第5話 大人の反抗期
「おはようございます」
いつもの様に
私はお店のカウンター裏にある
暖簾を潜り
事務室にいる店長にあいさつをする。
「おはよう、ようちゃん!今日は本指のお客さんからご予約いただいてますよ」
朝のあいさつと同時に
流石ようちゃん!
と私を褒め称える店長。
私にとってこのお店が
今1番居心地がいい。
店長も 私を推してくれてるし
これからもしばらくは
ここで頑張ろうと思っている。
「では!頑張って行ってきます!」
「行ってらっしゃい!頑張ってね!」
そう言って店長が
待合室に居る
本指のお客を呼びに行った。
私はいつもの様に
お店の前でお客が来るのを
待ってると
背後から聞きなれた声が
私の源氏名を呼ぶ。
「ようちゃん」
振り返って私は
こう思った。
ああ、
あン時の お節介客か。
「元気そうでよかったわ。ようが心配できてしもた」
無事ホテルへ到着し
タイマーをセットする。
「この前はあんな話しちゃってごめんなさい」
「いやいや!俺は話してくれて嬉しかったで!その後 ご両親とは?」
客がそう言うと同時に
まるで狙ったかのように
端末から通知音がなった。
「……母からです。毎日こうして用もないのに連絡送ってくるんですよね。」
私は仕事中だというのに、
鳴り響く端末を閉じて
はぁ、と 深くため息をつく。
「お母さん、なんやかんや言っても ようが心配なんやわからんね」
ああ。
確かにあの人は
普通の時は普通なんだよ。
でも、、
「自分のバイオリズムで、子供を八つ当たりの捌け口にするような人間を 母親だなんて思ってませんよ」
どかっとソファーに腰を掛けた私の隣に
客も同じく腰を下ろした。
「そっか。ようは そんな理不尽なお母さんに言い返したことは無いん?」
「言い返せませんよ。言い返したら今度暴力を振るうのを知ってるので。それが怖くて耐えてきました。」
私がそういうと
うーん。と客が考え込む素振りをした。
「暴力はよくないな。そういう光景を見て お父さんは何とも言わなかったん?」
「父親は基本仕事で、母が専業主婦だったんで 母親と圧倒的に一緒にいる時間の方が長かったんですよね」
「そっか。お父さんはお母さんが そういう人だって知ってるん?」
「もちろんですよ。それでよく両親が喧嘩になってました。そこで大変なのが こちらにも飛び火することでした。
母親は言葉で適わなくなってくると 暴力に変わるんですよ。でも、父親は力があるからそれも適わなくなってきたら 今度台所から包丁を持ってきて 暴れるんですよ」
「…………それお父さん何ともなかったん?」
「……多分、実際に刺すつもりはなかったと思うんですけどね。母も」
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