第2話 増加が怖いんだ





パンパンにふくらんだ買い物袋をかかえ 音を立てないようにそっと家に入る。


家族と鉢合わせをさけるためにーー

自身の部屋に真っ先にこもる。


ここまでくればもう私の時間

買った食材を床一面に並べる。


家族が隣の部屋で騒いでるのも気にせず

黙々と口いっぱいに頬張った。


プリン、からあげ、パスタ、たこ焼き、弁当ーー


僅か15分ほどで 大量の食べ物を胃に詰め込む。


その後、誰も居ないのを見計らい

ペットボトルを片手に風呂場にこもる。


ーーウゥーーオェ…ゲッ……ーー。



役30分ほど。ヘトヘトになりながら自身の部屋へ戻ってベッドに倒れ込む。


当時の嘔吐恐怖症の自分は

どこへ行ってしまったのか。


食べては嘔吐をすることは

日常茶飯事となっていた。


いつから道を間違ったんだろう。

いや、そもそも私が生まれてきた時点で

もう間違いだらけだったんだ。


彩佳(あやか)。


自分のこの名前も あまり好きではない。



この名前は 母親が つけたものらしい。


彩る に 佳作 の佳 で彩佳。

母曰く 女の子ならこの 彩るって漢字を名前に使いたかったらしい。


彩るっていう漢字は 飾りつける または 艶などの意味があるらしく 佳は佳作 できばえのいい作品と言う意味がある。



昔母親からこう言われた事があった。


「美しぃて頭のえぇ、人当たりも良い子に育って欲しいって思いでこの漢字使ったのに あんたみたいなんができてしもた」


これを言われてから自分の名前があまり好きではなくなった。


名前負け と言った言葉はよくできた言葉だと思う。


今じゃ 美しくて頭のいいお嬢さんどころか

ただ只管胃に食べ物を押し込んではリバースする人間ポンプ。


そんな事をふと思い出しながら

そっと意識を手放した。

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