聞いてるけど、貴族の見た目を取り繕う仮面をつけてるからよくわからないけど、感情が全く表情や態度に出ていないから、逆にある程度嘘が含まれてると疑いの眼で見ているんじゃないかと、私はそう睨んでるけど、どうだろう?
私もある程度嘘が含まれてると信じたいけど、何せ当事者なものですから、今まで自分が犯してきた数々の過去の体験を振り返ると、ラスレちゃんの言う内容がいちいち真実を語るように思えてならない。
失敗したよ。御免こさん。
もっと自重しとけば良かったよ。
女神達との女子会でマリティカ様が話していた....。
『このままメグフェリーゼ様の助けがなければ、いずれとんでもない事態が生じかねません』
の言葉は、この内容も多いに含まれてたんだろうな。
物事を何でも安易に考える馬鹿で御免っCHU♡!!
「この例えでご理解いただける様に噛み砕いて、率直にご説明しましたが、コスタドル様──ご理解いただけましたしょうか?」
話を終えたラスレちゃんは、幸福絶頂の天使の微笑をコスタおじちゃんに披露して、おじちゃんの顔色の反応をみていた。
「まさか、そこまで規模が大きいとは、考えもしなかったが、あのような奇天烈な魔道具をいとも簡単に造る御人だ。様々な勢力が欲しがるのは、無理のない事だ。そして、私の望みは、また潰えてしまったということか」
何故、必要に自分の要望を
私と同じくしょんぼり、へにょんとしていて、またまたコスタおじちゃんとお仲間になってしまう。
私としては、とても心外だけど、お仲間はお仲間だ。
私には、コスタおじちゃんの落ち込み具合もわかる。
だから、その点に関しては、今後考慮しよう。そうしよう。
「ほー、良かったです。漸く提案の意図に気づいてもらえて、肩の荷が少し軽くなりました」
見事コスタおじちゃんを凹ませたラスレちゃんは、話し終えると両手をパンと一回勢いよく叩き、祈りを捧げる姿勢になり、年相応の可愛らしい素の笑顔が溢れた。
「何が良かっただ。その発言は聞き捨てならんな」
ラスレちゃんの言葉に敏感に反応した純粋な脳筋種のコスタおじちゃんは、途端に顔を茹で上げた。
でも、先程までのお芝居を見てきた私には、これもどうせお芝居だと直ぐに見抜いた。
このまま、ラスレちゃんが勝ちすぎるとコスタおじちゃんが根に持ちそうだから、ここでラスレちゃんがあやまるようにシナリオが出来てるんでしょ。
「私は、多くの民衆の命を預かっているのだぞ」
1度外した蛸鬼怪獣の仮面を再び装着しようとするコスタおじちゃん。
貴族社会では、「男を立てるのが当たり前の世界だからいつも大変よ」ってラスレちゃん本人から、教えてもらったから、多分それに沿った様式美なんでしょ。
「その発言は、直ぐに取り消して謝罪してくれないかね」
その発言を終えると、真紅の蛸足触手みたいな気の奔流を体内から一斉に吹き出した。
は──こんな世界で生きなきゃならないラスレちゃんは、今の自分に満足できてるのかな?
「──これは、失礼しました。発言を撤回して謝罪いたします」
直ぐに自分がやらかした偽りの失敗を挽回する為に、ラスレちゃんは直ぐに貴族の仮面を装着し、貴族の女性がよく人前でみせるスカートの
「君が私に言わんとする助言が、朧げながらも見えてきた。そして、君にはその内情を私に伝える為に色々骨を折り、苦労を掛けたのかもしれんな。ラスレシア嬢、その君に免じて、今回の謝罪は、素直に受け入れよう」
その謝罪を見届けたコスタおじちゃんは、直ぐに全ての怒りの仮面を脱ぎ捨てて、真面目な表情に徐々に戻り、ラスレちゃんの謝罪を受け入れた。
「ありがとうございます。コスタドル様」
ラスレちゃんは、もう一度直前にした深謝を示す動作を繰り返し、コスタおじちゃんに礼を述べた。
2人共、お芝居ご苦労様でした。
見せられるほうは、白けちゃったよ。
「──そうしてだな、君とのこれまでのいがみ合いも、そろそろやめにして、もう少し健全な関係にならないかね?」
コスタおじちゃんは、漸くラスレちゃんを自分の交渉相手と認め、これから関係改善を図ろうとしてるようだ。
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