第23話 嘘を本当に

 昼食を食べたあと、俺とみゆは再び館内を順路に沿って進んでいく。その際にもみゆは色々と解説をしてくれていた。それから1時間ほどした頃にアナウンスが流れたので俺達はそのアナウンスに従って目的の場所へと向かう。


「皆様! お待たせしました! 本日のイルカショー14時からの部を始めますので楽しんで行ってくださいねぇ!!」


 そう。先程のアナウンスはイルカショーがもう少しで始まるとのアナウンスであり、俺とみゆは水族館に来たならイルカショーは絶対に見ようと話していたのですぐに移動したのだ。


「イルカってこうやって見ると可愛いんだね」


「だなぁ。なんか見てて癒されるものがある」


「うん」


 ただ泳いでいるだけのイルカを眺めているだけで癒されるなんてイルカにはリラックス効果でもあるのだろうか? それなら、一家に一匹イルカがいれば世の中から争い何てものは消えるかもしれない。世界平和への第一歩はイルカを飼うことからなのかもしれない。

 しばらくするとイルカショーは本格的に始まり、イルカが飛んで輪っかをくぐったり、2匹のイルカがタイミングよく飛びあったりとこれぞイルカショーといったパフォーマンスが続いていく。その度にみゆは目をキラキラとさせていたので声は出さなくてもみゆは相当楽しんでいるようだ。


「すまん。ちょっとトイレに行ってくる」


「うん。分かった」


 みゆは返事はしてくれるも目はイルカから離せないでいる。そんなみゆが微笑ましくていつまでも見ていられる気がするが、ここは心を鬼にして俺は席を外す。

 それから、俺が席に戻ってもみゆはイルカに釘付けであった。俺が戻ってきたタイミングではショーも終盤を迎えていたのでイルカ達のダイナミックなパフォーマンスに俺も目を奪われてしまっていた。


「すごく良かったね!」


「だな。イルカって可愛いだけじゃなかったんだな」


「うん! すごくかっこよかった!」


 イルカショーを見終わったあとも館内を見回っていたのだが、みゆはイルカが随分と気に入ったらしくずっとイルカについて話していた。

 イルカショーが終わってから1時間ほど館内を見て回っていると館内を一通り全て見終えたので俺とみゆは水族館をあとにする。


「すごく良かった! 今日は連れて来てくれてありがとね!」


「そんだけ喜んでもらえると俺としても嬉しいよ。それに、俺も楽しかったしな」


「また一緒に来ようね!」


「そうだな」


 本当に楽しかったようで、みゆは水族館をあとにした今でもすごくテンションが高かった。こんなにテンションが高いみゆを見るのは遊園地に行った時以来かもしれない。


「なぁ、少し寄り道してもいいか?」


「いいけど? どこに行くの?」


「すぐ近くだから着いてからのお楽しみってことで」


 そう言って俺はみゆの手を引いて歩き始める。と言っても、目的地は本当にすぐ近くなので5分も歩かないうちに到着する。


「綺麗だね.......」


「やっぱり海は夕方が一番綺麗だよな」


「うん」


 俺の目的地は水族館のすぐ近くにある砂浜であった。今はまだ4月の終わり頃なので、砂浜には俺とみゆの2人以外は誰もいない。俺とみゆはしばらくの間、なにかを話すでもなくこの夕日で赤く染まっている海を眺めていた。


「ふぅ.......。なぁ、みゆ」


「なに?」


「嘘を嘘じゃ無くすにはどうすればいいと思う?」


「?」


「質問を変える。友達が嘘をついていたとして、その嘘を嘘じゃ無くすことができるならみゆはどうする?」


「そんなことが出来るなら嘘を嘘じゃなくしてあげたいけど.......和哉くん。さっきから何を言ってるの?」


「あぁ.......その.......すまん!」


「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」


 そう言って俺はみゆの唇に自分の唇を重ねたのだった。

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