第4章
第1話 危機
ゴールデンウィークが終わった。あの充実した日々は終わってしまったのだ。ゴールデンウィークが終わったのなら学校が始まる。その事実だけで多くの学生は現実に打ちひしがれてしまうというのに俺の通っている学校はさらにそこに追い討ちをかけてきたのだ。来週にはゴールデンウィークとは打って変わって地獄の日々が始まる。そう.......
「中間テストがまじでやばいかもしれない.......」
中間テスト。あいつがすぐ側にまでやってきていたのだ。普段であれば学校の授業中などにこっそりと課題をしたり、バイトの無い日に一気に終わらせておいたりとテストまで余裕があるのだが、今回の中間テストの前にはゴールデンウィークがあった。いや、あってしまったのだ。そのお陰様で俺は素敵な日々を遅れたのだが、逆にそのせいで中間テストに向けての準備をなにも出来なかったのだ。
「そうなの?」
「.......なにもしてない」
「え?」
「中間テストに備えてまじで何もしてない.......」
「バイトを休むの?」
「いや、それは俺のポリシーに反するからそれはしない」
学校の都合でバイトを休むというのは俺のポリシーに反するのだ。なんかこう負けた気がする。
「なら、去年はどうしてたの?」
「そもそも去年は中間テストはなかっただろ?」
「あっ、確かにそうだったね」
去年。つまり、一年生の一学期における中間テストは俺の通う高校では実施されないのだ。一年生になってからの最初の一ヶ月は授業以外にもすることが多く、テストをしたとしても範囲が狭いというのとテストの内容が簡単すぎてしまうという理由から中間テストをしていないらしい。
「これはもうあれしかないのか.......」
「あれ?」
「テスト直前での一夜漬け」
これをしてしまうとテスト期間は地獄の日々となってしまうのだが、テスト期間に入るまでは一夜漬けでゴリ押すということで割り切ってしまえるので勉強なんて気にせずバイトに勤しめるというメリットも存在する。あれ? むしろ、これが最適解だったのか?
「.......和哉くん絶対バカなこと考えてるでしょ?」
「.......いいえ?」
「テストまで一週間もあるんだし今からでも大丈夫でしょ?」
「それがですね.......一週間のうちバイトがある日が五日もある訳でして.......」
「和哉くんはバカなの?」
「返す言葉もございません.......」
「はぁ.......」
「そういうみゆはどうなんだ? バイトも俺と同じ頻度でしてるんだし」
俺ばかりが散々な言われようだが、考えてみればみゆも俺と同じ状況のはずなのだ。余裕な感じを醸し出しているけど、内心では焦っているのではないだろうか?
「私、和哉くんと違って授業中寝てないから」
「いや、そうだとしても授業だけではしんどいだろ?」
「そのための課題でしょ?」
「そうだけども.......」
「授業をちゃんと聞いて課題を一周でもすればテストくらいならなんとかなるでしょ?」
くっ.......これだから天才は.......。とは思ったが、実際にみゆみたいに真面目に授業を聞いたりノートをとったりなんてしたことがないからみゆが凄いのか普通なのかが俺には判断しかねてしまう。
「俺も真面目に授業を」
「絶対に無理だと思うよ?」
「まだ最後まで言ってない.......」
「だから、私が教えてあげる」
「まじで?」
「うん。和哉くんが留年しちゃって一緒に三年生になれなくても困るからね」
そう言って少しドヤ顔になって俺をおちょくってくるみゆは可愛いのだが、少し悔しい気もするので俺はささやかな仕返しでもしておこうと思う。
「それなら、数学以外は教えてもらうことにする」
「今なら数学もできるから!」
「なんなら数学だけ俺が教えてやろうか?」
「.......和哉くんのバカ」
みゆは何故だか数学だけは出来ずにいつも赤点をとっていたらしいので、俺が少し嫌味っぽく言ってやると思った以上に効果があったらしいので俺はしてやったりと思ってドヤ顔をしていると、
「やっぱり和哉くんには教えてあげない」
「ごめんなさい。調子に乗りました」
そして、すぐに手のひらを返して謝罪する情けない姿の男がそこにはいたのだった。
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