第5話 無事生還
ド──ン!!バッタ─ン!!
現実世界では、ベッドで倒れこむようにして寝ていた私なんだけど....。
寝ぼけちゃって、夢世界と同じ行動をとるように、緊急退避してしまって、見事ベッドから転げ落ちちゃった。
「いった──い」
床に頭から落ちてしまって、絨毯も敷いていない硬い床面に頭をぶつけちゃう。
頭がじんじん痛いよ。きっとたんこぶ出来るよ。
私は、ぶつけた頭の箇所を右手で撫でながら、その場から起き上がった。
ベッドをみたら、やっぱり巨大な世界地図が完成してた。
「今までで、1番の超大作だ。──テヘヘのイタタで、痛いっCHU♡!!」
私の着ている錬金作業衣装は、ネチョネチョとしてお肌に粘着していて、しかも超甘い匂いが吸着したかのように濃い臭気を放っている。
「超いった──、たたた」
「いった─いよ──」
「もう、最低最悪の気分だよ」
頭のぶつけた場所を、両手で押さえつけながら、私は自分の工房研究室兼寝室を、きょろきょろしながら見渡した。
よし、水晶フラスコや水晶錬金釜の中に入っている火薬魔導液体も溢れてない。
──無事だった。良かったー。ホッとしたよ。
昨日は、魔導爆発物の研究してたら、急に眠気が襲ってきて、もう無理だとベッドに倒れ込んだところまでは、覚えてるんだ。
でも、そのままベッドに倒れ込んだから、実験の後始末できなかったんだ。
それにしても....。
「なんで、床に思いっきり、ジャンピングヘッドをかましちゃうのよ」
「そんでもって、なんで、頭から落ちてくのよ」
「スライディングしたら、普通足からいくもんでしょ」
──もしかして、前世の
弱っ、神罰弱っ、でも私に喧嘩を売ってきた。
あーいいでしょー、正面から正々堂々と受けて立ってやる。
「糞女神め──いいでしょう」
「
「
..ガラガラ......
そう私が呟くとほぼ同時に、工房の隅に置いてあった火薬剤が、一斉に崩れだした。
「えっうそ──」
......ガチャン.....
火薬剤の近くの壁にかかっている魔導ランプが、何故か落ちて割れてしまう。
「そんな──馬鹿な──」
..ボトボト....シュー.....
魔導ランプの燃料が漏れ出し、火薬剤に合わさって、魔導科学反応を起こして....。
「ちょっとまって、それはやめて──」
..(((ボ──ン)))
部屋の中で衝撃波を伴って爆発した。
室内が爆発が発生した離れの建物は、私が精魂込めて完成させた魔法陣を焼き込んだ魔導レンガで覆われ、私の取って置きの能力を惜しみなく注ぎ込み作られた、自慢の魔導建築構造物だから、
爆発如きではレンガに傷一つつけることは、叶わないんだけど....。
私は、とっさに【水障壁】の魔法を無演唱で展開した。
爆発は、【水障壁】で見事にガード。
役目を終えて【水障壁】は掻き消える。
だが、爆発は1つでは収まらなかった。
((ドカ─ン))((ボ──ン))
((ド──ン))((ボカーン))
((バ──ン))((ボ──ン))
爆発によって次々に部屋中で火薬が誘爆し何回も爆発が起こる。
私は、とっさに【水晶球】の魔法を無演唱で展開した。
【水晶球】は演唱者の周囲、全ての方向に水晶の鏡壁を作る魔法だ。
【水晶球】の魔法は、すぐに効果を発揮され私を爆発の火傷から、身を守ってくれたけど、衝撃波を全て吸収してはくれなかった。
【水晶球】の魔法の効果が切れないように、私は必死に魔力を注ぎ込んでいく。
【水晶球】の魔法に覆われたまま私は、衝撃波の威力に身を任せボールのように、室内を何度もバウンドするように吹き飛ばされ、何度も壁際に叩きつけられることになった。
魔法によって出現している水晶球体は、私の周囲に展開されてるから、水晶球体自体に接触は無いけど、【水晶球】の魔法で展開された中心に位置する私にも、震動の衝撃がある程度伝わってしまう。
錬金術の耐衝撃・耐火・耐爆発効果が完全に発揮されている壁面に、水晶球が叩きつけらてる度に、私はエロエロ女神には、負けてやるものかと気合いを入れ、声を荒げるように叫び、女神を挑発してやった。
「このヒステリ─女神、グホッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「エロエロ女神──イタッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「クチュクチュ女神──ギャー」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「ビチョビチョ女神──ダギャッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「大洪水女神──ゲェッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「チョロチョロ女神──フギャッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「幼児虐待女神──グギャッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「変な水が滴る女神──ウホッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「絶対、彼氏に言いつけてグッハ──」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「女神だったら、もっと慈愛を持て──グフッ」
もう火薬の誘爆は収まったが、私を包み込んでいる水晶球体は、そのまま中を飛び跳ねている。
そして、水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「さっきまでのは、冗談だから──ボフッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「ほんとに嘘だから──オエッ」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「もう、やめて──降参──うきゃ──」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「うきゅ~」
水晶球体がまた、壁面にぶつかり違う方向に飛び立った。
「もう、無理ぽっ....(ガクッ)」
アヴィが気を失うと水晶球体が、霞の如く薄らとなり、すぐに立ち消えた。
このままだと壁面に接触するにも関わらず、気を失ったアヴィは意識を取り戻すことなく、そのまま壁面に向かって、吹っ飛んでいくように突きすすんでいく。
そして、壁面に衝突するあわや寸前で、アヴィの周囲を、ほぼ一瞬にして、神水の球体が覆い尽くす。
その神水の球体に覆われたアヴィは、壁面に勢いよく衝突するも、すべての衝撃を神水球が吸収し、壁面下の床に彼女を、ゆっくりと横たえるように下ろしていく。
室内は足の踏み馬が全くないほど、凄惨な光景が広がっていた。
すると、彼女の周りに覆われている神水球が、7色の光を放ちながら、次第に霧状に変化して室内に漂っていき、やがて室内を飽和するまで充満し、室内が全て純白に包まれることになる。
しばらくすると、神水の霧は霞みがかったように立ち消え、水滴も粒一つ残さずに、全ての痕跡を何一つ残さず消えていた。
霧の晴れた室内は、時間が巻き戻るかのように、ある場所を除いて全てが元通りの状態になっていた。
ドン.ドン.ドン.ドン.ドン...ドン..
