第49話

「きれいな銀髪だねー」

 マーニがアデルフィーの第一印象を言った。前で抱きかかえていたフォニアをベルカに預けたシバはアデルフィーを紹介した。

「まあ、なんかおかしな奴だけどフォニアの初めての友達なんだ、よくしてやってくれ、」

 アデルフィーを前に抱えなおしてシバは彼女の境遇について話した。

「どうやらアデルフィーは人間に捕まったらしいんだ、」

「捕まったって?」

 エイミーが尋ねた。

「気が付いたら大きな部屋にいて他にも亜人や魔物もいっぱいいたんだと、さらに皆番号で呼ばれていたらしい、」

「それはたぶんオークションだね、」

 マーニは何か心当たりがあるのかやや俯きながら言った。

「、、、マーニ詳しく。」

「奴隷とは少し違って珍しい魔物や魔法道具などを競売にかけるんだよ、その時に亜人も競りにかけられることもある、」

「この都市ではかつての反乱から奴隷市場はあまり見られなくなったのですがオークションで取引すると言うのはよくあるんです、」

 フォニアを部屋まで運び戻ってきたベルカが言った。

「じゃあ、その子も亜人なのかしら、それらしき特徴は見られないけど、」

 エイミーが言ったことは正しかった。アデルフィーにはフォニアのような亜人特有の耳やしっぽは見られない。特徴と言ったら艶やかな銀髪くらいだ。

「亜人のような特徴も見られないから何とも言えないけど魔力を見れば何かわかるんじゃないの?」

 そう言うとマーニはシバの抱きかかえるアデルフィーに対して魔眼を発動した。

「待ってください!」

 解析魔法を行う寸前でシバがあわてて制止した。

「もう、なーに?そんなにあわてて?」

「いや、僕もさっき魔眼で見たら鍵魔法かかってたんですよ、それで解析魔法に移った瞬間靄の奥から襲われかけたんです。切られそうになったって言うか、」

「こんな子供に?」

 マーニが疑い深くアデルフィーに視線を向ける。

「、、、明らかに外部からの魔法。」

「そうなんだよな、こんな子供に鍵魔法なんてできないだろうし、」

「「「「「うーん、」」」」」

 5人ともアデルフィーが魔族であることはなんとなくわかったがまだ謎が多いと頭を悩ました。

「ま、アデルフィーちゃんもいいけどエイミーちゃん、明日は話し合いだからね、」

 マーニが話題をアデルフィーから明日の人間との話し合いについてに変えた。エイミーはややこわばった面持ちだ。

「、、、くだらない、話をしたところで何も変わらない。」

「なによ、魔族や亜人と人間が共存することを望んでいる人たちなのよ価値はあるわ、」

 エイミーがアイの言葉に対してまくしたてるように反論した。あれだけアイやマーニ、ベルカに言われたにも関わらずエイミーは魔族と人間の共存をまだ夢見ている。確かに魔族と人間の二つの種族が共存すればエイミーの言う通りそもそも争いの火種はなくなるのだろう。だがそううまくはいかないとエイミー以外の四人は思っていた。それゆえにマーニはエイミーが話し合いで多少傷つく恐れがあることを承知で対談を持ち掛けたのだ。

 やや険悪な雰囲気が漂う中この日はお開きとなり皆二階に上がった。と言ってもアイやエイミーは同じ部屋なのだが。

 シバが二階に上がろうと階段に足をかけたところでトントンと肩をつつかれた。シバが後ろを振り返るとそこには笑みを浮かべたベルカが立っていた。何も言わずただ微笑んでいるだけで逆にそれが恐ろしい。若干全身から紫のオーラがにじみ出ている。有無を言わせぬその姿にシバは硬直する。

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