宙海のアトランティア

しょもぺ

第1話 はじまったはじまり

地球が滅んでから千年が経った。

かろうじて地球から脱出した民は、宇宙で長い漂流の末、新たなる星へと移住する。


この物語は、地球人の子孫としてこの星に住む青年が、

海に打ち上げられた記憶喪失の青年と遭遇する事から始まる。




「おい、あれ何だ?」


青年は、海に浮かぶ人影を発見する。


「やめとけ! アレク! 海に近づくと、ヴァーミリアンのやつらがうるせぇぞ!」


アレクと呼ばれる黒髪の青年。

右腕は義手、左足は義足、そして左目は長い前髪に隠れているが義眼である。

ギシギシときしむ音を立てながら、波打ち際に向かって歩みだす。


「大丈夫だ、ペハリー。それにここらへんはヴァーミリアンの監視も薄い。」


ペハリーと呼ばれる金髪の青年は、声を大にして反論する。


「いやいや! 冗談だろ!? ついこの間も同業者が海に深入りして殺されているんだぞ!?」


「問題ねぇーつーの! ホラ、早く金めのもの剥いじまおうぜ! オッ、こりゃいい!」


「全く! アレクの図太い神経には恐れ入るぜ。わかった、早めにやっちまおう」


2人の青年は、波打ち際に倒れている青年の、装飾品に手を伸ばし、それを奪おうとした。するとその青年は生きているらしく、目を開けてこちらに視線を移した。


「う……ここは……」


「どわっ! い……生きてやがったのか!?」


「アレク……こ、こいつは……オッドアイじゃねぇかぁアアア!」


オッドアイとは、左右で瞳の色が違う事で、この世界の人間では、『ヴァーミリアン』と呼ばれる一流階級のみが、そのような目をしている。ヴァーミリアンとは、この星の海底に巨大な都市を建造し、事実上、すべての権力を握っている人種である。そのような人種に対して盗みをしたことがわかれば、アレク達も無事では済まない。それだけヴァーミリアンの権力は偉大であった。


「よしッ! 殺すぞッ!」


アレクは、そう言うが早いか、倒れている青年に向かって右手の義手を突き出す。その義手からは、ナイフが飛び出した。


「!!」


間一髪。もうろうとしていた青年は、海水で濡れた体を俊敏に動かし、アレクの攻撃をかわした。その勢いで巻き上げられた飛沫が、アレクの目に入り、一瞬の躊躇を生み出した。


倒れていた青年は、アレクの喉元に刃を立てた。それと同時にアレクもその青年の喉元に刃を立てていた。しばしの静寂。固唾を飲んで見守るペハリーの手に汗が握られた。


「ふ……フアッハハ! ワハハハ! よし、降参だ!」


そう叫んだのはアレクだった。倒れていた青年は、鋭い目つきのままアレクを睨んでいたが、すぐに刃を仕舞まうと、攻撃の意思がないような顔つきへと変わった。


(……!!)


アレクは心の中で思った。その青年は、井出達は確かにヴァーミリアン特有の、豪華絢爛な装飾品に身をまとっていたが、所々に負傷してやぶれた服からは、何か事情がある事を察した。


「おまえ、何者だ? ヴァーミリアンの貴族がこんなところで服のままズブ濡れで海水浴でもあるまいし」


「私は……一体……」


その青年は、初めて口を開いた。その声は、可憐で整った声であった。アレクは、その声質だけで、一流の貴族出身であることを見抜いた。


「どうやら訳アリのようだな……よしッ! 来いッ!」


アレクは背を向けながらも、腕を振ってこちらへと導く仕草をした。ペハリーは唖然としたままだ。


「一瞬で理解した……私は、どうやら記憶喪失らしい……」


「ええぇッ!?」


ペハリーは驚いて大声を上げたが、アレクはそれを手で抑えてニヤリと笑ってこう言った。


「よし! 退屈させたらタダじゃすまさねぇぞ!」


アレクの笑い顔に惹かれるように、その青年もニヤリと笑う。

お互いが初対面あり、お互いが意思疎通の取れてない状態である。

しかし、どうしたことかこの二人。まるで知り合いのように、それ以上の質問はしなかった。


「ちょっと待てよ、アレク! こいつは間違いなくヴァーミリアンだぜ!? ぜったいヤバイって!」


「だよな? でもな、なんちゅーか……やっと始まってくれたって感じだぜ」


アレクは、突然起こったこの状況に臆することもなく、まるで待ちかねていたかのようだった。


「ハァッ!? 何だよソレ!? こいつらにかかわると命がアブネェーっての……に……ウエエ!!!」


そこに突然、海上がブクブクとあぶくを立てながら大きく隆起していった。

そして、巨大な人型の巨大な悪魔が海上を大きく揺らし飛沫を上げながら現れた。


「す……(S)スーパー・(E)エレメント・(G)ガイア・(A)アーマー!」


ペハリは絶叫した。


「スーパー・エレメント・ガイア・アーマー!? SEGA(セガ)ってやつなのかッ!?」


アレクも同じくして叫ぶ。そして倒れていた青年に目をやると、何やら呟いていた。


「……アリッサ・ファンタシアの名において命令ずる……いでよ!……セグランティア!!」


アリッサと名乗る青年が叫ぶと、そこには、海上を大きく揺らし、海を割って現れた巨大な悪魔。それこどが、SEGAのセグランティアであった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宙海のアトランティア しょもぺ @yamadagairu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る