第30話
するとそこへ先ほど怒鳴っていた小太りの男のもとに一人の男がやって来た。
「やあやあ調子はどうですか?エルゴドーティス君。」
「これはこれはレオポルドさんお久しぶりです。今日はどうしてこちらに?」
「いつも通り視察に来ただけですよ。うちの“亜人たち”がきっちり仕事をしているかをね。おや?いつもよりも植物の収穫が少ないようですが?これはどういうことなのでしょうねぇ?それよりも問題なのは、、、」
レオポルドが魔力タンクに目を向けた。20本ほどの管が伸びる先にある大きなつぼ型のタンクには半分の量を示す指標線よりも下までしか溜まっていなかった。
「確か一日のノルマはタンクを満タンにすることでしたよね、お昼を過ぎているのにこの量しか溜まっていないのはおかしいですねぇ。」
「おい!今日この仕事に当たっていた者はここに来い!」
魔力の吸収の一日のノルマを達成できそうになかったため今日の担当の大人をエルゴドーティスが前に集まるように怒鳴りつけた。
「あの黒いスーツに黒いシルクハットの細身の男がレオポルド・スラベだ。シルクハットとモノクルが彼の特徴だよ。その隣のさっきから怒鳴ってる太った男がエルゴドーティス。亜人たちの主人ということになっている。」
「あのモノクルがなんか気味悪いですね、それと、気づいたんですけど、亜人たちの中に片腕や片脚のない亜人がいるんですけどまさか、、」
エルゴドーティスに怒鳴りつけられてぞろぞろと20人の亜人の大人がレオポルドとエルゴドーティスの前に跪いた。皆冷や汗を流し怯えている様子だ。周りで他の仕事をしている亜人たちも動揺を隠せない様子でいる。
「前にもノルマをこなせないようなゴミはここで生活する権利はねえって言ったよな!おめぇらみたいなゴミには知っての通り罰を受けてもらう。しっかり体に刻んでやるよ!」
「まあまあ、エルゴドーティス君、あまり怒鳴り散らかすだけではだめですよ。」
レオポルドがエルゴドーティスをなだめるように言うと目の前にしゃがみ込む亜人たちを見下ろして言った。
「君たちは人間に魔族と同様に嫌悪され迫害されてきました。そんな中君たちに住む場所と、食事、わずかではありますが硬貨も与えています。その見返りとしてこのように働いているのでしょう?しかし一日のノルマを守れないような者にはそれなりの罰があります。当然ですよね?わかりますよね?」
レオポルドの言葉に周りの亜人たちも手を止めてしまっている。これから起きることがわかるのでもともとひんやりとしていた地下の温度がさらに下がったように静まり返った。
「おら!自分がどうなるかわかってんなら早く行動しな!腕か脚か切られたい方を出せ!」
「ほらほら、またそんな物騒な言い方しなくてもいいじゃないですか。エルゴドーティス君は強引なんですから。ほら君たち急いでください、」
自分の意志で手足を差し出すのはやはりどんな状況であっても躊躇してしまう。20人の亜人たちは中々差し出すことができずにいた。それを見かねたレオポルドが亜人たちよりも早く行動に移った。
「全く、あなたたちは本当にしょうがないですねぇ、」
そう言うと右腕を真横に伸ばした。
するとその先の空中に魔法陣が浮かび上がり中から一本の剣を引き出した。その剣先は赤いオーラを纏っていた。
そのまま剣を亜人たちに向け単純に振り下ろした。他の亜人にはそう見えただろう。しかしマーニとシバには20回剣を振ったのが見えた。
20回、つまりレオポルドの前にしゃがみ込む亜人たちの数と同じである。
「「「「ああああああ!ぐあああああああ!」」」」
まさに一瞬の出来事であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます