風の羽衣

hitori

第1話  裸電球の下で



   裸電球の下で


 暗闇を忘れた街の片隅で


 一人 部屋で見つめる窓


 そこから見えるものは


 きらびやかな光と


 消えかけた温もり


 時の足かせが 心を曇らせる


 外に出て ふと立ち止まれば


 そこに見える故郷への想い


 目に映るものすべてが


 あの温かな笑顔を呼び寄せる


 落ち葉の一枚にさえ


 友の匂いを感じ


 吹き抜ける風の中に 


 懐かしい声を見つける


 かつて抱いていた夢は しぼみ


 心の中に一つの種を残していった


 その輝く種は 私を熱くする


 初めてこの街を見た時の私を思い出させ


 磨り減ってしまった靴底を


 新しいものに取り替えさせる


 裸電球の下で


 その輝く種は 私を故郷の想いへと誘う


 燃え尽きることのない灯りをつけ


 時の足かせを はずしてくれる


 裸電球の下で


 目の前の窓を見れば


 朝陽が 私に微笑みかける



 


 

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