02 一時の自由



 それでも、比較的マシな時間はあったんだ。

 僕の勉強の教師としてやってきた人が、以前よりもマシな日々を与えてくれた。


 その人が、ときどき人の目を盗んで外出させてくれたから。


 こっそり城を抜け出して、市民たちが歩くのと同じ道に靴をつけた。

 初めて歩いた時は、感動したな。


 あれだけ憎らしかった者達なのに、一緒の道を歩いてみると、急激に殺意が薄れていったのがおかしかった。


 僕は、その人がやってくる日は何度も城を抜け出して、様々なところにいった。


 楽しかった。

 それは、そう遠くない日にとりあげられてしまうのものだったけど、それでも僕にとってはかけがえのない宝物だった。


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