天の彼方にあり

 十全に生き残ることは出来た者は出来たし、出来なかった者は出来なかった。

 秋村さんの葬送の準備を整えながら、私は――イチムラ・ユウはカウントダウンを告げる数字を映したモニターを見上げていた。

 地球。五世紀以上前に、地球人が手放さざるを得なかった母なる星。

 その姿は日食を起こした太陽のように抉れていた。

 秋村さんに伝えた言葉を思い出す。『もう起きません』と言える理由があの姿だ。私たちの世代では記録の中にしかない戦争。その最中に遠い遠い銀河に確認された冗談のように大きな隕石は人間同士の争いを止めた。テキサスシュウにも匹敵する小惑星が150年程後に地球をめがけて飛んでくる、と。単純で覆しようのないそれを見つけた段階で幾つも幾つもの方策が立ち上がった事を記録が物語っている。

 まず停戦活動が起こった。これが初期の奇跡だといわれている。実際にすぐ停戦したかどうかはもう私たちには分からないけれど。

 そして初期段階として小惑星のコース変更の試みが試算され初期に放棄された。その冗談のような威容にコース変更も、破壊も現実的ではないからだ。

 そこで人類は移住を考えた。火星への移住を。もっとも検討され、同時に単純な問題が判明した計画。

 ――00:07:00――

 残り七分の画面を見ながら秋村さんに教えなかった事実を思い出す。そう、単に火星は狭いのだ。故に基礎となる火星をテラフォーミングするグループとフォボスとダイモスの公転軌道等を参考に人類の追加の受け皿であるコロニーの製造を行うグループを走らせた。

 ――00:06:00――

 皮肉なことに戦争がここで役に立った。人類は開戦直後の誰もが思わなかった程には減ってしまっていた。国と名乗れない程に打ち破られた人々は別の国に吸収され、何とか国の体を残していた国々も残された力を吐き出しながら未来への備えを行った。

 ――00:05:00――

『システムブート:動作リンクのみを確立』

 秋村さんの眠りについたコロニー内のマニピュレータと再度リンクを確立。

 

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