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 その日、少女は夢をみた


 まだ吸血鬼の一族として

 出来損ないとして

 要らないものとして

 一族の恥として


 家族というより、奴隷に近い扱いを受けていた頃の夢だ


 兄弟の笑い声がとどろいて

 母親の罵声ばせいがつんざいて

 父親のため息がささやいた


 嫌な記憶の断片だけが、もないのに繋がっていく


 そんな時はさっさと目覚めればいいことを、少女は経験則として知っていた


 そんな風に、一人きりの夜を超えてきた


 なんどもなんども、超えてきた


 ふと、彼女が悪夢から目を覚ましたとき、ミミックが心配そうに顔を覗き込んでいたので驚いた


 少女が目覚めるなり、ミミックは大慌ててで、石ころやら、布切れやら、折れた剣のつかやら、とにかく色んなものを吐き出して少女に渡した


 なんだかおかしくなって、少女は笑った


 そこでようやく、ミミックは、なにも吐き出さなくなった


 そしてぱかっとフタを閉じて、宝箱に戻った


 やかましくて、騒がしくて


 この化物が考えていることは、よく分からないけれど


 それでも一緒にいて、悪い気分はしなかった


 最近は、ぶっ殺されることもなくなったからね……


 なんてことを考えながら、少女は再び夢に落ちた


 悪夢の代わりに、少女は不思議な夢をみた


 ミミックが、色とりどりのお菓子を吐き出して、洞くつを埋め尽くしちまう


 そんな風に突拍子もなくて


 よくわからなくて


 だけど、なぜか微笑んでしまうような


 暖かくて、ほっとするような夢だった




 

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