第27話

「何だかんだいって仲良さそうですよね、お二人とも」


 ベルカが仲睦まじく?言い合うアイとエイミーを見ながら目を細めた。

 

「まあ、仲悪いわけではないと思うんですけど、アイの方が年上だからエイミーのことをからかうのが楽しいんでしょう。アイのあの生き生きとした顔が見れるのもエイミーと出会ってからですし」


「それはそうと、エイミーちゃん、この写真いる?」

 

 マーニはこの状況でとんでもない爆弾を落としてきた。そう、その写真とは例のシバとエイミーの写真である。もちろん教育上適していないのでベルカがフォニアの目を手で覆い隠していた。その場の時が止まった。


「、、さ、さあ、そろそろ出発しようかな、行くぞ皆」

 

「待ちなさいよ」

 

 エイミーの凍り付くような声が届く。

 

「な、な、何なのよ!これ!大体なんて顔してんのよシバ!それにマーニさんも!何撮ってんですかっ!」

 

「だって、面白そうだったし。でもエイミーちゃんちょっとまんざらでもなさそうな顔してるよ?」

 

「してませんからっ!誰が裸見られてうれしいと思うんですかっ!」

 

「私は少年になら見られてもいいかもなぁ、少年の反応見るの楽しそうだし。どうだい、少年一緒にお風呂でも入るかい?」

 

「なんで、そうなるんですか!?俺は別に、、」

 

「、、、なら私も別にシバならいい。お風呂はよく一緒に入ってた。」

 

「だからそれ昔の話よね、とにかくその写真貸しなさいよ!今すぐ抹消させるから、シバの記憶からも!!」

 

「だから俺が持ってたわけじゃないから、マーニさんだから。」

 

「ちなみにこの写真は大量に複製しといたよ。」


 

「「、、、ふざけんなっ!!」」


 

「何も見えないの~、これどけてほしいの。」

 

「だめですよ、フォニアちゃんは私が守ります。」

 

「、、、あなたもフォニアの可愛さにやられたのね。」

 

「私は可愛いものの味方ですから。」

 

 マーニのおかげで?一層騒がしくなったシバたち一行であった。



 

「ところで少年たちはこれからどうするんだい?」

 

 マーニがシバに尋ねた。

 

「もともと僕は両親を国と学院に殺されていますから最終的には奴らを潰すことですかね、」

 

「なるほど復讐ということか、ならば君は魔族側に立って人間と争うということでいいんだね?」

 

「まあ、そうですね、人間に対する魔族や亜人の思想はどうやっても変えることはできないしそれは魔族にも言えることですし。」

 

「ちょっと待ってよ、全員が国や学院の魔法士みたいな人間じゃないはずよ、中にはいい人間だっているはずよ、」

 

「確かにエイミーちゃんの言うことは正しいと思うよ、けど、それがどうしたのかな?話し合いをすれば和解できると?」


 マーニが厳しい口調で言った。

 

「だって、争いは争いしか生まない、争わずに解決できれば皆大切な者を失わずに幸せになれるのよ、」

 

「、、、甘い。奴らに言われたでしょう、人間の幸せは魔族がいなくなって初めて成立すると。」

 

「けど、そうは思ってない人間だって中にはきっといるはずよ、」

 

「エイミーさん、仮にそのような人間がいたとしても魔族側と話し合いに参加するのはそのような思想を持った人間ではないですよ。人間代表は国や学院の人間ですから」


 アイとベルカもマーニの意見に同調していた。

 

「ベルカの言う通りだよ、エイミーちゃん、人間はね君が思っているほど単純ではないよ、何度も言うが君の言うようにすべての人間が魔族はいなくなればいいと思っているわけではないよ。でもそれはごくわずかだしそう言った者たちはすぐに罰せられてしまうんだ。」

 

 マーニやベルカそしてアイにも言われエイミーは言葉が出なかった。どうやっても人間と魔族が分かり合えるという日は来ないことを突きつけられた。

 

「なあ、エイミー、お前の気持ちもわからないというわけではないんだ、皆もそうだ。俺のクラスにも良い奴はいた。無能だと周りの連中は馬鹿にしてきた中で彼女は俺を認めてくれた、けどなそれはまだ俺が人間であると思っていたからだ、だが俺はもう半分魔族なんだ、彼女にとって俺は敵なんだ。人間と魔族、お互いがお互いを敵だと認識しているしそこが揺らぐことは決してないんだ」

