第20話 小悪魔

 毎日を生きている中で日によって、その日が過ぎるのが早く感じることもあれば遅く感じることがあったりとするのではないだろうか? 俺はこの1週間がこれまでに感じたことがないほどにゆっくりに感じていた。来る日も来る日も同じことしか考えていなかったからか毎日における変化と言えばその日のご飯とバイトがあるかないかくらいであり、それ以外は何も変わらないくらい毎日同じことだけを考え続けていた。


「やっとこの日が来たね和哉くん!」


「だな」


「今日が楽しみすぎて毎日がすごく長く感じたよ」


「奇遇だな。俺もだよ」


 そう。今日はみゆと水族館デートに行く日なのだ! 毎日飽きることなくこの日のことだけを考え続けていたのだ。本当に長かった.......たかが1週間と少しだというのに.......。


「あっ、今日も前みたいに駅で集合にするのか?」


「ううん。しなくていい」


「まぁ、確かに前みたいにみゆがナンパされても大変だしな」



 前というのは俺とみゆが春休みに入ってすぐくらいに遊園地に行った日のことだ。あの日はみゆが駅で集合したいと言うから俺が15分ほどあけて家を出て駅に着くとみゆは見事にナンパされていたのだ。今となっては笑い話ではあるが、あの時は本当に焦ったなぁ。


「それもそうだけど.......今は和哉くんと1秒でも長く一緒にいたいから.......」


「!?」


「あの時はまだ付き合ってなかったから少しでも和哉くんに女の子として見てもらえるようにデートっぽくしてみようと思って駅に集合にしたんだけど今はもう私は和也くんの彼女だからね。それに、」


「みゆさん.......それ以上は今はやめてください.......」


 もうこれ以上言われてしまうと俺の何かが壊れてしまう気がする。ただでさえ可愛いみゆがそんな照れながらもそんな可愛いことを言われてしまうと本当にダメだ。語彙力が無いって? そんなもんあるわけないだろ。みゆの今の可愛さを表現するのに日本語じゃ力不足なんだよ。言葉では言い表せないなにかがあるっていうのはこういう事だったのか.......。


「和哉くん? もしかして、照れてる?」


「.......早く行くぞ」


「ふふ。和哉くん可愛いよ」


「.......うるさい」


 俺はそう言って先に家を出て、俺達の住んでいるアパートの下に降りて待っている。少しでもみゆから距離をとって火照った顔を冷ます時間を確保する。


「もぉ。1秒でも長くいたいって言ったばかりなのに逃げないでよ」


「うっ.......すまん.......」


「ふふ。冗談だよ。私は可愛い和哉くんも大好きだからね」


「.......最近なんかすごくおちょくられてる気がする」


「気のせいだよ?」


「絶対に気のせいじゃない」


「そんなことはいいから早く行こ?」


 そう言ってみゆは俺の手を取って駅の方へと歩き出す。はぁ.......最近のみゆは俺の扱い方? のようなものが分かってきてしまったのか俺に対するおちょくりの回数も増えてきているどころか的確に俺の弱いポイントをついてきているような気もする.......。少し前は純白の羽の天使だったのに今では小悪魔みゆが顔を見せ始めてしまっている。.......小悪魔系のみゆか.......それはそれで悪くはないのか?


 そんなことを考えながらもみゆに手を引かれながら歩いているとすぐに最寄りの駅へと到着した。


「えっと.......この切符でいいんだよね?」


「ん? そうだと思うぞ?」


「.......なんか不安の残る言い方だね」


「まっ、大丈夫だろ。我らがグーグル先生もこれだって言ってるんだし」


「それなら大丈夫だね」


 そのまま切符を購入し1時間ほど電車に揺られていると目的地であった水族館の最寄り駅へと到着する。それから5分ほど歩くことで目的地である水族館に無事到着した。

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