第10話 開始
「いやぁ、もう本当にびっくりだよ!」
「そうだぞ和哉!」
「いや、それ俺のセリフだから」
「「なんで誕生日を教えてくれてなかったの!!」」
「えー........」
誰よりも驚いているのは間違いなく俺だ。みゆが誕生日を祝ってくれるであろうとは思っていたけど、まさか慎也と武宮さんまで........。それに、誕生日一つでどうしてみんなこんなに怒るんだ?
「和哉くんもびっくりしてるね」
「そりゃこれはするだろ?」
「ふふ。それなら和哉くんはもっと驚くことになるね」
「?」
みゆがそんなよく分からないことを言ったのと同時に武宮さん家のインターホンの音が鳴り響く。そこで何故か武宮さんではなくみゆが玄関へと向かって行ったと思ったらすぐにリビングへと戻ってきた。
「........は?」
「相変わらず黒嶋くんは失礼な反応だよね!」
「いや........なんで秋風がいるの?」
「そんなのみゆちゃんに呼ばれたからに決まってるでしょ!」
「ふふ。やっぱりびっくりしたね和哉くん」
そりゃ驚くだろう........。まさか秋風まで来るなんて誰が予想できるだろうか? 通りで武宮さんじゃなくてみゆが玄関に出迎えに行ったわけだ。
「澪ちゃんもわざわざありがとうね。ここに来るのに迷わなかった?」
「こちらこそ呼んでくれてありがとうね。みゆちゃんがここまでのマップを送ってくれたから迷わなかったけど........本当に来ちゃって良かったの?」
「そりゃいいに決まってるじゃないですか! お祝いごとは人が多ければいいに決まってるしね! あっ、武宮伊織です! よろしくね!」
「あっ、今日はお招きありがとうございます。秋風澪です。黒嶋くんとは同じ中学で今も同じコンビニでアルバイトをしています」
「そんな畏まらなくていいからもっと気楽に接して欲しいな!」
「が、頑張ります........」
たまに思うんだけど女子って誰とでもすぐに仲良くなれるのってすごいよな。まぁ、秋風は武宮さんの勢いに若干戸惑っているように見えるけどすぐに慣れるだろう。
「久しぶりだな秋風」
「加賀くんもね」
「久しぶりだってのに秋風は中学の頃からあんま変わってねぇな!」
「加賀くんもそういった失礼なところは何も変わってないね! 今でも黒嶋くんと仲良くしているのも納得だよ!」
「なぁ、遠回しに俺の事をディスるのやめてくれない?」
「なんだよ和哉! 俺と仲がいいってのはディスりなのか!?」
慎也はそんな馬鹿なことを言っているが........なんだか懐かしいなこの感じ。中学の頃も三人でよく話すってほどではなかったにしてもこうやってバカ話をしていたものだ。それがまさか高校生にもなってするとは思わなかった。それも武宮さんの家で。
「はいはい。同じ中学だった同士で盛り上がるのもいいけど、今日は私とみゆちゃんがいることを忘れないでねぇ」
「ふふ。でも、和哉くんは今も中学生の頃も変わってないんだなって事がよく分かったよ」
「それは中学生から成長してないって馬鹿にしてるのか?」
「中学生の頃からずっと和哉くんは素敵な人だったんだなってことだよ」
「お、おう........」
「「「はいはい。ごちそうさまでした」」」
俺とみゆがそんなやり取りをしていると三人からはジト目でこちらを見てくる。それから、武宮さんがわざとらしく咳払いをし、
「ん、んっ! それじゃあ、そろそろ始めよっか!」
「そうだね」
「おう!」
「うん」
武宮さんの発言に伴って、元々リビングのテーブルの上に用意されていたコップに各々が好きなジュースを注いでいく。
「みんなコップを持ったね?」
武宮さんがそう言って全員がコップを持ったことを確認する。それから頷くと、
「それじゃあ、みゆちゃん! よろしく!」
「え? 私なの?」
「そりゃ彼女さんだしね! 黒嶋くんもその方が嬉しいよね?」
「もちろんだ」
「........和哉くんの馬鹿」
俺が迷わずに即答するとみゆは照れたようにジト目をこちらに向けてきたあと、気を取り直すように咳払いをする。
「誰かさんのせいで少し遅くなってしまいましたが........」
誰かさんとは間違いなく俺の事であろう。というか、視線をこちらに向けて言ってる時点で隠す気も無いようだ。
「和哉くんのお誕生日に乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
こうして俺の誕生日会(in武宮家)が始まったのだった。
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