16 夕暮れ会話



 がれきが散乱した町に夕暮れ時が訪れる。

 寂寥感たっぷりすぎて、むなしくなってくるぜ。


「壊滅」なんてタイトルつけて絵を書きゃ、ぴったりなんじゃねーか?

 なんて。

 さすがに、盗賊のあたしでも笑えない軽口だな。


 そんな町を何となく眺めていると、クランがやってきた。


「一緒に歩こう」だってさ。

 仕事しろよ。


 お前が王子サマっぽい仕事してるの、城塞都市でしか見た事ねーぞ。


 そういったら、あたしとじっくり話がしたかったとかなんとか。


 盗賊なんかと話がしたいなんて、ほんと物好きなやつだよなぁ。


 今回もクランは、あたしの事を信じて頼み事をしたらしい。


 自分は王族だから、自由に世界を飛び回れないけど、あたしに大事な役目を託すといった。


 そんな事真っすぐ言われたら照れるだろ。


 腹黒そうな奴なのにのに、なんでそういうとこは真面目なんだよ。


 そんなの聞いたらちょっと考えちまうじゃねーか。


 あーもう。

 仕方ねーな。


 頼まれた役目はきちんとこなす。


 あたしだって、危険な連中を野放しにしたままでいいって思ってるわけじゃねーんだから。


 最後にがれきの隙間に咲いていた野草の花をつんで、適当にそこらへんの家に置いといた。


 別に知り合いの家とかじゃねーからな。

 って、だから日記に何書いてんだ、あたしは。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る