 

 シバがさらにエイミーに厳しい現実を突きつける。

 

「、、なら、あんたが人間と魔族の橋渡しをすればいいじゃない、元人間で今は半分魔族なんでしょ、あなたがこの世界で唯一魔族と人間の懸け橋になれる存在じゃない!」

 


「、、、あなた、本気で言っているのかしら。」

 


 アイが魔法陣を展開し細く鋭利な氷の刃をいくつもエイミーに向け言った。

 

「割と本気よ、シバの過去のことはわかってるわ、でもそれは私だって同じなのよ。」

 

 エイミーもアイに対抗するように両手に紫に燃え上がる炎の球体を作り紫炎竜に変形させた。

 

「アイ、私に甘いって言ったわよね、自分でもそう思うわ、けどシバだって甘いじゃない。シバは両親二人が殺されたんでしょう、でもね私はね両親だけじゃないわ、村の皆が殺されたのよ、それでも人間との和解を望んでるのよ、」

 

「、、、あなた、自分を棚に上げているけれどそれがどうしたというの?死んだ者の数ではないでしょう」

 

「別に棚に上げたつもりはないわよ、、」

 

「お前ら、いい加減にしろ、フォニアだっているんだ、ここで争っても意味がない、それに他の客も来るかもしれないだろ。」

 

「シバさんの言う通りです、今お二人が争うのは無意味なことです。」

 

 シバとベルカが二人を止めたがマーニは腕を組んだまま何も言わなかった。

 

「ほら、アイもやめろ、エイミーお前もだ、」

 

 シバに言われ二人はしぶしぶ魔法を解除した。

 

「、、、大体あなた程度では私に勝てない。」 

 

「なんですって?やってみないとわからないじゃない、表出なさいよ!」

 

「いい加減にしろって言ってんだろ。」

 

 再び争いになった二人の間に障壁を作りシバは言った。

 

「アイ、今のはお前が悪いぞ。」

 

「、、、けれど、シバのことを、、」

 

「それでもだ、俺を思って言ってくれたのはわかってるよ、けどお前ならエイミーの気持ちもわからないというわけではないだろ?」

 

「、、、分かった、ごめんなさい。」

 

 アイは不服そうではあったがシバに謝った。


 

「話を戻すようで悪いんだけどさ、」

 

 それまで黙っていたマーニが口を開いた。

 

「エイミーちゃん、話し合い、してみる?」

 

「マーニさん、、それは、」

 

「いいんだよ、ベルカ、」

 

 マーニの提案にベルカが何やら言うべきではないと言おうとしたがマーニが発言を制止した。

 

「私の知り合いでねエイミーちゃんの言うような”良い人間“がいるんだ、エイミーちゃんが良ければ話し合いの場を設けようか?」

 

 マーニは何か考えがあるようだった。だがマーニの言う“良い人間”というのにシバは違和感があった。

 

「もちろん魔族であることを伏せてだけど、どうかな?」

 

「はい、ぜひお願いします」

 

「分かった、そうだね、じゃあ三日後の夜に話し合いできるように取り合ってみるよ」

 

 ベルカの表情は決していい表情ではなかった。それにシバも気づいてはいたがこの時は何も言わなかった。

 

「今晩もまたここに泊まればいい、て言うか少しの間ここに住まわしてもらいなよ、ねえベルカ?」

 

「まあ、構いませんが、先ほどみたいに争わないと約束してくださいね。冒険者のお客様もいらっしゃるので。」

 

 マーニとベルカの計らいでシバたちは少しの間ベルカの宿屋に住むことになった。部屋に戻る前にマーニがこっそりシバに耳打ちした。

 

「少年、すまないが彼女たちと部屋に戻ったら降りてきてくれないか、話がしたい。」

 

 何やら深刻そうに彼女は言った。

 

「分かりました、けどあいつら一緒にして大丈夫ですかね、」

 

「問題ない、ベルカに言ってあるから。彼女はいつもニコニコしているが相当強いよ。」

 

「そうですね、それはロック見たらわかりますよ、」

 

 そう言うとシバは一度部屋に戻った。

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