第131話

「そもそも大天狗だとかこっぱ天狗だとか、勝手に申しておるはそなた達である。我らは天狗、それ以外の何でもないわ」


 プンプンと怒っているが、その怒り具合が見た事がある様な無い様な……。


「まっ……可愛い朱の知己の、子孫であるから大目に見てやるがな」


 デカイ竹のうちわを振って言うと、ブワッと風がうちわから吹いて、か細い朱明は吹き飛ばされそうだ。


「そなた朱の側近の銀悌の一部であるな?さすが切れ者の銀悌であるなぁ……朱の知己にこれ程のものを遣わすとは……」


「さ、さようにございましょうか?我が身などまだまだ五尾でございます……」


「何を申すか?五尾でこれ程ならば、九尾となるが楽しみじゃ……」


 天狗はカラカラと笑いながらうちわを振るから、風が吹き出されて細身の朱明に当たる。


「……さて?」


 天狗は風の強さに、必死に堪える朱明を見つめた。


「……不埒なるそなただが……」


 竹のうちわをポンと朱明の肩に叩き付けるので、非力な朱明はガクリと膝が落ちそうになって、辛うじて堪えた。


「実に良い物を持っておるが……如何にして解放致さぬ?」


「へっ?」


 朱明が怪訝気に見つめる。

 すると傍らの孤銀がかしこまる様に言った。


「幼き頃よりその心根のお優しさに、物の怪共に付け入られまして……」


「ほー?トラウマとなったか?」


 天狗が孤銀を見つめて感心したりで言ったので、孤銀は神妙に頷いている。


「とらとら?うまうま???」


 言葉も内容も意味不だ……。

 幼い頃から無理くり的に、不思議なもの達と関わりを体質の朱明は、父が存命ならば護ってくれる又は、そのもの達との付き合い方を教えて貰えたかもしれないが、残念ながら父は早くに亡くなってしまったから、ヤツ等から護ってくれたのは孤銀だった。

 孤銀は護ってくれたが、人間としての付き合い方迄は教えられなかった。

 なぜなら孤銀は、人間ではないからだ。

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