第7話 お風呂で満喫?②

 そんな、サラの話を聞いた私は、驚愕の表情を浮かべたように、戸惑い驚いてしまう。


 だって、サラの背後に何故か透けて、幻覚として現れたオロ叔父ちゃんが見えるんだけど....。


 ──どういうこと?私の眼がおかしくなったのかな?


 いいや、おかしくなってなどいない──。


 この状態は、アヴィの両眼が特殊な状態に汚染されていて、サラに染み付いたオロ叔父ちゃんの残留思念が見えているだけの現象であるのだが、アヴィ本人はその事実を全く気づいていないだけであった。


 その幻影のオロ叔父ちゃんは、お風呂に一緒に浸かり、彼女を見守りセコンドにたち作戦を授けたり、汗を拭いたり、傷の手当てをしようと忙しそうに今も動いて見えている。


 ──オロ叔父ちゃん、私を見捨てたの?


 ──オロ叔父ちゃん、私が可愛くないの?


 私をサラと同じ未知みちに進ませようと画策してるなら....。


 お願いだから、止めてちょうだい!!


 考え直して、助けてよー!!


 私は必死に念じて考えを改めるように、サラの背後に、幻影として映るオロおじちゃんを、凝視するように睨みつけてしまう。


 そんなサラは、お風呂に浸かっている自分の裸体姿に、私の強烈な視線が、矢のように自分を突き刺してると勘違いしたようで、その勘違いにより、高揚感が高まったみたいに、アヘアヘの表情をしている。


 彼女は、たまらない嗜虐心しぎゃくしんと興奮を浮かべたような表情を全く隠す気がないみたい。


 しかも、体の下の方から微熱がどんどん火照ってきてるみたいに、プルプルとした震えが、下腹部から身体全体へと伝わっていって、気持ち悪い魔物のように細かく震えてるから、尚更気持ち悪く見える。


 私の視線を一心に浴びていると勘違いをしたサラは、お風呂の中でイカみたいに、グニャグニャナヨナヨしだして、更に気持ち悪さに磨きがかかる。


 そして、軟体動物のような危ない状態のまま、次の言葉をロリったお口から吐き出す。


「だからー、今も──」


「お師匠様を、後ろから襲われないように──」


「監視してたんです──」


 ちっが─────う。サラが私を襲おうと監視してるんでしょ。


 それはもう全然根本的に考え方が間違っていると反論したい私は、目を固く瞑り顔をしかめ首を大きく左右に振るなどの仕草を行動で示した。


 サラに自分の間違いに気づかせようと、それはもう必死に表現してやった。


 あれっ....この立ち振る舞いって、淑女しゅくじょとして駄目っぽくない?


 混乱してて、いつもの立ち位置が崩れちゃったよ。


 危ない、危ない。駄目よ、駄目よ。


 私は、淑女で純粋で可憐な乙女なんだから、その立ち位置を崩さないようにしなきゃ。


 よーし、──淑女しゅくじょたしなみをついか──そお──びっ。


 ガチャン…ガっチンコ、チン!!


 SPスーパーアヴィちゃん....降臨!!


 ....シュピーン!!(降臨音)ドォーン!!ガラガラッ(雷の音)


 決まったか──。私は頭の中で変身ポーズを決めた。


 そして、新たに分厚い猫の上に、更にもう1枚淑女の嗜みを追加装備した。


 淑女の仮面で覆われた私は、作りこんだ笑顔で微笑んだまま、内心を顔や態度に現わさないよう注意を払う。


 ここがお風呂場だから、もう仕様が無い。


 私は何も身を隠す衣服を纏うものが側に無いので、寧ろ開き直ることにした。


 まずは、お風呂用の椅子バスチェアーに座ったまま、背筋をピンと伸ばす。


 次に流石に乙女の秘所部のご開帳を、ベロリのサラに晒し続けるのは危険と判断。


 お風呂用の椅子バスチェアーに座ったまま足を斜めに流すようにして正面からの姿がS字に描くような女性らしい座り方の姿勢をとる。


 次に右手を左手で包み込むような仕草をして、秘所部を見せないように両太ももの中心部に両手を添えるように置いて姿勢を正し、今できる最高のポージングをサラに披露したよ。


 そんな私の心の中では、私はやれば出来る子なんだからーふふんと木霊こだましてた。


 勿論お風呂場だから素っ裸で、お互い全て何も包み隠さずに、ぺったんこも曝け出してるけど、今はそれで行くっきゃない。


 仕様がないし、仕方がないから諦めよう。


 どうせ、ぺったんこの女の子同志、怖がるもんは、何もないさ。


 2人共、つるつるでしこしこだから大丈夫。


 なんなら、2人でぺったんぺったんお餅をついてもいいかもね。


 私が姿勢を正すと、サラも温泉から上がり、私に向かい合うようにバスチェアーに座り、私の話す言葉を真剣に聞く態勢を整えて、真面目な姿勢をみせようとしているように、私の瞳には映りこんだ。


 だけど、サラのアヘアヘ顔のままだし、満開の秘所部を敢えて私に見せつけるように、大解放の女の子座りを披露してるんだけど....。


 今し方の考察は、やっぱり私の記憶の間違いだったよ。


 訂正してお詫びします。ゴメンこさんで、ぺこりんこ。


 そして、そのサラの全裸の映像が、私の脳裏に記憶されてしまう。


 いつもの雰囲気とは、すこ──しだけサラが違うような気がしたけど関係無いよ。


 仕方が無いし、仕様が無いし、もう遅いから諦めて!!