少し時間が経つと、上の方から扉を激しく叩く音が聴こえる。
「アヴィ、早く起きて用意しないと、学校に遅れるよ」
...キ─...バタン..コツ..コツ..コツ...コツ..
その声と一緒に扉の開く音が聞こえ、その後階段を下る足音が微かに響く。
どうやら、この工房は離れの建物の地下にあるようだ。
ドン.ドン.ドン.ドン.ドン...ドン..
今度はお部屋に通じる扉が激しく叩く音が鳴り響く。
「もう、アヴィの友達のサラちゃん、本宅の居間で待ってもらってるから」
「早く用意しなさい」
扉の外から若くて女性の高い声が聞こえてくる。
この声は我が家の口やかましい長女のラステリア姉さんの声だ。
「うっ...うぅ...」
私はラス姉さんの声でようやく気がつくことができた。
体中に走っていた痛みもスッキリ取れて、なんだか体が蘇ったような気がした。
「覚えてろ。エロエロ女神」
宿敵の女神を罵りながら私は、ゆっくりとその場から、起き上がった。
...キ─...バタン...
「もう、早く用意しなさい。いつまで寝てるの。扉開けるわよ」
...ガチャッガチャッ.....
その声が扉の外から聞こえると、扉を回す音がなりだす。
.ガチャッ..キ─...バタン...
扉が開けられ、ラス姉さんが部屋に入ってる。
ラステリア姉さんは、私とは全く違う顔立ちをしているよ。
金色の肩までかかる髪に青みがかった瞳、私とは似てもにつかない綺麗な顔立ちをしていて、有名劇団の女優さんみたいな華やかさに思わず見とれてしまいそう。
身長も高くてモデル体型のような、誰もが見とれる均整のとれた躰つきをしてるから、私が男性なら、絶対口説いてるくらいの美人さんだよ。
「うー、臭いわ。何この匂い。アヴィ、またやったわね」
「アヴィ、貴女の匂いは、普通じゃないんだから程々にしなさい」
そのラス姉さんは部屋に入ってくるなり、手を額にそえて呆れ果てて、首を左右に大きく振る。
「10歳になったからって、そんなになるまで夜に励まないように、何度言ったらわかるのよ」
ラス姉さんの視線は私とベッドを何度も往復し、甘ったるい匂いに思わず鼻を摘んでしまう。
あんのエロエロ女神ー。部屋だけ直して、私とベッドだけ放置して、敢えてそのままにしたのね。
「この淫乱娘!!さっさとお風呂入って来なさい」
くそ─、淫乱はあのエロエロ女神よ──。
あいつが私の体に居座っているから、こうなるだけよ。
私は心も体も健全な10歳のキャピキャピな女の子よ。まだエロエロじゃないから。
「そのベッドも、自分でちゃんとお外に干してから学校行きなさい」
「私は絶対に手伝わないから、ちゃんと干してから学校にいくのよ」
ラス姉さんは、
「もう....どんだけ頑張れば、そんなベッドになるのよ」
ラス姉さんも、エロエロ女神の魅惑の匂いを嗅いだら、すぐにそうなれるよ。
今度ラス姉さん専用の香水を錬金創造で作るときには、絶対に女神秘蔵のエロエロ成分も一緒にいれてあげるね。
ラス姉ちゃんも一度、私の苦しみをとことん味わうがいいよ。
「アヴィ、凄く強烈な匂いだから、絶対にお風呂に入ってから学校にいくのよ」
くそ─、この匂いつくと、中々取れなくて、男性陣がみんな変な目つきになるのよ。
あれは野獣の目よ。私いつか、美味しく召し上がられちゃうのね。
ちゃんとラッピングするから、それまで待って欲しいって言ったら、上手に説得できるかな。
それより、女性陣からも嫌な目つきで見られるようになるから、対策考えなきゃだよ。
前に女性陣に話した言い訳でこの前は何とかなったけど、それからは殆ど全ての女性陣達の見つめる目つきも、野獣に目になっちゃったんだよ。
ほんとにどうしよう。もう最悪だよ。おのれ、エロエロ女神め──。
「もう、サラちゃんには、先に学校行ってもらうから」
私も反論したいけど、それをすると、私が作成した魔導機関銃のように、もっと、激しく長時間喋りだすので、今は首を縦に機械的に動かして、なんとかラス姉さんの襲撃が早く終わるように、心の中で必死に祈り続けていた。
これが、アヴィの何時もと変わらない日常の一幕なのだが、今日という日を振り返ると、きっとアヴィにとって忘れられない日になるであろう。
だが、今のアヴィには、そんな事になるとは全く思いも寄らずに、ただ無意味な日常を過ごしていた。
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