第4話 自分の屋敷に戻ったものの……
私は、公爵家の馬車でダグラスと一緒に、自分のお屋敷に戻って行った。
屋敷内に入ると、雰囲気がピリピリしているのが分かる。
「おお、帰ったかマーガレットよ」
父が出迎えに出ている……というより、父も今戻ったばかりという風体である。
「お父様。どちらかに行かれていたのですか?」
私は帰宅の挨拶もせず、気になったことを訊いてしまった。
「国王陛下に呼び出されてな。お前と王太子殿下の婚約を無かったことにすると言われた。正式な手続きも、有無を言わさずさせられてなぁ」
父は怒りを通り越してあきれていると言った感じで、ため息交じりにそう私に説明した。
「わたくしも今日の学園での夜会で、王太子殿下から婚約破棄を言い渡されましたわ」
「やはり……か。公の場で公言されれば、撤回するのは難しいからな。すべては、エミリー……聖女様を取り込むためか」
父は思い当たるところはそれしかない、とばかりにうなずいていた。
私は、説明しなくて良くなったことにホッとして、チラッと横にいるダグラスを見る。
「レヴァイン公爵閣下。私が付いていながら止めることが出来ず申し訳ありません」
ダグラスは、父に対して礼を執って謝罪をしていた。
「いや、年若い君に保護者役をやらせてすまなかったね」
父は、ダグラスをねぎらっているが、
「マーガレット嬢が、聖女様のなさることに文句をつける前に止めるべきでした」
ダグラスは、しれっと父に会場であった事を告げ口した。
「お前は、また……。まぁ良い。マーガレットの態度がどうであれ、何かしら難癖をつけられていただろうからな」
二人とも、事実だけを淡々と言って、私の心が傷ついただろうとかそういう気づかいは無い。
公の場で。大勢の人々が見ている中で、王太子から罵られ、腫れあがるくらい乱暴に手首をつかまれ、婚約破棄を言い渡された。
前世の記憶が無く、本当に16歳の小娘ならその場で泣き崩れてしまう場面である。
「わたくし、もう部屋に戻ってもよろしいでしょうか。お父様」
「あ? ああ。ゆっくり休みなさい」
私は、父とダグラスに礼を執って、自室に戻るべく歩き出した。
また同じだ。
前世と何も変わらない。愛情が薄い家族。今回は夫にはならなかったけど、私に全く愛情の無い婚約者。
部屋に戻りながら、自嘲してしまう。
私は
前世では、いつだって一生懸命頑張って来たのに、生まれ変わってもこんな人生だなんて。
何が次の人生はのんびりと……だ。あの嘘つき光玉。
侍女に着替えさせてもらって、そのままベッドに倒れこんだ。
幸い明日から学園はお休みだ。
お休みの間に、自分の身の振り方を決めよう。
大丈夫、殿方に頼らなくても生きていけるわ。
だって、戦後のあの焼け野原の中を生き抜いてきたのだもの。
それよりは、マシなはずよ。
そう思って、私は眠りについた。
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