第133話

「如何致すか?」


 天狗は、怒り心頭で孤銀を睨め付ける。


眷属神けんぞくしんの銀悌の一部の癖に……」


 とか言って舌打ちするから、朱明はますます恐れを増して行く。


 ホーホホホホホホ……オホホホホホホ……


 天が笑っているのか、木の上で笑っているのか?

 怒り心頭の形相を表す様にしていた天狗が、コロッと相好を崩した。


「冗談冗談よぉ……ほれコヤツの抑え込んでおる能力を、解放してやろうと思うての……ほれほれ……」


 とか言って、やっぱり口を開けさせて唇を近づける。

 何が何だか理解できない朱明は、ジタバタと抵抗を見せるが、もはや孤銀は助けてくれる気は失せてしまった様だ。

 すると口の中に、冷気が吹き込まれて来る。

 その異様な感覚に違和感を覚えるが、朱明は天狗の深過ぎる深緑の瞳に囚われて、身動きが取れなくなってその瞳に魅入った。


「これはちょっと、荒療治ではあるが……」


 天狗がそう言うから、傍らで心配気に見つめていた孤銀が、慌てる様に天狗へと視線を移した。


「い、如何致される、おつもりでございます?」


 すがる様な目付きをするから、天狗はフッと笑って孤銀と視線を合わせた。


「……そなたも共に参るか?」


「は?」


「……そなたも一つの、わだかまりがあるからな……ゆえにそなたはを解放致したくはない……」


「何を……」


「二人愛する者を失いたくはないのだ……さようであろう?だがな、親子と言えど同じ結論を出すとは限らぬ……であろう?これ程の才である、解放させぬは世の損失である……そうは思わぬか?眷属神の一部殿?」


 天狗はニヤリと笑むと、俯いた孤銀を見つめ続ける。


「銀悌は神使の中でも、それは由緒正しき血筋のものよ。そしてあの大神の気に入りの神使で、最も寵愛致す神の従者というより、もはやお目付け役よ。そんな銀悌がそなたを選んだのだ。決して間違うはずは無い……つまりそなたは、と共に任をやり遂げる。恐れるなかれ……」

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