第2話 イダー参上

俺が小学生の頃、新しい学校に転校した時だ。


「初めまして、井田勝利です。よろしくお願いします。」


「転校生の井田君、意外とかっこよくない。」


女子がこっちをチラチラ見ながら、話をしている。


なんだろうか?


「井田の奴、調子乗っているな!」


男子がこっちを睨みつけて来ている。


こっちもなんだろうかその時は

全然わからなかった。


「みんな戦隊ごっこやろうぜ!」


待ってました!俺が一番大好きなやつだ!


これで一気にみんなと仲良くなろう。


「俺も入れてくれない?」


男子達に近づくと明らかに怪訝な顔をされた•••。


すると1人の男の子が皆を呼び、ヒソヒソと

話し始める。


ニヤリとしながら男子達がこう言った。


嫌な予感がする•••。


「お前は井田だからイダーの役な!

それなら入れてやるよ。」


ケタケタ笑い始めた。


イダー•••皆が嫌うザコキャラだ•••。


戦隊シリーズに毎回出てくる、全身黒タイツで

覆面をしている気持ち悪いやつ。


「イ〜ダ〜」ってしか言わない。


クネクネする動き、ムダに高い身体能力

なのにワンパンでやられる。


一番やりたくない役だ。


「なんだやらないのか?じゃあいいや。」


どうしよう。やりたくないが、やらないと•••。


「わかったやるよ•••。」


仕方なく引き受けた、仲間外れに

されたくなかった。


「イ〜ダ〜!」


クネクネと変な動きをする。


「ギャハハ!井田上手いぞ!」


本当はやりたくないのに•••。


「井田君、なんか気持ち悪いね•••。」


女子達が今度さ冷ややかな目で見てくる


「必殺パンチ!!!」


ヒーロー役の子にバチンと肩を叩かれる。


「イダ〜!」


床にわざと倒れ込む

肩が思っていたより痛い。


こんな事が何日も続く、ある時。


「必殺パンチだ!!!」


「イダ〜!」


またいつもと同じだ。


床に倒れこむ。


「このイダーまだ生きてるぞ!必殺キックだ!!」


いつもと違う!


身体にキックがあたる。


めちゃくちゃ痛かった•••。


カチン!


何かが、頭の中ではじけた!


「おい!」


バチン!!!


つい、相手の顔を殴り返してしまった。


「うわ〜ん!痛いよ〜!」


殴った子が泣き始めた。


「どうしたんだ!」


そこにタイミングよく先生が現れる。


「井田君が急に怒って殴ったんです!」


男子達が口を揃えて言う。


「違います!俺が倒れた所を先に

蹴られたんです!」


正直に話すが•••。


「遊びだっただろ!」


さらに言い返される。


「井田!皆、こう言ってるだろ!ちゃんと謝れ!」


先生は皆を信じ、俺を信じてくれなかった•••。


「ごめんなさい•••。」


謝りたくなかった。


悔しかった。


けど仕方なく頭を下げた。


しかし•••。


「井田君、最低。」


女子達にまで冷たい目で見られる。


これがトドメ•••。


その日から俺は誰とも話さなくなった。


〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

「なぜイダーなんだ•••。」


ヒーローになれるって言っていたじゃないか!


あのクソ女神が!


しかもしますだと⁉︎


化けてるじゃねーか!


変身だろヒーローは⁉︎


俺は妖怪か⁉︎


しかも、決め台詞が

「とりあえず頑張ろ!」ってなんだよ!


やる気なさ過ぎだろ!


「クソ!クソ!!クソ!!!あの女神いつか

ぶん殴ってやる!!!」


と、思いっきり地面を叩きつけた。


その瞬間•••。


ドゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!


地面に大きなクレーターができ、

泉は空に打ち上げられ、雨の様に変わり、

森は隕石が落ちたかのように衝撃波で

木々が薙ぎ倒されていた。


「ふぁ?」


言葉にならなかった。


なんだこのふざけた力は⁉︎


イダーはザコキャラだぞ!!!


と、その時•••。


「さすが俺様だな!こんぐらいできて

当然じゃね?」


勝手に口が動き始めた⁉︎


身体も動かなくなってきた⁉︎


「ちょいと心の中のお兄さん、黙っていてくないかな?」


(なんだよ、お前は⁉︎)


「俺様はあんたで、あんたは俺様だよ。

 ジンギスカンとヘドロみたいな⁉︎」


(ジキルとハイドな!ってなんでわかるんだ⁉︎)


「まぁ俺様を作り出したのはあんただぜ。

あんたは覚えてないだろうがあんたは俺様が

嫌すぎて別人格を作りだしてたんだ!」


(そんなことあるわけが!?)


「正義の鉄槌バックドロップ決めたの

だ〜れだ?」


(あれは俺だが•••あれ記憶が?)


「あれは俺様がキメてやったんだよ!俺様もあんたと一緒であいつら嫌いだったんだよね。

かわいこちゃん達に手を上げるしさ!」


(そう、あいつらは嫌いだったって、今はそんな

ことより、いいかげん身体を返せ!)


「嫌だね!時間があるかぎり俺様は舞い続ける。」


(待て!?てか、お前喋り過ぎだろ

普段はイ〜ダ〜しか言わないだろ!!)