 勝負の世界はとても、と──っても厳しいから、許してちょうだい。


 ごめんね、サラ。


「サラ、貴女あなたは弟子でも親友でもない」


「ただの顔見知りよ」


「そんな貴女がどう私を満足させるような、護衛役を果たすのかしら」


 サラにこれ以上私に近くに来て欲しくないが為に、私はちょっときつい物言いをしてしまった。


 ちょっときついけど仕様がないよ。お願いだからこれで引いてくれないかな?


 いくらなんでも、ここまで言われたら、さすがのサラでもわかるでしょ。


 何気なく思いついた言葉を参考に組み立てたこの理論武装攻撃。


 サラの心に命中してー。サラの心を破壊して!!


 私の心が少しでもいいから、サラに伝わって!!


 当たってー。どうだー。やったかー。


「サラのお父さんはー」


「今のサラならー」


「護衛役を充分やれると太鼓判をもらえたのですー」


 駄目でしたー。全く効いてましぇ~ん。


 へっぽこで、すいましぇ~ん。


 ──んーん。なんでオロ叔父ちゃんが出てくんの。


 子供の喧嘩に、大人が口出してくるのは反則じゃない。


 私の意思は、どうでも言い訳。ふんだっ


 それにしても、どうやらオロ叔父ちゃんは、サラの作りこめれたロリブリに完全に籠絡ろうらくされたようね。


 いいでしょう。あぁ、いいでしょう。


 こうなったら2人まとめて、けちょんけちょんにして、サラがごめんこさんをして、泣いて謝るまで相手になるよ。


 さぁーかかってきなさい。


「そしてお父さんはお師匠様にこれを渡せばー」


「絶対に護衛官にしてもらえると言ってたですー」


 そういうとサラは、頭の上にチョコンと畳まれたタオルの間にはさんであった、ある物を取り出し私に見せようとしだした。


 オロ叔父ちゃんも、やっぱり我が子が可愛いくて、仕方が無いようね。


 それはいいとして、んーあれは何だろ。何か危険な臭いがするような。


「それは、一体何なのですか?」


「どのようなお品なのか、もっと良く見せてくださる」


「あとね、サラ....出来ればもう少し、わかりやすく説明してもらえないかしら」


 私はSPスーパーアヴィちゃん降臨バージョン話し方でサラに尋ねてみた。


 よく見かける魔道具だよ。──なんだったろう?


 私の家には置いてないから、忘れちゃったよ。


「この魔導機器はー、録音再生機器ですー」

「平錬協会印のー、最新作ロックン3世ですー」


 魔導録音再生機器「ロックン3世」を私に見せつけるように、サラは右手に掲げて見せ、ロリブリを思う存分発揮しながら、またわざと語尾を伸ばした言葉遣いで、彼女は説明しだした。


 あ──もしかして──凄い嫌な予感が........。


「この録音機にはー」


「昨夜のお師匠様の全ての音声がー」


「録音されているですー」


「なんですって────」


 サラの説明の声をさえぎるように、私の雄叫びが飛び出し追い抜いていく。


 SPスーパーアヴィちゃんがこの言葉を聞いて...


 『──もう無理ぽっ!』


 『──逃げるっぽ!』


 そう、私に最後の言葉を言い残して、簡単に崩れ、私を残してかき消す様にきえちゃった。


 ..ヘロ.ヘロ.ヘロ..フワン..(SPスーパーアヴィちゃん消滅音)....


 それにより、分厚い猫・淑女の嗜みが崩壊して、心のお化粧ががれ落ちてしまう。


 だけど今はそんなことより、どんな言葉を夢世界で叫んだのか、記憶の片隅を家探ししてて、私の頭の中は大忙し。


 あーやっぱり昨日の寝言、全て録音されてたのか──。


 自分の部屋だから、問題無いと思った私が馬鹿だった。


 はー。さぁここで問題です。私は一体どんな寝言を叫んだでしょうか?


