運命を変えた出来事
学校にいきたくない。勉強ももうしたくない。何もやる気が起きない。毎日が辛い。そんな状況を見かねた母が「塾に行く」という選択肢を提示してくれた。
実は何度か勉強ができる様になりたくて塾に行きたいと両親にせがんだことがある。でも毎回両親は私が塾に行くことを猛反対していた。なぜなら塾に行かなくても私がいつか勉強ができる様になると信じてくれていたから。
でも信じてくれたのにやっぱりダメだった。
二学期期末試験の数学が返ってきて家族の前で泣きじゃくったあの日、ついに母が「塾に行く」という選択肢を真面目に考えてくれる様になった。相変わらず酷すぎる数学の結果を見ても私を塾に通わせるのに猛反対をしていた父だったが、母が味方になってくれただけでも心強かった。
私を塾に通わせる、通わせないということで家族会議が開かれたほどだ。確かあの時は二時間くらい会議をした。最後まで私の実力を信じてくれた父はなかなか賛成はしてくれなかった。それでももう私の限界はきていた。
「塾に行かなければ私は自分を変えられない、一生懸命勉強するから塾に行かせて!」
そう懇願したことを覚えている。あとで父から聞いた話だが、父は私が塾に行くことで家族との時間が取れなくなってしまうことが嫌だったという。塾に行くことを猛反対していた父だったが、家族を大切にしたいという気持ちを持った父は今でも尊敬している。
父をなんとか説得して一月の下旬、母が塾の体験授業を申し込んでくれた。父は当時、塾に行くことに賛成とは言っていなかったのだが。恐らく私や母の根気づよさに負けたのだろう。あの時、やっと念願だった塾に行けるとずっとワクワクしていた。
そして二月一日。
両親に連れられて行った塾。当時はあまりにも緊張していた。
塾の扉を開けて入った瞬間、
「こんにちは!」
という講師たちの熱い挨拶の合唱に驚いてしまったことを今でも忘れていない。
少し小柄で優しそうな雰囲気の塾長に案内をされ、入塾手続きを済ませた。
入塾手続きは自分の学力状況と塾の使い方について説明を受け、三十分ほどで終わった。もうその次の日から授業が始まると聞いて、念願だった塾の生徒に明日からようやくなれるのかと非常に嬉しかった。
まさか塾に入ったことで人生が大きく変わるなんて思っていなかったし、ここである意味運命の出会いをすることになるとは想像もつかなかった。
塾に入るにあたって一つ密かに抱いていた希望がある。
それは先生が女性であること。
なぜ小学生の頃はあれだけ男子と遊んでいたのに中学生になったら男子が嫌になったのか。それは中学校の男子があまりにもひどい仕打ちをしてきたのでそれがすっかりトラウマになり、「男子=最低な生き物」という偏見を拭えずにいたからである。
実際、入塾を決めた当時、父親と学校の先生以外、男子と話をしたという
記憶が一ミリもないのだ。だから塾長と話をした時は父親と学校の先生以外の男性で話をしたのは何年ぶりだろうとある意味感激した。それくらい男子なんて大嫌いだった。家に帰ってからずっと母親に女性の先生がいいと話していたことを覚えている。しかしいつもなら共感してくれるはずの母親が答えたことはこうだ。
「でも、実際にあってみないと分からないじゃない。
やっぱり男の先生がいいってなるかもよ。」
まさかその翌日、母親の言っていたことが本当になるとは全く想像もつかなかった。
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