女子高の教頭先生は泣きたい

アンドリュー

第1話 荒ぶる教頭

桜の花びらが舞う季節。毎年訪れる入学式に向け、親御さんと共に校門をくぐるシワやシミ一つ無い新入生を校舎の三階から眺める一人の男性がいた。








男性の頭の天辺は、太陽の日差しに立ち向かう様に光を反射しており、マシュマロの様な弾力を秘めていそうな体には、幾度もクリーニングされほどよく馴染むスーツを着込み、まん丸な形のメガネの内には、男性の所属する女子高に新たな風を吹き込むであろう新入生達を微笑ましく眺める優しい目があった。








そんな男性は外見とは裏腹に、40才と言う若さで女子高の教頭を務めている独身男性であった。








「今年もこの季節がやってきたか~。うちの女子高はなかなか偏差値が高いが、皆大変な受験を乗り越えて来たんだ。我が校で貴重な青春という時間を悔いなく過ごしてもらえるように私も頑張らないと、、、ん?あれは、何だ!?」








教頭先生の視線の先には校門をくぐる新入生とその保護者達から奇異な目で見られながら登校してきた一人の生徒の姿があった。その姿は、新品の制服に馬の頭の被り物を被って登校している女子高生の姿があった。








何食わぬ感じで校門を抜けた馬の被り物の新入生に、教頭は三階の廊下で沈黙した。およそ3~5秒の後に我に返った教頭は一人廊下で自身と自問自答を始めた。








(何!?今の何!?馬?何故に入学式で馬!?と言うか色々な事が追い付かない!今まで高校デビューで背伸びしてるようないたいけな子は見てきたけどあんなの初めてだ!?初めて過ぎて私のこれ迄の人生観ひっくり返るわ!!ていうか何故校門に立っている新任の先生達も無言で視線によるお出迎えを慣行してるんだ!?マニュアルに無くとも呼び止めて!其処は一度呼び止めて!!じゃないと教頭パニックでどうにかなりそうだから!!!)








荒ぶる内心の中、入学式の前に行う予定の業務より先程の馬の被り物が気になって仕方無い教頭先生だった。次期に始まる入学式に一抹の不安を抱きながら、教頭先生は体育館に向かった。








(今年は風が吹き荒れそうだなぁ。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る