第2.5話
シバを呼び止める女性の声が聞こえた。恐らく魔法陣から姿を現した女性のものだろう。しかしシバが止まるわけもなくその場を離れようとする。
(今話しかけてこなかったか?いや、昼間の寝坊といいきっと疲れてるんだ。)
「、、、待ってと言っている。拒否権はない。」
ショートカットの女性は覇気のない目のまま手を伸ばした。
彼女の指先が紫というよりは黒に近い光を放った。するとシバの体は空中を浮き彼女の目の前に落とされた。同時にシバとその女性の周囲が結界のようなもので取り囲まれた。外にいる者には知覚されないようだ。
「は!?ちょっ、え!?」
「、、、シバ、何がどうなっているか理解できないと思うけれど最初に言いたいことがある。、、、聞いてくれる?」
覇気のない目つきで彼女はシバに言った。
(ほんとに何が何だかわからないけどとりあえず聞くだけ聞いてみるか。)
シバはまた何をされるかもわからないので応じることにした。
「うん、わかった、何だい?」
彼女は少し俯き頬を染め上目遣いに言った。
「、、、あの、会いたかった、」
先程の感情のない無機質な表情ではあったがほんの少し恥じらいと尊敬の意が感じられた。しかし当然生まれてこの方一度もこういったことに巡り合わなかったシバにとって今までの状況に加えて理解が追いつくはずもなかった。
(はあああああああああ!?!?君が!?俺に!?こんな無能を!?てか初めて会ったよね?絶対何か罠だろ!?えっ?えええええええええ!?もう意味わからない、)
シバはとりあえず話を聞いてみることにした。
「まず君は何者なの?どうして本の中から出てきたの?見た感じ魔法陣もあったから封印魔法か何かではあると思うけど、」
シバが尋ねると彼女は感情の読み取れない表情でシバを見つめて言った。
「、、、名前はない、私はあなたを守る、それにあの本には封印ではなくて隠蔽魔法の依り代として隠れていただけ。」
「名前がないってどういうことだよ、自分自身を隠蔽したっていうのももう少し説明してくれよ。」
「、、、隠蔽と言ってもそれほど大げさなものでもない。まず、あなたを催眠魔法で遅刻させ放課後にここの整理をさせられるように仕向けた。あとは見た通り。、、、そんなことよりあなたの実技について見た。どうして正の魔法しか使おうとしないの?」
シバが質問したことに対してきちんと応答しているが全くシバには分からなかった。
「ちょっと待て、説明になってないだろ、そもそもなんで俺のこと知ってるんだよ。」
彼女はほんの少し俯き頬を赤らめて呟いた。
「、、、昔、私はあなたと会っている。」
(えっ?昔?幼馴染なんていないし誰かと一緒に遊んだこともなく姉さんとしか関わってこなかったはずだけど?)
「、、、あなたにはお姉さんがいる、けれどそれは昔のこと、今は会えていない。」
「なんで俺に姉さんがいること知ってんだよ。それに会えないことも。」
「、、、シバ、今から言うことは信じられないようだけれど真実なの。だから聞いてほしい。、、、あなたに本当のお姉さんはいない。」
シバは目の前の女性が訳の分からないことを次々と言い、さらに今は会えない姉の話が出てだんだんとイライラしてきた。その気持ちが言葉の激しさとして表れる。
「は?な、なに言ってんだよ。変なこと言ってんじゃねーよ!姉さんはいない?そんなはずないだろ。第一俺には姉さんとの記憶がある、それとも、俺の思い込みか?答えろよ!」
シバの声が図書室、正確には結界内に響きわたり一時の静寂に包まれた。
「、、、あなたにお姉さんはいない、嘘ではない。そもそもあなたは今は人間ではない。人間と魔族のハーフ。」
「は?」
しかし彼女の口がわずかに動き彼女の口から発せられた言葉にシバは絶句した。
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