寒空の下で泣いていた彼女を買ったら、幸せになりすぎてしまいました
白浜 海
第1話 寒空の下の出会い
「おい、大丈夫か?」
「.......大丈夫そうに見える?」
彼女の名前は
ただ今の彼女は、俺には今にも消えてしまいそうにも見えた。だから、話したことも無い同級生に声をかけた。このままではいけないと俺の中で警鐘がなった気がしたのだ。
「いいや、見えないから話しかけたな」
「そう。あなたはお人好しなのね」
「なんで泣いてんだ?」
「私の居場所が無くなったの.......」
「何言ってんだ?」
「はぁ.......察しが悪いのね.......」
「今ので分かるわけがないだろ.......」
「私、捨てられたの」
「.......え?」
「ついさっき親に捨てられたの.......」
彼女は何を言っているんだ? 親に捨てられた? ただの親子喧嘩ではなくて? それも、2学期の終業式の日。今日は12月24日であり、気温も俺の住んでる地区だと0度を下回っていたはずだ。そんな日に追い出されたっていうのか?
「追い出されたのか?」
「いいえ」
彼女はそう言って、首を横に振る。そして、俺が考えていたよりも遥かに最悪な答えが返ってきた。
「家ももう無いの。正確には、明日取り壊されるみたい」
「!?」
彼女が言うには、学校を終え家に帰ると1枚の置き手紙と10万円の入った封筒が机の上にあったらしい。その手紙には、あなたは要らない子。この家はもう売ったから、明日から取り壊しが始まること。これからは、好きに生きなさいといったことが書かれていたそうだ。
「さすがに冗談だろ.......」
「いいえ。家の中の家具は机以外は何も残されていなかったし、取り壊し工事の人が家に訪ねて来たしね。最終確認だとかで」
「いくらなんでもそれは.......」
「けどね、これは仕方ないの」
「親が子を捨てるのに仕方ない理由なんかあるかよ!」
白夢は珍しいものを見たといった表情で俺を見てきた。
「あなたは初めて話したような、私のために怒ってくれるのね」
どうして俺がこんなにも怒っているのかは自分でも分からない。ただ1つ言えることは、この話を聞いていてひたすらに胸糞が悪くなったということだ。
「でもね、私は父とその愛人の間に生まれてしまった子だから。本当は産むつもりなんて無かったって直接言われたこともあるわ。さすがにあの時は私も死にたくなったな.......」
愛人? なんだよそれ。たとえ愛人との子であったとしても自分の子には変わりないだろうが! けど、ここで俺が怒っていても仕方ないんだよな。今すべきことは、彼女をどうしてやるかだ。
「それで、どうするんだ?」
「死ぬよ?」
「.......何言ってんだ?」
「考えてもみてよ。私にはもう帰る家はない。お金も10万円だけしかない。季節は真冬。私にどうしろって言うの?」
「10万円あるなら家でも借りれば」
「私、未成年だよ? 家なんて借りれると思う?」
「.......。それなら、施設とかに」
「施設に入るのにも時間はかかるの。すぐに入れるなんてそう甘くはないんだよ?」
「もう調べてあったのか.......」
「えぇ。産むつもりなんてなかったって言われた日にね.......これで分かったでしょ? 私は死ぬの。だから、もうこれ以上私に関わらないで」
私はもう死ぬから、関わらないでか.......。恐らく彼女は本気で死ぬことを決意している。いや、もう生きることを諦めてしまっているのかもしれない。そうなると、大変な目にあうから私には関わるなということなのだろう。自分が死にそうなのに、俺に気遣っているのか? 俺なんかよりよっぽどお人好しじゃねぇか。だったら、
「お前、俺の家に来いよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます