2.

「明日、雨が降ったら私の過ごしたい日曜日。晴れたらあなたの過ごしたい日曜日。曇りだったら一緒に考えよう」


 天気予報をしっかりチェックしていた私は、この勝負に勝つことを確信していた。だから昨夜彼の家に来る前に、スーパーに寄って食材と、お菓子と、ジュースを買って来たのだ。それに見たかった映画のレンタルDVDも。


 ビニール袋を提げて部屋へやって来た私を見て、彼は少し呆れた顔をしていたっけ。


「フェアじゃない」


 窓をしっとり濡らす朝を確認してから、彼はそう言った。


「たまにはいいじゃない」


「朝ごはんはどうする?」


「今日はだらだらする日なの」


 彼は居心地の悪そうにもぞもぞ動いた後、ベッドを軋ませながら降りていった。彼が居なくなった分広くなったベットの中で、私は伸び伸びと手足を開放して、またウトウトした。


「…ねぇ、そろそろ起きたら」


 外出できる服装に着替えた彼が、私を起こしに来た。だらだらする日って言っているのに、なんでこんなきちんとしてるんだろう。


「はちみつたっぷりのミルクティーがあれば起きられそうです」


「……そうしていたら作れないよ」


 ミルクティーを所望しながら、彼の腰回りに抱き着いた私をたしなめて彼が言った。


「作ってあげるから、顔ぐらい洗ってくれば」


「今日はだらだらする日だってばー」


 はいはいと適当に答えて居なくなった。こんなにだらだらするのに最高な日曜日の陽気なのに、どうして彼はいつも通りにしたがるんだろう。


 ここ最近の仕事の疲れもあって、またウトウトしかけた時に彼の声がした。


「できたよ。ベッドから出てきなよ」


「ここに持ってきて」


「……行儀悪いよ」


「今日はだらだらする日なの。ハイ、3回目だから100円貯金ね」


 私の青いマグを手に、しょうがないなという顔で彼は現れた。


「せめて起きて飲んでよ」


 はあいと返事をしてサッとベッドに座り直した。温かいマグが、差し出した手の中に降りてくる。ふわっと優しい紅茶の香りが、朝だよと私を起こしてきた。


「これ、好き」


 そっと口をつけると、ゆるゆると私の体温と溶けあうような温度で、一気に飲み干してしまいたい気持ちと、ゆっくり味わいたい気持ちが戦い始めた。


「なんか食べたの?」


「いや、コーヒー飲んだだけ」


「そう、じゃあなんか作ろっか」


 コクコクと喉を鳴らして飲み切って、まだ温かいマグを握ったままキッチンへ向かった。

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