「いや、普通に考えてイ〜ダ〜しか言わない

ヒーロー嫌じゃね? 」


(確かに•••ってそうじゃねぇ!)


「それに今まで話せなかった分、めぇーいっぱい

話させてもらうぜ!!!」


「向こうの世界とは違い、こっちの世界では

ヒーローだ!好きにさせてもらうよ!」


(待て!?)


そうゆうと脚を曲げ思いっきり飛び上がる。


「こりゃスゲー眺め最高!!!」


あっと言う間に空まで行っていた。


そこには今まで見たことがない

世界が広がっていた。


一面、緑一色の平原、遠くからでもわかるぐらい

高い山々、少し、離れた所には大きな城と

町がある。


(すげぇ、本当に異世界に来たのか•••)


「おっ!!かわいこちゃんめっけ!」


空中を蹴り思いっきり地面に向かって飛んで行く。


(おい⁉︎こら⁉︎いきなり何を⁉︎)


「勝利ちゃんはちょいとお休みしといて下さい。」


(ちょっとまっ⁉︎•••)


「さて、これからは俺様の独壇場だ!」


勝利の意識は消えた。


「かわいこちゃんが大っきいトカゲに襲われてるな。」


ドン!?と着地した瞬間、またもや大きい

クレーターができ、砂埃が舞い上がる。


「何がおこったのです!」


俺様好みの可愛いい声が聞こえる


「お嬢さんお困りですか?」


かっこいいポーズ決まった!


「魔族か!!!?ここに来て魔族まで•••。」


ガーン!!てか、魔族って俺様みたいに

イケメンなのか?


あと、会話はちゃんと出来るように

なってるみたいだな。


「しどい•••ぼくちんヒーローなのに•••。」


「嘘をつかないで!あなたみたいなヒーロー見たことない!」


そんなこと言っても本当のことなのに。


「お前ら我のことを無視してふざけているのか」


うわ⁉︎大きなトカゲが喋った⁉︎

しかも声でかくてうるさ!


「どこの部隊の魔族かはわからんが我は四天王、

竜将ロアール様の部下で、五天竜が一人、

顎宝竜がくほうりゅうポーチであるぞ

跪け!」


「顎宝竜⁉︎まさか•••⁉︎」


かわいこちゃんは驚いているが•••。


「なんだと•••⁉︎」


俺様も驚いた⁉︎


「そうか顎宝竜の名前を聞いて驚いたか?」


ヤバイ•••。身体が震えてしまう•••。


「恐ろし過ぎて声もでず、身体が震えて

動けないか。魔族ながら情けないが•••

仕方ない。そこをどいておれ、その女を

殺さなくてはいけない。」


駄目だ我慢できん!!


「ぶぁぁぁぁははははは!!!!!

ポチだって、ペットじゃねぇか!

ペットのトカゲちゃんが偉そうにしてやんの

あ、は•••あははははははは!!!」


腹いて〜。笑い過ぎて何も食べてないのに

口からなんか出てきそう。


「バカですかあなたは⁉︎魔族だとしても

バカ過ぎます!!顎宝竜の名前ぐらい

聞いたことあるでしょう!!」


バカバカいいすぎだよ、聞いた事ないし•••。

聞いた事はあるか、ポチ!あはは!

「俺様泣いちゃうよ、シクシク•••。」 


「嘘泣きなんかやってる場合ですか!」


「きぃさぁまぁぁぁぁあああああ!!!

噛み殺してやる!!!!!!!」


ポチめっちゃ怒っとる、ヤバイ!

怒るとやっぱ迫力はあるな。


「すまんすまんつい、ターマ様なら知ってます••

なんちゃって!!」


いそうだよな、あははは!!


「またしてもきさまぁぁぁぁああああ!!!

ターマごとき知っておいて我を知らんとは!!」


いんのかよ!!!!タマ!!


「もう我慢できん!!!魔族だとしても

容赦はせんぞ、殺してやる!!!」


「だからさぁさっきから言ってんじゃん

俺様はヒーロー!!ヒーロー、イダー様だ!」


「なら、なおさらだ!!!この場で

噛み殺してやろう!!!!」


巨大なトカゲちゃんの顎がせまってくる。


「危ない!!!!!!!?シールド!!」


かわいこちゃんが必死に呼びかけてくれてる。


バリン!!!!


なんか割れた音がしたな?


ガキン!!パキ!


「イタっ!!もうポチ!お前の甘噛み少し痛いぞ」


やだね〜、飼い主はしつけもできてないのか⁉︎


「ありえない•••。」


かわいこちゃんが驚いて腰抜かしてるよ。


「バカな•••バカな!!!我の噛みつきが

効かないだと!!!!!しかも我の歯まで欠けてるだとありえない!!!!」


トカゲちゃんまで驚いて。

じゃれてただけでしょ。


「しょうがない、俺様がしつけてやるか」


ちょっと飛び上がって、ポチの顔の前まで

ジャンプする。


「ポチ!!!!!お座り!!!!」


って顔を叩いた瞬間•••。


ドン!!!!!!!!


ポチの顔が吹き飛んだ


「••••あらやだどうしましょ!!飼い主から

訴えられないかしら!!!?」

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