雨が降る

「あめだ」

「雨だね」


「明日のおしごとは?」

「午前で切り上げて、午後はずる休みしようかな。あなたは?」


「がんばって、行く」

「えらい。雨に濡れないようにね」


「うん。最近は、ずぶぬれになっても熱を出さないよ?」

「そうやって油断したときが危ない」

「うん。なるべくぬれないようにする」


「そういえば、出会ったときも、雨だったね」

「そう。私がまだダメ人間だったとき」

「いまもまだまだダメ人間よ。私もまだ仕事が捨てられない」


「それでも明日は仕事行くもん。あなただって、明日の午後はずる休みできる。ゆっくり休んでね。真面目で天才なままだと、こころがこわれて機械に戻っちゃう」


「うん。頑張らないで、ちゃんと休む」

「えらい。いや、えらくない。ちゃんとえらくない」


「あなたに出会えてよかった」


「えいっ」

「いたいっ」

「だめ。それ言っちゃだめなやつ」

「え?」


「だめなの」


「なんであなたが泣くのよ。叩かれた私が泣くべきでしょ」

「死亡フラグ。だめ。しんじゃだめ」

「死なないわよ」

「あなたは自分がしなないと思ってるからだめなの。わたしもやすむ。仕事」

「だめ。休んじゃダメ」

「いや。休むって言ったら休むの」


「ありがとう」


「あ、ごめんなさい叩いて。ごめんなさい。泣かないで」


「私のために、休んでくれようとして。ありがとう。ありがとうね」


「ううん違うの。心配したのもあるけど、仕事が休みたかっただけなの」


「うそつかなくていいよ。あなた、ダメ人間なのは外側だけだから。私は知ってるの。あなたが誰よりも優しいこと」


「やさしくないよ。いま叩いちゃったし。ごめんなさい」


「大丈夫。いたいけど、いたくないから」


「ほんとに?」


「うん」


「よかった」


「ねぇ。ほんとに、休んでくれるの」


「うん。休む」


「ありがとう。でも、大丈夫」


「大丈夫じゃないの。私が大丈夫じゃないって言ったら、大丈夫じゃないの」


「じゃあ、午前中だけ、私にちょうだい。午後は仕事に行って」


「それで、大丈夫なの?」


「大丈夫にする。私も、明日は午後だけじゃなくて一日ずる休みしちゃう」


「うわ。じゃあわたしも」


「だめ。あなたは午前中だけ。ちゃんとお仕事行かないと、いやになっちゃうから」


「午後休じゃなくて午前休だと、休んだ気がしないんだよなぁ」


「がんばって。私もなるべく頑張らないで休むから」


「うん。がんばる」



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