15
その日、少女は夢をみた
まだ吸血鬼の一族として
出来損ないとして
要らないものとして
一族の恥として
家族というより、奴隷に近い扱いを受けていた頃の夢だ
兄弟の笑い声が
母親の
父親のため息が
嫌な記憶の断片だけが、
そんな時はさっさと目覚めればいいことを、少女は経験則として知っていた
そんな風に、一人きりの夜を超えてきた
なんどもなんども、超えてきた
ふと、彼女が悪夢から目を覚ましたとき、ミミックが心配そうに顔を覗き込んでいたので驚いた
少女が目覚めるなり、ミミックは大慌ててで、石ころやら、布切れやら、折れた剣の
なんだかおかしくなって、少女は笑った
そこでようやく、ミミックは、なにも吐き出さなくなった
そしてぱかっとフタを閉じて、宝箱に戻った
やかましくて、騒がしくて
この化物が考えていることは、よく分からないけれど
それでも一緒にいて、悪い気分はしなかった
最近は、ぶっ殺されることもなくなったからね……
なんてことを考えながら、少女は再び夢に落ちた
悪夢の代わりに、少女は不思議な夢をみた
ミミックが、色とりどりのお菓子を吐き出して、洞くつを埋め尽くしちまう
そんな風に突拍子もなくて
よくわからなくて
だけど、なぜか微笑んでしまうような
暖かくて、ほっとするような夢だった
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