 クッソ──油断した──我が家は、そういう家だった。


 私のいるエルベリア王国には、錬金術師の派閥が、大きく分けて3つ存在していて、お互い結構しんどそうな状況の中、3者の間で常日頃から牽制けんせいしあっているらしい。


 私や家族が所属している平民錬金術師協会、通称平錬協会、又は平錬。


 国家特別試験を合格した国家認定錬金術師協会、通称国錬協会、又は国錬。


 国王が個人で所有している王宮錬金術師団、通称王錬師団、又は王錬。


 この3つの派閥はスパイや裏の住人等が影で血なまぐさい争いをして、お互いの知識や技術を奪い合い為に、泥仕合よりもより悲惨ひさん凄惨せいさんな、そして背筋が凍るつくような暗闘を、常に繰り広げているんだって。


 その上、ほかの国も混ざり合って、裏では身の毛もよだつ行為を、平気に笑顔でおこなうのがこの世界の常識だってオロ叔父ちゃんから教えてもらった。


 エルベリア大国では、10歳になると全ての地域にある王国神殿が、所持スキルを無料で鑑定して内容を分かりやすく教えてくれるんだよ。


 でもね、その鑑定を何も考えずにへらへら受けてしまうと、王国が裏で糸を引いているから、仮にちょっと珍しいレアスキルが出てしまうだけで、王国に強制的に召し上げられることが、本当にざらに良くあることらしい。


 レアスキルが出たを大喜びして抱き合う者達や、何も知らされない労働階級の平民達は、王国貴族の血の力を向上させる為の実験材料として、骨までしゃぶられるような扱いをうけると教えられたんだけど。


 私は平民錬金術師協会に保護された立場だから、王国神殿の無料鑑定なんて、平錬から絶対受けさしてもらえない。


 仮に受けてもいいと言われても、あんな事を教えられた後では、もう受ける気にもならない。


 レアスキルでさえそうなのだから、私の希少価値だとどうなると思う?


 オロ叔父ちゃんは、多分周囲の背景も全く気づかないし、考慮しないで気を配らない駄目駄目な私に、もっと気を配って、家にいる時間でさえも、最新の注意で状況を見定め自分をいましめていけと、暗に私に伝えたいのかもしれないね。


 それは、ちゃんと理解したし重々承知しましたー。


 もう正直、私の負けで全然まったく構いません。


 白旗も上げろというなら、上げちゃうし、土下座しろと言うなら平気でしちゃうよ。


 ──だから..お願いだから.........


「それをすぐに、私に返してちょうだい!!」


 もう、なりふり構わず、直球勝負でいくでありんす。


 私はもうさSPスーパーアヴィちゃんが消滅したからさ、素直に自分の口調さで話しべしてお願いするべ。


 ──あれ、なんか言葉は変なりけり。んーん?


 ──SPスーパーアヴィちゃん消滅BAD効果(低)発動中でしゅ。


 まぁ、仕様がないっちゃ、今回は自分から消滅したから、すぐになおりんぴょん。


 もー、SPスーパーアヴィちゃんめー。私を置いて勝手に消えおってー。


 成敗してくれる。そこになおりんちょ。


 ちょっとー運営さーん。しっかり対処してよー。あっ治った。良かったー。


 ふー焦った、焦った。


 はーSPスーパーアヴィちゃん弱すぎー。


 もっと強くなるように訓練しよう。そうしよう。


 取り敢えず、私の主張はサラには、伝わったはず。


 その『ロックン3世』には、私だけが知る秘密が色々録音されてるかも知れないから、お願いしてでも全部聞かせてもらおう。


 そんで、私が確実に証拠処分するから、お願いだから大人しく渡してちょうだい。


「わかりましたですー渡すですー」


 サラはロリ笑顔を満開に咲かして、私にロックン3世をそっと手渡してくれた。


 私のお手手を薄らとサラの指でなぞり撫でていくのが、サラ流の手渡し方だ。


 普段なら身震いするのだが、今はそんなの関係ーないねー。


 ウーゥーイヤッフォ──!!


 おーここに天使が舞い降りてきた───。


 ロリぶりを発揮した沢山のサラ天使が私の頭上をロリロリ舞い踊っている───。


 本当に最高のロリ具合ね。親友になっても距離をとりたくなるほどのロリ具合よ。


「サラ、ありがとう」


「私サラのこと本当に見直した」


「いままで、ごめんなさい」


 私はサラに、自分の心の内を曝け出すように素直に謝った。


 ロリ笑顔を満開に咲かして、顔を左右に軽く振り、楽しそうに私の謝る姿を見ているサラ。


 私は、サラが私と仲直りしたいから、素直に渡してくれたと、そう安易に考えて安堵した。


 もう、このロックン3世を2人の仲直りの道具にするわけね。


 どうやって深夜わたしの部屋に忍び込んだのかは、わからないけど、そうしければいけないほど、サラも追い詰められてたってことよね。


 こんなに手の込んだやり方しなくても、普通にちゃんと謝ってくれれば、その後の条件しだいでは、ちゃんと仲直りできたのに、やり方が姑息よね。


 ──どうせ、オロ叔父ちゃんの入れ知恵でしょ。


 だが、そんな子供が思い描いた自由奔放な絵画のように映ったアヴィの都合の良い考えは、その直後に簡単に粉々に破られてしまう。


 ──ロリ笑顔を浮かべたサラの口から話されたお言葉によって。


 そのサラは、アヴィの心に冷水を浴びせかける言葉を言い放ってしまう。


「いえいえー、お師匠様ー」


「それー、何個も複製してあるのでー」


「いくらでもー差し上げるですー」


「お父さんから、そう伝えろとー」


「言われたですー」


 それは、オロ叔父ちゃんからの伝言だった。


 その言葉を聞いたアヴィは、氷のような冷めた素の表情になった。

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