第183話

 だから貝耀はあの御方の代わりに、あの魅了してやまなかった青龍に御仕えする。尊き瑞獣鸞の皇后様ですら、痛手を与える程の強く恐ろしき怨念を抱き続けられた、今上帝にこの身を捧げて御仕えする。

 そしての、青龍であるか確認する。

 我が子を身籠った瞬間から、憎み続ける程のであるのか……。

 貝耀にとっては優しく有り難い御兄君様が、の念を抱く程のであるのか……。


「……そして私も暫く、お師匠様の元でお諭し頂きたいと……」


 貝耀が物思いに耽っていると、朱明がお師匠様に言った。


「なに?そなた充分に、覚醒致しておるではないか?」


 貝耀が思わず本心を告げる。と朱明は、吃驚した様子で貝耀を見つめた。


「覚醒?何を根拠に……」


「いや……この間のは、そういう事だろう?お前は自然と一体となっていた。その御魂を飛ばして、八百万の神に託していた。お前の周りには数多の神々様がお越しだった筈だ、風となり草木となり、音なり声となり鈴となり……」


「そ、その様な事……ただ魚精王の金鱗様には、お助けを頂きました……」


「ああ、さすがの青龍も、河神かしんの大きな力に一瞬視線を動かした、ゆえに俺はお前の放った呪を我が身に通過させて、その呪を俺の持てるだけの力を加えて放った。見事呪は今上帝に当たったが、その先は金色の光に包まれ意識を失したが為、無事施せたか解らない。俺には解らないが、お前には解っているはず……」


「呪は見事的中し、主上様共々お眠りになられた」


「……ならば神座かみくら様……解放されしお力は、覚醒されておりましょう……しかしながら気掛かりならば、天狗様に見て頂けばよろしいかと?」


 お師匠様が言うから、朱明ははにかんでしまう。


「……そんな……ただ、此度無になって一心に、大神様にお祈り致しました……それ故にお師匠様の教えを、もう少し得たいと思ったのです……」







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