第3話 ー紅葉の促し、眠る記憶ー
カレンダーを見ると、11月21日
今日は休み!どこに写真を撮りに行こうかな…
季節限定の美味しいものも食べたい…
栗のパフェとか良いなぁ…
そんなことを考えながら、
朝起きてぼんやりと顔を洗っていると、
何だか京都御苑の秋の風景が恋しくなってきて、
京都駅まで着くと地下鉄烏丸線に乗り換え、
丸太町駅で降りて京都御苑に向かう
もともと、御苑の中にある祇園女御ゆかりの厳島神社に行きたかったはずなのだけれど、
何故か梅林のある方へ自ずと脚が進む
其処には
知識としてそれを理解していた私は、基経より前に基経の父である
その後、漫ろ歩きしているうちに、
御手水のところに、喉が余程乾いているのか、黒猫がしきりに水を飲んでいる
つやつやとして黒光している毛並みの良い黒猫を眺めていると、既視感が湧いてきた
何だか、見覚えのある気がする黒猫だなぁ…
そう思いながら、神社の奥の方に歩を進めると、屋根の上に赤や黄色、橙色の落ち葉が目にも鮮やかに降り積もっている繁栄稲荷神社という社があった
何だか素敵な社だし、お祈りしていこうと思い立ち、心の中でお願い事を唱える
『『早く、貴方に気付いてもらえます様に』』
無意識に自分でもよくわからないお願いごとをしている自分に驚くのと同時に、
私の心の中の声と被さって同じ事を願っている誰かの声が聞こえたような気がした
気のせいだよね…?疲れているせいかも…
その後は、念願の厳島神社に寄ってから、
季節限定のパフェやスイーツを祇園や烏丸御池で堪能した後、バスで
着いてすぐに、資料や地図、平安京で発掘された品々にいつものように夢中になっているうちに、
ふと時計を見たら、閉館時間になっている
慌ててトイレを済ませてから外を出たが、
外は既に日が暮れていて、真っ暗だ
時間を確認するためにスマホを鞄から取り出して画面を見たら、何と残量が10%に満たない…
この日、夕飯を一緒に食べに行こうと前から約束していた尚子がもうすぐ車で迎えに来てくれる手筈なので、
スマホの電池を心配しつつも、私は急いで尚子に、今いる場所や残量のないこと等を簡潔に書いてメールした
とりあえず、おとなしくここで待っているしかないな、
フゥ…とため息をつく
残量を配慮すると、スマホで暇つぶしに何か調べたり読んだりもできないため、
私は目の前の何の変哲もない車の行き交う交差点あたりをただ、ぼーっと眺めていた
すると、不思議なことに、いつの間にか、
目の前には鮮やかな朱色の柱や大門、軒下に架かる煌びやかな燈籠、濃緑色の美しい緑釉瓦が迫っていた -
見ると、自身の衣服も平安貴族の着るような黒い束帯姿に変わっている
束帯は男性の着るものの筈なのに、
よりによって、どうして私はこんなものを着ているのか - ?
というより、ここは車の行き交う交差点だったはず、
呆然と立ち尽くしていたが、
何だか懐かしい既視感に襲われていると、
また、あの春の日にも夏の日にもかいだ心地良い薫りがどこからともなく漂ってきた -
不思議に思い、
再び目を瞬かせると、頭の中が薄靄に掛かったかのようにぼんやりとした
あたりを見回すが、
そこには、鮮やかな朱色の柱や大門、軒下に架かる煌びやかな燈籠、濃緑色の美しい緑釉瓦もなく、
目の前に広がる景色は、車がひっきりなしに行き交ういつもの交差点でしかなかった
あれ、私は転寝していたのかな…
そのうち、
スマホの電池の残量がなくならないうちに、尚子が車で迎えに来た
『おまたせ!よかった〜電池どうにか間に合って。充電器くらい持ち歩いてよ、
今度からは…』
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