第25話 お説教

 月曜日の昼休み。今日は朝からずっと教室の雰囲気がどこかおかしい。いやまぁ、原因は分かりきっているんだけども.......。


「ねぇ、黒嶋くん」


「.......俺は知らない」


「まだ何も聞いてないよ?」


 みゆとの水族館デートは土曜日に行ったので、日曜日を挟んでの月曜日。当然ながら月曜日なので学校があるので学校に来ているのだが.......水族館に行ってからずっとみゆのテンションが高いままなのである。2日経った今でも鼻歌でも口ずさみながらスキップしそうな雰囲気なのだ。そのため、朝からクラスメイト達はみゆに対して困惑していたのだ。


「なんか、みゆちゃんの周りだけお花が咲き誇っているように見えるのは私の気のせいなのかな?」


「.......気のせいだろ」


「絶対嘘だよね? 黒嶋くんは一体何をしたの?」


「和哉くんと伊織ちゃんはさっきから何を話してるの?」


 俺と武宮さんが話していると、その当の本人であるみゆがこちらへとやってきた。


「ねぇ、みゆちゃん。単刀直入に聞くけど何があったの?」


「何がって.......えへへ」


「黒嶋くん!! なんなの!? 本当になんなの!?」


「.......いつも通りだろ?」


「どこが!? 普段はクールなみゆちゃんが今は完全にデレデレだよ!?」


 いや、うん。分かってる。けどさぁ、正直何が原因でこうなったのか俺にも分からないんだよなぁ。水族館に行ったから? キスをしたから? お揃いのキーホールダーを買ったから? 答えは全部ですってか? いや、もうそれなら本当にどうしたらいいのか俺には分かりません。それに、このデレデレなみゆも可愛いから俺としては何も問題ないしな。むしろ、ありがたいまである。


「あっ! 伊織ちゃんありがとうね!」


「なにが!? ねぇ、本当になんなの!?」


「それはねぇ.......秘密だよ!」


「みゆちゃん可愛いかよ!?」


「みゆはいつでも可愛いぞ?」


「知ってるよ! というか、それを平然と言ってのける黒嶋くんも大概だよね!?」


「「武宮さん(伊織ちゃん)今日はテンション高いな(ね)?」」


「どこぞのバカップルのおかげでね!!」


 おぉ、完璧なツッコミだ。さすが武宮さんだ。もう何か聞かれてもめんどくさいしこのノリで押し通すか? 


「伊織ちゃん落ち着いて?」


「落ち着きたいよ!」


「じゃあ、落ち着けよ」


「一体誰のせいだと思ってるの!?」


「「?」」


「君達二人のせいだよ!!」


 よし。このまま昼休みを乗り越えて放課後になってしまえば今日はバイトだし、それを理由に早々に帰宅すればこの話はこれで終わる。


「ねぇ、このまま話を無かったことにしようとなんかしてないよね?」


「.......なんのとこでしょうか」


「ねぇ、みゆちゃん」


「なに?」


「本当にどうしちゃったの? 何か本当にいい事でもあったの?」


「えっとねぇ.......嘘が本当になったの!」


「ごめんねみゆちゃん。何を言っているのかちっとも分からないよ」


 まぁ、武宮さんからしたらそうなるよなぁ。けど、みゆは別に嘘をついている訳でもない。さっさと本当の事を言えばいいじゃんって? 同級生の友達にキスをしましたって報告するのってなんだか恥ずかしいだろ?


「和哉くんとね水族館に行ってきたの」


「あぁ、前に黒嶋くんの言ってたお詫び?」


「そういうことだな」


「その様子だと楽しめたんだねって.......あれ? 確かお詫びを何にするか決めた時に黒嶋くんも嘘を本当のことにしようって言ってたよね?」


「.......言った気がする」


「水族館.......嘘を本当に.......あっ、私の書いた校内新聞!」


 さすがと言うべきなのだろうか? 水族館に行ったとと聞いただけで正解にまで辿り着いしてしまうとは.......。


「でも、なんでみゆちゃんはそんなに浮かれてるの?」


「え?」


「私の書いた記事って確か、水族館デートして最後にキスをするみたいな感じのだったよね?」


「まぁ、そんな感じだったな」


「だったらどうして?」


 どうしてそこまで行き着いて分からないのだろうか? もうほとんど答えは出ていると思うのだが.......。もしかして、みゆのテンションが高い理由って俺が思っているものと違うのか?


「.......まさかだとは思うんだけど今回の水族館デートでしたキスが初めてだったなんてことは無いよね?」


「「その通りだが(だよ)?」」


「嘘でしょ!? バカップルのくせにどんだけピュアなの!?」


「「.............」」


 ん? これはどういう意味なのだろうか? 馬鹿にされているのか?


「まだキスもしてなかったなんて.......黒嶋くんヘタレすぎでしょ!」


「.............」


 これは完全に馬鹿にされているのは分かるが、俺がヘタレというこに対して何も言い返せないので俺はもう押し黙るしか無かった。さっきからみゆが余り喋らなくなったのでみゆの方を見てみると.......。


「.......和哉くんのヘタレ」


「.......ごめんなさい」


 それから俺は俺のヘタレ具合に対して武宮さんにあーだこーだ言われているとみゆのテンションも落ち着いてきたのか武宮さんに俺のヘタレ具合を報告し始めた。それを聞いて武宮さんは俺に対して説教をする。.......いじめなの?

 なお、昼休みが終わってからのみゆはデレデレすることなく、今まで通りのクールなみゆに戻っていたのだった。

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