第109話

 本当ならば伴侶の朱麗を女神と致し、二人の間に誕生させるべきものであったが、何せ次兄が誕生したままの朱麗……つまりに拘りを持つものだから、朱麗は女神にはならずに伴侶として、その長き生を次兄と共に生きる神であるので、二人の間には子はできない。

 仮令神だといっても、やってはいけない禁域だ。


 ゆえに長い歳月子をお作りにならなかった、お父君とお妃であったが、未だにそれはそれはラブラブなお二人なので、お妃様がその気になられれば、アッと言う間におできになるのがお二人だ。

 それは愛らしく可憐な碧雅が誕生し、そして朱麗が歳の離れた妹を物凄ーく溺愛し、我が子の様に育てたので、次兄が愛してやまない朱麗の一番愛らしい処が似た様だが、淡白な処も似ればよいものを、そちらは残念ながらお妃様に似た様だ。

 ……とは言っても、鸞のはそれはそれは凄いので、淡白な朱麗でも辟易とする処がある程なのだが、お妃の瑞獣鸞ずいじゅうらん随一である。に似たのだから仮令大青龍を抱いていようとも、今上帝に同情をする次兄である。

 それ程でなければ、あの青龍は抑えられないのだろうが……。

 そしてそんな理由で、大青龍を抱きし今上帝に捧げた碧雅の気配が、ある日一瞬にして消えてしまった。

 あの大神に寵愛を受けし、女神と神が幾ら探っても、その気配が何処にも無く、此処神山の眷属神から精霊そして神使、神に仕えし従者達で探すも見つける事ができなく、とにかく心配したものであったが、ある日朱麗の知己の魚の精王せいおう金鱗きんりんと、陰陽師の子孫と探りに行った報告と、今現世の巷で人々が囁き合う噂を、眷属神けんぞくしんの銀悌の一部を護りとし、以前朱が懇意にしていた陰陽師の子孫に、与えた孤銀が伝えに来た。

 最愛の朱が、知己の陰陽師の子孫に多くの恩恵を授けたが、従者の銀悌が今生の名残にとその陰陽師の子孫に遺した一部だ。

 そういえば自分もに、お妃様や朱に言われいろいろ授けてやったが、どんな物だったか忘れてしまった。

 ただは確かに、いろいろと役に立ってくれた。

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