第8話 卒アル

「ねぇ、和哉くん」


「なんだ?」


「和哉くんの小さい頃の写真とか見たい」


「いわゆる卒アルとかか?」


「うん」


 卒アルかぁ。確か俺の部屋に置いてあったと思うけど、ぶっちゃけ面白くもなんともないと思う。なぜなら、基本的に俺は1人でいることが多かったのだ。別にぼっちだったとかそういった訳では無いが好き好んで色んな人と接するようなことは無かった。要するに卒アルの写真には俺はほとんど写っていないのだ。個人写真と集合写真以外はほぼというか全く写ってないかもしれない.......。


「別にいいけど俺の写った写真はほとんどないと思うぞ?」


「それでもいいから見たい」


「なら、俺の部屋に行くか」


「分かった」


 俺の部屋は2階の角部屋なので、階段を上がり俺の部屋のドアを開ける。そこで、俺の机の上に何やら見慣れない物が置いてあった。


「なんだこれって.......俺の卒アルじゃん.......ばあちゃんのやつこうなることを見越していたのか.......」


「和哉くんのおばあ様ってすごいね.......」


 本当に我が祖母ながらすごいと思う.......。伊達に何十年も生きてはいないということなのだろうか? 


「まっ、探す手間がはぶけたと思って見てみるか」


「うん」


 それから俺とみゆは俺の小学生の頃の卒アルを前から順に見ていったのだが.......


「.......和哉くんちゃんと学校に行ってたの?」


「そのはずなんだが.......」


 自分でもびっくりなくらい俺の写っている写真が無いのだ.......少ないだろうとは思っていたが本当に個人写真と集合写真以外は無いとは.......。遠足などの行事毎の写真でも何故か俺の写真が見当たらない。別に1人でお昼ご飯を食べていたとかそんなことは無かったはずなのだが.......無いよな?


「あれ?」


「どうした? 俺の後ろ姿でも写ってたか?」


「いや、和哉くんはいないんだけど.......これって加賀くん?」


「加賀って慎也か?」


「うん」


 あいつとは中学から仲良くなったから、小学校は別々だと思っていたのだがみゆの示す写真の子を見るとどこからどう見ても慎也であった。


「あいつ.......小学校も同じだったのか.......」


「何で知らなかったの.......」


 そう言えば慎也とは、小学生の頃の話とか何もしたことが無かったからなぁ。お互いの過去にそこまで興味なんてなかったし、慎也も今が楽しければそれでいいっていうタイプだったし。けどまさか、小学校が同じだったとは.......。


「和哉くんと違って加賀くんはいっぱい写ってるね」


「あいつは中学の時とかも写真とか大好きだったからなぁ。何でも、頭が悪いからすぐ忘れてしまうから写真としておいておけば見た時に思い出すだろうって」


「まぁ、それが写真の用途なんだけどね.......」


 それから中学の頃の卒アルも見てみると、小学生の頃と比べると俺の写真は増えていた。そして、俺の写っている写真には必ず慎也も写っていた。つまり、そういう事だ。


「.......和哉くんって加賀くんとそういう関係だったの?」


「やめてくれ。吐きそうになるから.......。ただあいつが写真好きだからあいつと仲が良かった俺も必然的に写真に写ることが増えただけだ」


 それからも、中学の頃の卒アルを順に捲っていくも今度は秋風がいた。あいつとは同じ中学に通っていたのだから写っていて当たり前なのだが問題は俺とのツーショットであったということだ。.......何この写真.......全く記憶に無いのですが.......。


「.......和哉くん?」


「.......記憶にございません」


「秋風さんと付き合ってたの?」


「断じてそんなことはございません.......」


 本当になんなんだこの写真は.......今の彼女に昔の彼女とのツーショット写真を不意に見られたような気持ちが今分かった気がする。まぁ、みゆが俺にとっての初めての彼女なのだから、過去に彼女何ていた事なんてないのだが.......。


「.......まぁ、和哉くんは今は私のものだからいいんだけど、これからも気をつけないと.......」


 みゆもさっきからボソボソと何か言っているが怖いから聞かないでおこう。きっとそれがいい。なんでか知らないけど目が本気って感じがするんだから。というか、聞くのが怖い.......。


 そんなこんなで小学校、中学校の頃の卒アルを見たわけなのだがみゆの感想は、


「和哉くんって昔から和哉くんなんだなって感じがする」


だそうだ。俺には意味が分からないがみゆの中ではそれで満足だったのか卒業アルバムをそっと閉じて俺の机の上に戻していた。

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